ニップレス

(6)
「な〜んか今日のオレ、逃げてばっかりだな」
外に出るともう日が沈みかけていた。
大通りに出ると会社帰りのOLのおねーさんやサラリーマンでごったがえしていた。
「すっごい時間を無駄にした気がする…」
本当は碁会所にも行きたかったんだけど今日はもう帰ろうかなー。腹も減ったし。
きゅう、と小さくなったお腹に手を当てるとふいにさっきの和谷の指の感触がよみがえってきた。
薄い胸の肉を集めるように執拗に動く指。
最初はくすぐったいだけだったけど、実は途中から腰の辺りがむずむずしてきていた。
友達の指で触られてそんな気持ちになった自分が恥ずかしい。
あの時和谷の腕を払って逃げ出さなかったら、今頃もっと恥ずかしい状態に
なっていただろう。
「〜〜っ!」何考えてんだオレ!突然頭を振りだしたオレをすれ違うサラリーマンが
ぎょっとして見た。
「はあ…塔矢に毒されたのかな…」
なんとなくそのまま帰る気にならなかったオレは気分転換に本屋に立ち寄ることにした。
「そういえばまだ今週のジャンプ買ってなかったな」
真っ直ぐ雑誌コーナーに向かい目的の品を手に取りレジで会計をしていると後ろから
声をかけられた。
「進藤」


「あ、伊角さん」
「あ、冴木さん」
「あ、緒方先生」

(7)
「あ、冴木さん!」
「よ、今帰りか?送ってやるから乗ってけよ」
冴木さんはポケットから車のキーを取り出して見せた。
そういえば新車を買ったっていってたっけ。きっと走りたいんだろうな。
来週の海も「冴木さんの新車で行こう」って和谷が言い出したことだった。
へへ、皆より一足先にオレが乗っちゃうよん。
ピカピカの車に乗り込むときはちょっと緊張した。
靴で擦って汚しちゃわないように足を閉じて小さくなって座っていたら冴木さんに笑われた。
オレなりに気を使ったのに!もう!
「そういえばもう来週だな。
お前ちゃんと水着持ってこいよ?忘れたら全裸で泳いでもらうからな」
「家から履いていくから大丈夫だよ。冴木さんこそ寝坊しないでよ、車がないと行けないんだからね!!」
「このオレをアシ扱いかぁ〜コノヤロ」
片手を伸ばしてオレの髪をぐしゃぐしゃにしてくる。
「わっ、わっ!ちゃんと前見てよっ!」

あー話してたらわくわくしてきた。
楽しみだなあ。当日は一泊するから一日中遊べるし!
…あ、ニップレスのこと忘れてた。
これが取れなきゃ水着になれねーじゃん。


冴木に相談する
黙っている

(8)
どうせこのままの状態だったら海にも行けないんだから、冴木さんに相談するべきだよな。
「冴木さん…あのさ…」
「うん?」
うう…言いにくいな…
「ええと…」
「腹でも減ったのか?ラーメンでも食ってくか」
「うん!」ラーメンという単語に反射的に返事をしていた。ああ…オレって…。

「ごちそうさま!」
「お前は安上がりで助かるよ」
結局しっかりごちそうになってしまった。
車に乗り込みエンジンをかけようとする冴木さんを見てオレは当初の目的を思い出した。
このままじゃうちに着いちゃうよ!
「あっ、あの、冴木さん!オレ、相談があるんだけど」
Tシャツを捲りあげて胸を指差す。
「これ取れないんだ!助けてよ!」


「下、いらないんじゃないか?」風呂上がりのオレを見て冴木さんが笑う。
着替え用に借りたTシャツはオレの膝上までを覆っていた。
ジャージのズボンは裾を二重に折っている。

あの後、冴木さんはあわててシャツを引っ張ってオレの胸を隠した。
隣に駐車していた人が降り際にオレたちを見て変な顔をしたからだ。
「オレが変質者だと思われるだろっ!」
本気で焦っている冴木さんはちょっとかわいかった。
和谷と塔矢のことは伏せて事情を話すと「訳わかんないな」と言った。
オレも訳わかんないんだよ。でもとりあえずうちにこいと言ってくれた。
またいきなり脱がれて通報されたらかなわないからな、とも。

「これ、リムーバーとか無いのか?」
肌に密着したそれを見て「無理に引っ張ったら皮膚ごといきそうだな」と怖いことを言った。
「普通は商品の箱の裏とかに何か書いてあるんだけどな」
「そんなこと言っても…」箱も何も朝起きたらいきなり張り付いてたんだよ。
とりあえずリュックの中身を漁ってみる。いつか見た映画の半券やら
路上でもらったティッシュにまぎれて底の方に四角いものが見えた。
「あった」
うさんくさいカッパが描かれた箱があった。
「??オレこんなの買ってないよ…誰が入れたんだよ!気持ち悪い〜〜!!」
「いいから見せてみろよ」
冴木さんが箱を裏返してみたけど、そこには何も書かれてなかった。
「駄目だなこれは。怪しい輸入ものか?」
「え〜〜っ!!そんなあ!なんとかしてよっ冴木さんっ!」思わず涙が出てきた。
「このままじゃオレ海にも行けないし銭湯も行けないし着替えもできないじゃん!
そんなのやだよっ!あと、もうなんか気持ちわりい!!」
悔しのか情けないのか涙がぼろぼろ出てきた。
冴木さんはオレの背中を優しく叩いて「もう寝よう」と言った。
「明日になったら取れてるかもしれないだろ?」
それは無いと思う…。
「お前ベッド使えよ、オレ、ソファで寝るから」
「え…いいの?」

ベッドを使わせてもらう
自分がソファで寝る

(9)
「いいって、オレはお前みたいに寝相悪くないから落ちたりしないよ」
「オレだって落ちたりしないよ!」
…落ちそうになったことはあったけど。
「やっぱりオレがソファでいいから冴木さんはベッド使ってよ」
枕を持ってソファに寄っていくオレを見て冴木さんは口の端を上げて笑った。
「じゃあ一緒にベッド使うか、進藤が小さいから大丈夫だろ」
そういってオレの背中を押し戻してしまった。
「落ちないようにお前は奥な」
だから落ちないってば!
大きめとはいえシングルベッドに男二人が並ぶとやっぱり圧迫感がある。
オレは別に一緒でもいいけどさあ。以前は佐為がいたし…触れないけど。

…あ、マズい。最近のオレは涙腺が緩くて困っちゃうよ。
変に思われないように背中を向ける。
すん、と鼻を啜る音が明かりを落とした室内に響いた。
背中で冴木さんが寝返りをうった。気づかれたかな、と思った瞬間オレの腹に
手が回された。後ろから緩く抱きしめられられ、下で足が絡んできた。
「…暑い、やっぱり子供は体温が高いな」
それでも冴木さんはオレの身体を離さなかった。
うなじの辺りに唇を押し当てられる。息が当たってくすぐったい。
それでオレの中のスイッチが入ったのか、お腹の上に置かれている手までくすぐったくなってきた。
「うは、はっ、やめてよ…っ」
身体を捩って笑い始めたオレを見た冴木さんは「ムードねえな」と呟いた後
オレの身体をおもいっきりくすぐってきた。


自分もくすぐり返す
ベッドから逃げ出す

(10)
「もうだめぇ!」脇腹と首筋を同時にくすぐられて我慢の限界。
冴木さんの体を振りほどいてベッドの上から必死で逃げた。
冴木さんは間髪入れずに身を翻してオレの腕をつかんだ。
「あっ!」足がもつれてソファーに尻餅をつくと上から悪い顔で笑う冴木さんが覆い被さってきた。
「さ、冴木さ…」
「これ剥がしてやるよ。たっぷり時間をかけて、な」ぶかぶかのTシャツを一気に首元までめくられ、露になった胸を口に含まれた。
「はぁ…っ!」
軽く歯を立てて噛まれ、唾液を絡ませて吸われる。濡れた音が恥ずかしいからやめてほしい!
塔矢とは違って、冴木さんはわざとえっちな舐め方をしてオレのことをからかってるんだ!ひ、ひどいよ!
「やっ、あ、やぁっ!」
空いていた方の胸を唾液を絡ませた指で捏ねるように弄られる。
冴木さんの舌と指の動きに腰の辺りから見知ったむずむずが這い上がってくる。
「だめっ!だめぇっ、さえきさんっ!オレ、このままじゃ…っ」
こんなに密着されていたら勃起したことがばれてしまう。
押し返したいけど熱を灯された身体には全く力が入らない。このままじゃ…。
「かわいいよ進藤」
どうにもならない身体に泣きたい気持ちになったところで冴木さんの顔が近づいてきた。
唾液で濡れた唇が合わさりちゅ、と音をたてて離れた。
すぐに今度はもっと深く食べられちゃうようなキスをされた。オレの口の中に冴木さんの唾液が流れ込んでくる。
それをかき回すように冴木さんの舌がオレの口内に入ってきた。暖かい舌が優しくオレの舌に絡んだ。
冴木さんはキスをしながらオレのジャージと下着をまとめて脱がしていく。
もうオレは完全に勃起してしまっていた。さっきまでは知られたくなかったけど、今はもういいや。
押し付けられた冴木さんのそこもオレと同じようになっていたのがわかったから。いっしょなら、いい。
「なあ進藤、お前はまだ子供なんだぜ。声を殺して泣くのはもう少し後でいいんだ」
「冴木さん…ありがとう」
今度はオレから口付けた。男同士で変だとか、不思議とそんなことは思わなかった。
ただ、冴木さんとキスがしたかった。



冴木さんの、触らせて?
冴木さん、もっと触って?

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