賭け碁

(16)
ヒカルが眼を大きくしてそれを見つめ、慌てて逸らす。だが見ずにはいられない風で
ちらちらと視線がさ迷い戻る。
ヒカルに与えていた動きを一旦止めて自分を扱きあげ、怒張をより顕著にする。
「ほら、ボクも同じだよ。キミが恥ずかしがる必要ないからね。」
本当は、アキラだってさすがにこの行為は抵抗がある。だが彼のショックを
取り除くには必要なことだった。
先程見た泣き顔を思い出す。
あんなかわいそうな顔をさせたのはアキラなのだ。
さんざ卑猥な言葉で責め立てたのには、そうしなくてはならない理由があった。
快楽に繋がる羞恥と、心を傷つけるだけのそれとの境界線は心得ていた。
それを踏み越えるようなヘマはしないと思っていた。
それなのに、追い詰めすぎてヒカルの予想外の行為を導き出してしまった。
…大好きな彼を、傷つけた。
絶対に償わねばならない。ならばどんなことでもしてみせよう。
ヒカルに見せ付けるように手を大きく動かす。時折腰をのけ反らせて息をわざと荒げる。
「……」
「ね、こんなこと何でもないんだよ。見ても見られても、これっぽっちのこと、
 気に病まなくっていいんだからね。」
彼が眼を奪われているのを確認して、止めていた動きを再開する。ぬるついてよく滑った。

(17)
彼の息がどんどんあがる。アキラも呻きを隠さない。
2人分の湿った音と熱を孕んだ呼吸が響きつづけた後、縋るような か細い嬌声が一つあがった。
限界は、当然先に始めたヒカルの方に早く訪れた。
くたりとシーツに沈んで、余韻に熱い息を漏らす彼を見ながら、アキラも最後の扉に向かう。
「っ…」
握り締めた指から生ぬるい雨だれが落ちた。

片足を持ち上げ、隠れていた花を暴いて手に溜まったものを垂らす。水遣りのように。
ヒカルの腹のぬめりもかき集めて指にたっぷり絡めた。準備は万端。
このまま片足だけ上げられているのも不安定で辛かろうと逡巡し、もう一方も持ち上げた。
足を軽く閉じさせて、両の足首を片手でまとめて高く上げる。柔軟な体はた易く2つに
折りたたむ体勢になった。緩く曲げた膝を胸元に落ちつかせてその体勢を確立する。
「苦しかったら言ってくれ。」
濡れた指先が可憐な蕾に触れ、襞の一つ一つをなぞり入り口を圧迫する。
抵抗はなく根元まで入った。
堪えた声が切ない吐息になって熱い空気に溶けた。
この中はいつも熱い。指を食い締める肉に、自身を埋め込んだ時の快感を
思い出して唾を飲む。

(18)
襞を引き伸ばすように指を大きく右に寄せ、左に出来た僅かな隙間に中指を捻じ込んだ。
汗ばんだ太腿が揺れて、あのいい匂いがまた漂ってきた。
2本の指で歪に広げられた蕾は痛々しい姿になりながらねとつく音を漏らす。

抉る動き、繰り返される抜き挿し。ヒカルはされるがままに喘いだ。
「うあ…っ、あ…」
再び硬く張り詰めたアキラが太腿の裏に触れる。なんという熱さか。
もうすぐこれに貫かれる。それを考えた途端、肉が指をキュンと搾り込んだ。
「塔矢、もうそこいいから。来いよ…」
欲しいとは言えない。ぎりぎりのプライドで命令口調のお願いをする。
「わかった。」
アキラの声も熱まみれだ。指を抜く時、じゅぽんと音がして2人とも息を呑んだ。
脚がぱっくり割れてアキラの体が入りこむ。押し当てられただけで汗が噴き出る。
「ん……っ!」
痛くないのが無性に悔しかった。

深く深く繋がって、暫くそのまま粘膜の睦み合いを味わう。
このまま動かずにいたなら、先に根を上げるのはどちらだろう。
息の荒さは同じ。熱さも、また。
アキラが大きく脈打ちヒカルも激しいぜん動運動を起こす。
結局2人同時に相手を貪り出して有耶無耶になった。

言葉と呼べない声をあげ続けたヒカルが、ぎちぎちに相手を締めつけて背を反らした時。
2つの名が、叫び声の形で空気を裂いた。

(19)
「進藤、まだ怒ってる?」
「…べ、つ、に。怒ってねえよ。」
「ごめんね、ご機嫌直して。」
「怒ってねえって言ってんだろ。わかんねえヤツだな。」
「だって、怖い顔してるよ。」
「んー、別にぃ?考え事してたんだよ。」
「何を?」
「何でオマエこんなことしたのかなーって。」
「……何でってそれは、キミも興奮してたしボクも我慢できなくなったから、その…」
「Hのことじゃねえよ。解ってんだろが。何でいきなり剃りたいなんて言い出したのか、だよ!」
「えーと、一度してみたかっ…」
アキラの言葉は、殊更ゆっくりはっきりした糾弾によって途中で遮られた。
「しばらーく考えてたんだけどさー。思い当たることあったんだよな。先月の棋院で。」
「……。」
「ジュース飲みながらオマエ待ってたら冴木さん通ってさ。ちょっと話したんだよな。」
ヒカルはそこでちらりとアキラに視線をやった。予想通りの顔に、己の正しさを
確信する。さあて、どうしてくれようこの男。妙に楽しくなってきた。

「冴木さんの言ったことってのがさー。 来月に…もう今月だけど。森下門下で
 温泉行く話があるんだってさ。んで、詳しいことはまた今度集まった時に話し合うから、
 考えといてくれって。」
「………。」

(20)
「冴木さんが行った後すぐオマエが来たんだっけ。おまたせーって。」
「…………。」
「オマエ聞いてた?聞いてたな?絶対聞いてたな?」
「……………。」
「それでか。オレが皆と風呂入るのイヤだから?人に見せられない体にしちまえば
 オレは行けなくなる、それが目的だったんだな。そうだよなおい!」
 青いオカッパ。バラと同じく、なかなか見られるもんじゃございません。
「それでその後スケベモード全開でヤっちゃえば、オマエの本当の狙いは
 カモフラージュされるってわけか。」
そこでヒカルは一つ大きく息をつく。
「ふぅ。よくこんな事考え付くよ。」
「…だって、どうしてもイヤだったんだ…」
消え入りそうな声。これも大変珍しい。
「あ、の、なあ。ならこんな回りくどい事しなくても、行かないでくれって
 言えばそれで済んだだろ。」
「そんな事、格好悪くて言えないよ…。」
すぱこーん。オカッパ頭が軽やかな音を鳴らした。
「剃らせてって言う方がカッコ悪い!あんなエロいこと平気で言いまくったくせに
 何でそんな簡単な事が言えねえんだよ!! ていうかあんな事やられたオレが
 いっち番恥ずかしかったんだぞ!!!」
怒涛の罵倒。一気に叫び切ったヒカルは軽く酸欠になった。
しかし必死のヒカルに比べ、叱られている方はなんだかボケぎみである。
「…そうか、確かにそうだな…。悪かった…」
なんなんだよコイツのこの脱力光線は。まともに食らったヒカルは見事脱力した。
「オマエなあ。絶対ズレてる。どっかズレてるよ…」
「え…そうかなあ。」
全くコイツは。本当にコイツは。

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