翌朝フィルシスは、陵辱の疲れからか、昼近くまでぐっすり眠っていた。
「……ん…っ」
シャーレンは耳や尾をなでたが、フィルシスは少し身じろぐだけだった。
寝着のズボンを下ろし、革の貞操帯を脱がせた。
昨日、薬で肥大化させ勃起させていた陰核に、空気や下着の刺激が伝わらないように履かせていたもの。
「んう……っ」
しばらくすると、フィルシスは下肢の疼きで目が覚めた。
思わずそこに手を伸ばして、自分の手で弄くってしまいそうになったが、すぐ側にシャーレンがいる事に気づいた。
伸ばしかけた手は、すがりつくように黒いローブを握った。
「あ…っシャーレン……」
「やっと起きたんですか?寝ていても、快感にはちゃんと反応するんですね」
「あぅ………」
微笑まれて、頭を優しくなでられて、しばらくぼんやりと快感に耐えていた。
「折角メスになったんですから、今日は卵を産みましょうね」
その言葉で今度ははっきりと目が覚めた。
「……もう嫌だ」
手を離して、逃げるように布団の奥に潜り込む。
一昨日も昨日も一日中玩ばれて、疲れていた。
まだ今日も恥ずかしい事されるなんて。
「あなたに私の言うことを断るなんて、できるんですか?」
「や…ッ」
同じように布団に潜ってきたシャーレンに抱きしめられる。
しゅんとしていると、あやすように、頭と背をなでられた。
「ひあ…ッ!」
その手が今度は股間に向って、膨らんだままの陰核をこりこりと摘む。
「はあ…っぁ……ッ!」
フィルシスは、たまらなくなって腰を揺らした。
股間に熱が溜まっていくのがわかる。
「こっちももう硬くなってきましたよ」
今度は陰茎を握られた。
そこをすられたまま、片手で上の服も脱がされる。
「やぁだ…もう……」
だが、性器を弄られたままでは、ろくな抵抗はできなかった。
「あなたは本当に快感に弱いね」
「ちが…っシャーレンだって……」
そのまま続きを言おうとしたが、そんな話をするのが不意に恥ずかしくなった。
「私だって、何ですか?」
「…何でもないよ……」
「言えば、やめてあげてもいいですよ」
「…嘘だ…」
返事の代わりに、笑みをもらすシャーレンにそっと抱き上げられて、寝室の外に連れられる。
またあの地下室に連れていかれるに違いない。
「あの部屋、嫌だ…」
シャーレンの胸にしがみついて、抱きかかえられる腕の中でもがいた。
「そんなにお行儀が悪いと、もう一度躾直しますよ」
「……」
鋭くそう言われると、おとなしくするしかなかった。
階段を下りる足音だけが響く。
昼間でも暗い地下室。
隅に置いてあった金属製の椅子の前に運ばれる。
椅子に座らされ、腕を背もたれの後ろに回されて固定された。
足は開かされ、肘掛にかけられて黒いベルトで縛られ、胸にも乳房を搾り出すようにベルトで拘束される。
首輪にも鎖を繋がれて、しっかりと固定される。
しゅんと顔を伏せていると、耳をなでられた。
「やだ……」
微笑んで自分の体を縛っていくシャーレンを、潤んだ瞳で見上げた。
「可愛いね。そんな顔されたら、止められるわけないでしょう」
人差し指で口元をくすぐられる。
「ふ、ぁ……っ」
思わず甘い声をあげてしまう。
今度はシャーレンが壁際の棚から、幾つか小瓶を取ってきた。
その中に、卵が幾種類も入っているのを見ると、思わず身を竦めた。
だが、そんなものをこれから入れられると思うと怖いはずなのに、同時に膣や後孔が物寂しそうに収縮するのを感じた。
「ほら、一昨日、あなたのために集めてきてあげたのですよ」
「あ……っやだ……ッ!」
冷たい笑顔を見せられて首を振った。
拘束された身で唯一できる抵抗。
それでもただ、耳をなでられるだけで、今度は手に取った金属の器具を見せられる。
「あなたの締め付けで、卵を潰してしまわないようにしないと、いけませんからね」
「そんなことしない…っ!」
「どうかな」
意地悪く微笑むシャーレンがその器具に潤滑剤をたっぷりつける。
筒状のそれを、そのまま膣に挿入していく。
「く…んぅ……!」
「こうして螺子を回すと、中で開くんです。内部が丸見えですよ」
得体の知れない器具を突っ込まれて、無理矢理内部を拡張される。
そんな事をされて、じっと眺められるのが恥ずかしくてたまらないのに、愛液が漏れ始めるのを感じた。
「ひくひくしていますね。濡れているようですし」
「はぁ…あ…っ」
「一つ目はこれにしましょうか」
小瓶の中の卵を、ピンセットでつまむ。
口を開いた股間に、様々な形の卵を次々と入れられていく。
「や…」
中で、幾つもの種類や大きさの卵が転がる。
不規則なそれぞれの動きが予測できない快感を与えて、翻弄していく。
「んんうー……っ!」
思わずきゅうっと膣の中を締め付けて、快感を貪りそうになる。
だが、先程挿入された器具に阻まれ、それは止められた。
「気持ちいい?やはり私の判断の方が正しかったようですね」
その声で、はっと我に返った。
シャーレンが優しく微笑んで、観察していた。
自分の迷いをじっと見られていたと思うと、いたたまれなくて顔をあげられない。
「これで最後です」
「………」
目の前に見せられたそれは、蛙の卵に似ていた。
殻が無く、粘膜の中で幾つもの卵が密集している。
ただ、一つ一つのサイズが蛙のものよりはるかに大きい。
「この卵は水気がないと孵化する事はないのですよ。両生類の卵ですからね。
奥の卵が孵化してもその幼生は、この卵が孵化しない限り、入り口で阻まれて出て来れなくなりますから、中でずっと動き回ってくれます」
「くん…う……ッ!」
そんな事を聞かされて、背筋が凍る思いがした。
膣の入り口を塞ぐように、その卵の粘膜が内壁に張り付く。
「通常は、水中でも流されてしまわないように、岩にしっかり張り付いているような卵ですからね。中々はがれないはずですよ」
「ん…やぁだ……」
体内の異物が、拡張器具に阻まれていても、膣の収縮を感じて蠢いている。
「孵化時期が間近だったものを、冷凍保存していましたから、常温に戻ると孵化し始めます。では、孵るまで、いい子で待っているんですよ」
汗ばむフィルシスの額にそっと口付けて、扉に向かう。
「あ…やだ…っまって……」
思わずそう叫ぶと、シャーレンが振り向いた。
「……シャーレンも一緒がいい…」
大声を出してしまった事が恥ずかしくなって、今度は小声で呟く。
「そんなに一人じゃ嫌ですか?」
「……」
前かがみになって、抱きついてくるシャーレンにそっと頷いた。
胸に頭をすりよせると長い髪が頬に触れる。
「ふーん」
嬉しそうなシャーレンを見て気づいた。
いつもわざと放っていこうとする時は、何か企んでいる時だ…
分かっているけど、得体の知れない卵を入れられて、こんな所に一人でいるのは嫌だ…。
「では一緒にいてあげますね」
満面の笑みを見せるシャーレンに頭をなでられて、足や胴の拘束をはずされていく。
だが、首輪の鎖は繋がれたままで、腕も後ろ手に縛られたままだった。
「ん…ぅ……!」
さらに、今度は球状の猿轡を噛まされた。
口の中に唾液が溜まり始めていく。
抱き上げられて、薄暗い廊下を歩いて、今度は物置の方に連れて行かれる。
中に入ると、一旦床に下ろされた。
物置の中は見た事がなかった。あまり見たいとも思わなかった。
燭台に火が灯されても、照らし出されたのは入り口の周辺だけだったが、それだけで十分不気味だ。
棚には動物の骨のようなものや、標本が置かれていた。また別の棚には水晶玉やタロットカードが置いてある。
天井はくもの巣が張って、そこにかかった茶色い蛾が、ぶううんと羽音を立てていた。
「……んん…っ」
どうしてこんな所に連れてくるの…
そう思って寄り添うと、頭をなでられる。
「こっちですよ」
首輪の鎖を引っ張られて、隅の方に連れて行かれる。
そこには大きな布がかけられているものが置いてあった。
何気なくその横の棚を目にすると、以前電流を流された時に見せられた装置がある。
その器具の他にも、布をかぶせられたものの周りには、剣や刺又などの刃物があった。
入り口付近の棚に、動物の骨や標本、魔術の小道具がそれぞれ分類されて置かれていたように、
この器具も分類されてここに置かれていると思うと、布の中身を知るのが怖い。
「んん……っ」
思わずあとずさった。
「勝手にどこへ行く気ですか?」
わざとらしく微笑んだシャーレンがその布をとった。
奇怪な器具が目に入る。
三角木馬…
暗黒騎士団の宿舎にあったものよりは小型だったが、形状は同じだ。
三角形に組まれた木の板が、台で支えられている…
「んうぅ……」
こちらを眺めて微笑んでいるシャーレンに、必死に首を振って抵抗した。
「やっぱり一人の方が良いようですね」
試しているように、じっと見られる。
その青い目の冷たさの方が怖かった。
本当にここにたった一人で永遠に置いていってしまいそうな、そんな気にさせる。
「………」
仕方なく、うなだれてもう一度寄り添う。
「一人きりで平穏でいるよりも、痛くされてでも一緒にいる方が好きなんですね」
頭を一なでされた後、首輪に繋がれたままの鎖を引かれ、木馬の前に連れられる。
「んん……っ」
実際に近くで見ると木馬の背は、ほこりをかぶっているものの、鋭利に磨かれていた。
その背に何か黒ずんだ染みがついている。
「こんなに鋭く尖っていて、痛そうでしょう?この染みは変色した血ですよ。本物の人間の血です。
この屋敷は貴重な書物や道具が多いから、それを狙って侵入して来る者や、反逆者の回し者がよく来たのでね。
昔は、少し懲らしめなければならない事が多かったのですよ」
意地悪く微笑んで、淡々と言われる。
怖くて、シャーレンの胸にもたれると、耳をなでられる。
だがそれは少しの間だけで、すぐに抱えられて木馬を跨がされる。
「ん…!んう…ッ!」
フィルシスは無意識の内に、足をばたつかせた。
冷たい石の床を、狼の足が引っかく。
「ふふ、もっと足を伸ばさないと、股が裂かれてしまいますよ」
「ん…ふんぅ……」
シャーレンが面白そうな笑みを漏らす中、フィルシスは必死に爪先立ちした。
そうすると、ぎりぎり尖った背にはつかなかった。
「そのままじっとしているんですよ」
だが、こんな状態を長い間保っていられるわけがない。
陰核は空気の刺激だけで疼くし、静止していると、膣の内部で卵がごろごろと動くのが感じられる。
「んん……ッ!」
足を震わせて苦しみに耐えていると、今度は後ろ手に縛られた腕をつかまれる。
その腕を縛る黒いベルトに、天井から吊るされている鎖を繋がれた。
首輪の鎖も木馬の前方にしっかりと固定される。
「……んうぅ…っ」
さらに木馬の台と、鎖で繋がれた鉄の枷を足首に嵌められてしまう。
これで逃げることはできない…。
「本当はこの木馬の上に座らせて、拘束するんですけどね。爪先立ちで許してあげますよ」
「ん…くふ……ッ」
枷をはめられた口の端から、涎がたらたらと溢れ出した。
拘束されているだけで十分怖いのに、最後にさらに、黒革のベルトで目隠しをされる。
「何があっても我慢できますよね?座ってしまったら、鋭い背が股間に食い込むのですからね」
優しく頭をなでられる。
何も見えないから、その言葉の意味を考えると怖かった。
「ん…!んうぅ………ッ!」
耳をなでていた手が離れていく。
やっぱり置いていくんだ、椅子に縛るよりもはるかに辛くなったこんな状態で。
だが、そうではなかった。
遠ざかっていた足音が、しばらくすると戻ってきた。
「ん……っ?」
すぐに、覚えのある硬い感触が背をなぞっていく。
……鞭だ。
「んん…ッ!」
鞭で打たれて、静止を維持できる自信はない。
今でも精一杯なのに、あんな事されてはたまらない。
だが、少しでも動くと、木馬のあの鋭利な背が食い込む…。
怖い…
「ん……っ」
「ふふ、そんなにもがいて、どうかしたんですか?」
白々しい言葉と共に、面白そうに笑うシャーレンの声が聞こえた。
「ほら…その体勢を崩すと、あなたの血が新しく木馬を染めてしまう事を、忘れてはいけませんよ」
肌から離れる鞭の感触。
見えないから、どこを打たれるのか分からない。
足か性感帯に来るかとぼんやり予想していたが、それは外れ、脇腹に来た。
「……ふ、くぅッ…!」
ぴしりと鞭がしなる音と、痺れるように肌を走る痛み。
フィルシスは体勢を崩しそうになったが、今までの経験から考えると、この一撃はまだ手加減している時のものだ。
これからもっと激しくなると思うと、怖くなってくる。
「耐えられたようですね。次はどこにしましょうか」
再び来る快感への昂りに、震える足を抑えて力を入れる。
ぎゅっと握り締めている手が、汗で濡れている事に気づいた。
「…ふ…ぅ…ッ!」
漏れる喘ぎ声をかき消すように空気を切って、ひゅんと鞭が再びしなる。
今度は小刻みに震えている尻を狙う。
「んん…っんぅ…ッ!」
先程より強い刺激。
フィルシスは今度は一瞬左足のかかとを地につけてしまった。
「んんぅ…っふ……!」
だが、その鋭い痛みがじわじわと焦がしていくような快感に変わっていく。
拘束された口の隙間から、鼻にかかった息が漏れた。
「ん…!」
その時さらに厄介な事に、自分の中で、新たな快感が目覚めた。
膣の中で何か動いてる。
奥に入れられた卵が孵ったようだ。
得体の知れない生物が自分の体内で動いているのかと思うと、気持ちの悪いはずなのに、快感に体がくねった。
「ん…ふうぅ……ッ」
愛液まで漏れ出し始める程の快楽を感じて、ますます爪先立ちが辛くなる。
先程まで、恐怖で萎えていた陰茎までもが、再び熱を帯び出したのを感じた。
そこにも刺激が欲しくて、内股が震える。
「おや、勃たせてますね。こんな事されているのに、気持ち良いんですか?」
勃起して、拘束具の隙間から透明な先走りが漏れ始めたフィルシスの陰茎を、シャーレンが鞭の先でなぞる。
「く…んぅ……っ」
無意識の内に腰を前に突き出して、鞭の先に陰茎をすりつけてしまった。
「そんなに好きなら、もっとたくさん印をつけてあげましょうね」
シャーレンは亀頭を嬲った後は、今度はいきなり陰核を打った。
びくんと震える体が、余韻に浸る間も与えず、今度は乳房を打った。
「…んんー…ッ!」
涎の筋のできている口から喘ぎが漏れる。涙があふれていても、革の目隠しのせいで見えない。
続けさまに乳房を打たれたかと思うと、いきなり内股を打たれる。
背や尻を、不規則に薄紅の筋がついていく。
「んん…っ!んうぅ………ッ!」
膣の中に与えられる快感。
卵は次々と孵って、その度に新しい動きが加わる。
体を打つ速度も、感覚も、強度も打つたびに一つ一つ変わる、止まらない鞭の痛み。
爪先で立ち続ける足に感じる痺れ。
全てが混ざり、苦痛なのか快楽なのか、もうわからない。
「ふ…く……んん…ッ」
フィルシスはそれでも必死に、崩れてしまいそうになる体を抑えた。
あの鋭利な背に当たってしまわないように。
「さすが、腐っても騎士団長ですね」
感心するようなその声を最後に鞭は止んだ。
しばらくの間、優しく耳をなでられる。
「……ん…くぅ……っ?」
またシャーレンの足音が遠のき、戻ってくるのが聞こえた。
「でも、これはどうかな」
鞭以外に何があるというのだろう。
先程目に入った、様々な器具が脳裏をよぎる。
そんな事を考えていると、不意に乳房の辺りが温かくなった気がしたが、何故なのかわからなかった。


