お江戸幻想異聞録・五月雨(さみだれ)
(24)
正絹の下帯をずらすと、皮から頭をきれいに出した一物があらわになった。
十五ににしては大きい。明のそれは根元が太く、先へいくにしたがって細くなっ
ている。だが、雁首はカサが張っていてまるで松茸のようだった。
たまらなくなって、雁首を口に入れると、長らく味わっていなかった味と感触が
舌の上にひろがり、光は夢中でそれを吸い上げた。
「ん…ふぅっ…ふ…」
明の息遣いがだんだん早くなるのがわかった。裏筋に舌先を当ててぺろぺろと
動かすと、縁側の上に仰向けになった体がぴくんと跳ねる。
光は己の菊座をほぐしつつ、頭の芯が痺れそうになる。根元までしっかりと咥
えると、明がヒッと声をあげた。
「…声、出すなよ。」
魔羅から唇を離し、舌打ちまじりに云うと、明は弱弱しい声でごめんと呟いた。
懐紙を出して明の歯の間に噛ませ、ふたたび「男」を存分に味わう。明の一物
は大きさ、太さともに申し分ない。なにより表はやわらかくしなるのに芯が固い。
激しく突かれればしなってプルンと張り出したカサがいいところに当たりそうだ、
と光はゾクゾク背筋が震えるのを覚えた。いっときも早く菊座に迎え入れたいが、
口の中に広がる感触や匂いも惜しい。
明が光の両肩を掴み、必死で爪を立てて光をどけようとしている。達しそうなの
だろう。喉の奥まで詰め込んだ一物を外して囁く。
「出して…。」
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そうして雁首から根元まで唇と舌を使って吸い上げる。
「ン…フッ…ンーーーッ!」
大きく膝を割られた明の脚がガクガクとうち震え、熱い塊が勢いよく光の口の
中に吐き出された。ねっとりとした青臭い精にくらくらする。
手の中に吐き出して、それを丹念に菊座に塗り付けると、それだけで興奮が高
まってくる。体の下にいる明は驚いたように光を見ていた。
「――まだ、いけるだろ?」
「えっ…。」
明のものは萎えきっておらず、光が手で扱くとまたもとの通りカサの張った形
に戻った。
明の腰の上にまたがり、精を塗り付けて拡げた菊を切先にあてがう。
「えっ…し、進藤っ…?」
口に咥えた懐紙がはらりと落ちた。腰を沈めると、熱い肉塊が菊座をひろげて
侵入してくる。
「ハァッ…はっ、はっ、はっ…」
半分ほど入れたのち、光は動きを止めて熱い魔羅の感触をじっくりと味わう。
表がやわらかいから、痛みはない。ゆっくりと上下に動くと、菊の隅々まで
ずるずると引きずるような心地に頭の芯が燃え、擦られたところが異様なほど
熱を帯びているのがわかった。
「あ…ぁ…ん…明…」
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腰をずん、と落として根元まで呑み込むと、体中の毛穴が開いたかのような衝撃
が駆け抜けた。
「…ん…あ…あ…。いい…明ァ…おまえの……」
体の中が熱くて苦しくてどうにかなってしまいそうだった。
「進藤…もう…離せ…」
明も苦しげに眉をひそめながら、ハァハァと息をついていた。
奥まで魔羅を飲み込んで腰を揺する。稲妻が体を駆け巡り、久しく感じていな
かった快楽があふれ出した。これが欲しかった。入り口を擦っていく感触も、
中の火種をこする感触もたまらない。体がとろけそうだった。
「あ…あ…いく…明…もぉいく…」
「だめ…進藤…だめだよ…出る…っ…く…」
声をあげそうになるのを堪えて大量の息が喉をかすめてハーハーと衣擦れの
ような音を立てた。
「ウッ…!出…る…!」
明がうすいうめき声をあげてビクッと震えた。
体の中で固く張り詰めていたものがくにゃりと緩むのがわかる。
腰を上げて明のものを抜くと、熱い液がどろりと流れ出す。その感触にすら体
が震え、体中が痺れて動けない。
そのまま、明の体に覆いかぶさって息を弾ませていると、明の細い指がそうっと
前髪を梳いた。
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そのやさしい指先に後悔がこみ上げてきた。明はたぶん、女すら抱いたことが
ないだろう。それを、自分の満たされぬ欲望のはけ口にしてしまった。
「――明…ごめん…」
「……。」
そんなつもりではなかったはずだ。光はひそかに明に憧れ、明のように強くなり
たいと願っていた。きつい言葉を浴びせつつも、やさしく己に接してくれた明を利
用して――これでは己を好き勝手に抱いてきた男たちと同じではないか。
後悔にきりきりと胸が痛んだ。
明は体をずらして起き上がり、光の撒き散らした精を懐紙でゆっくりふき取ると、
乱れた浴衣を丁寧に直していた。
「明…?」
「――早く着物を着なおしたほうがいい。風邪を引くよ。」
そう云って立ち上がると、明は振り向きもせず、暗闇の中にすうと消えていった。