お江戸幻想異聞録・金剛日記

(56)
一柳さまはそう云いますとあわてて魔羅を引き抜き、一息ついたのち今度は別
の張形を手にとりました。
それは反り返って太く、雁首にいぼいぼがついてございます。
「これはどうかのう。」
まがまがしい形に光は目を見開いて息を止めました。
一柳さまが張形にふのりをつけ、また菊座にもふのりを足しているあいだ、光は
手探りで朱色の印籠をさぐり、その中から丸薬を手に取って素早く呑み下します。
いくばくもせぬうちに目がうっとりと、焦点も合わぬまま、もつれる舌が一柳さまを
誘います。
「和尚さまァ…入れてぇ…」
「ほほ、わしの魔羅では足りぬとみえる。」
狭い菊座にめりめりと黒い張形が突き立てられ、光の手が宙でもがきました。
「ひぃんっ!…あ…ああ…」
「おお、よいか、よいのか?」
張形が小刻みにゆるりゆるりと動くうち、呻き声が次第に色をおびてまいります。
「あ…ああッ!はぁん…和尚さま、もっと奥まで突いて…ああん…」
「そうか、そうか。お前さまは奥を掻かれるのが好きか。…どれ。」
張形を奥まで入れますと、光は体を震わせながら、もつれた舌で呻きました。

(57)
しかし一柳さまは二、三度奥を突いただけにて、抜け落ちる手前まで引いたの
でございます。名残惜しいとばかりに菊襞が張形にからみつき、引くにあわせ
て牡丹色の肉襞がめくれあがりました。
「おお…これはまたとない美しい花じゃの。」
一柳さまは顔を紅潮させるとそのめくれあがった牡丹の花びらにちろちろと舌先
を這わせました。
「あ…あぁぁ!いい…!」
張形を浅く抜き差ししながらこぼれた花弁がぬめった舌先でなでられます。
そうしてふたたび、ずんと奥まで沈められます。

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花弁を舌で責められ、奥を張形で責められ、それを繰り返されるうちに、張形
と舌先をもとめひとりでに体が動きます。
「ああ…いい…和尚さま…いい…」
「ほほ、まこと好き物の子じゃな。どれ、わしの魔羅もどうじゃ?」
張形を抜き、怒張しきった魔羅が差し込まれました。光は濡れた目をして唇か
らはたらたらと涎を垂れ流しております。
「う…んん…和尚さま…もういかせて…」
「お前さまは淫らじゃのう。それもここひと月ばかりで驚くほど色がついたのう。
お前さまの菊でわしの魔羅もとろけそうじゃ。…おぉ…。」
一柳さまのつきでた腹と光のすべらかな尻がはじけあう肉音がいたします。
いくばくもせぬうちに一柳さまは果ててしまい、菊の花からおびただしい量の樹液
が漏れ出しました。

(59)
そののち、夜半すぎのこと――。
何度かくぐもった悲鳴が途切れ途切れに聞こえ、ようやく一柳さまがお帰りに
なりました。
一柳さまの恰幅のいい背中を見送りつつ、座敷へまいりますと、暗闇の中、
乱れた袖にくるまるようにして光が倒れこんでおりました。
枕元に転がる印籠を拾い上げましたら、布団になげだされた手がぴくりとうご
き、虚ろな目がこちらをじっと覗っておりました。
「一柳さまをお見送りしてきたぞ。」
「うん…」
光は起き上がろうといたしましたが、すぐにパタリとへたりこんでしまいます。
「どうした?起きられるか?」
「あ…うん…あの糞坊主…痛っ!」
その後も一柳さまは己の魔羅では飽き足らず、大小さまざまの張形をためさ
れたようでございます。

(60)
「いろんな張形持ってきやがって、それでオレがいくまで責めるんだぜ…。」
歯噛みをしながら、立ち上がろうとしますが、足がもつれてまたうずくまり、
はぁはぁと肩で息をしております。
これは何も責められた痛みだけではありますまい。
印籠の中を改めますと、手前が与えたときよりずいぶん目減りしております。
手前はしゃがみこんで手を差し出しました。
「ほら、俺がおぶってやるから…乗れ。」
光はビックリした顔をいたしましたが、おとなしく手前の肩に手をかけました。

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「なァ、オレ、重くない?」
「はは…おめえぐれえ小せえのに重いも何もあるか。ほら、しっかりつかまっ
てろよ。」
茶屋の下男は光をおぶって土間へと出た手前を驚いて見ておりましたが、手前
はそのまま表へ出てなるたけ光を揺すらぬよう歩き出しました。
「やだなァ…恥ずかしいよ…おろしてよ…すぐそこじゃねえか。」
「いいからおめえはおとなしくおぶさってろ。」

人気のない道を手前の踏みしめる草履の音だけが響いておりました。
「…いすみさん。」
「なんだ?」
「あのさ…ごめん。」
「なにがだ?」
「――昼間のこと。」
そう小さく呟いた光に、手前はくすりと笑いました。
「あぁ、おめえの癇癪にはもう慣れてるさ。」
「…そっか…。」
「でも、薬はもうやめとけ。おめえの印籠、預からせてもらうぜ。」
「…うん…」

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光のやわらかい髪が首にはらりと落ち、肩に頬を寄せたのがわかりました。
それが細く震え、光は声を押し殺して泣いておりました。
「いすみさん…オレ…」
「ん?なんだ?」
「やっぱり、京の子のほうがいいのかな…」
「なんだ、日高に云われたこと、まだ気にしてんのか。」
「ちがうよ…!そうじゃねえ…佐為は…やっぱりオレみたいなのより京の子の
ほうがいいのかな…」
「莫迦云うもんじゃねえ。佐為さまはそんなお方じゃねえだろ。」
そう云いながら、手前は息苦しい思いに囚われました。丸薬を使うのは、無理
に抱かれる辛さから逃れるだけではありますまい。
光がいつまことを知ってしまうのかそら恐ろしく、しかし一方で佐為さまから見
捨てられたと疑う光が不憫でなりませんでした。
「光。見てみろ、お月様がきれいだぜ。満月じゃねえか、なあ。」
「う…ん…。」
月の光があたりをやさしく照らしておりました。
「佐為さまも何かご事情がおありですぐに帰れねぇんだろ。めんどうなお公家さま
だからな…でも、きっとおんなじお月様を見ておめえを想っていらっしゃるぜ。」
「うん…。」
手前の肩をぎゅっと掴みすすり泣く声がいたします。
足を止め、しばし泣き止むまで待つことにいたしました。
すぐ目の前には若衆部屋という闇――。光は闇に包まれたままでございます。

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