淫靡礼賛
(71)
* * *
白いシャツの上から乳首を強くつねり上げられ、ヒカルはつい声をあげてしまった。
黒いカーゴパンツは早々に脱がされて、下半身はすでにむき出しにされている。
言われた通り、ベッドの上で四つん這いになると、硬くて肉の分厚い手が小さな尻を
高く持ち上げた。
尻の谷間を触れるか触れないかぐらいに指先が這いずり回った。
「あ…あ…あっ」
ゾクゾクと肌が粟立ち、思わず声が漏れてしまう。
「キミの尻は本当にきれいだよ。」
低い座間の声に、ヒカルは寒気と悔しさを感じた。
中年特有の生臭い匂いに吐き気を催しながら舌を吸われ、太い指が体を這い回るた
びに、まるで虫か蛇のような悪寒を感じる。
だが、体のどこが感じるか知り尽くした指先が乳首を摘み、わき腹や尻を撫でていく
うちにたまらなくなって声をあげ、体を開いている。
座間のいやらしい目の前で淫らな姿をさらしているだけでも、下半身がカアッと熱くなり、
アソコの先が濡れてくる。
「おや?前をこんなに勃たせて…濡れているね。」
座間はそう笑い、手の甲がサッと一瞬だけ前を掠めていった。
「はあっ…!」
座間のねっとりとした舌先が谷間をたどる。
「あはァ…ん…あっあっあっ…あ…」
舌が往復するたびに体の中心が座間の舌と太い指を欲しがってざわめき出す。
ふと、アキラの涼やかな瞳がヒカルの脳裏をよぎった。
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アキラの前では思いっきり清純ぶっているくせに、いざ、座間に触られただけで体が
疼きだす自分を呪った。
――汚い。嫌がっていても、座間の前では快楽に流される自分は汚い。
そう思うと、悔しくて涙がこぼれそうになる。
座間の無骨な両手がやわらかい尻たぶを掴み、左右に開いた。
谷間のいちばん感じやすいところがさらされる。
「おお、こんなにヒクヒクさせて…。よしよし、たっぷり可愛がってやるからな。いい声で
鳴けよ。」
座間は興奮気味に息を早め、剥きだしになった蕾をベロベロと舐めあげた。
「はぁああん!ああ…!」
「キミの声はいつ聞いても色っぽいなァ。たまらんよ。」
不意に冷たいものが後孔に触れ、そしてそれを塗りつけていた座間の太い指が中に侵入した。
「あっ…く…くっ…」
座間の手が動くたびに、ローションがクチュッと卑猥な音を立てる。
自分の分泌したものでもないのに、ヒカルは何故か恥ずかしくて、だが座間の侵入を
許しているそこが熱くなっていくのを感じ取っていた。
座間は背中から手をまわして白いシャツのボタンを外して脱がせた。
うなじや、肩、わき腹にかけて赤い斑点や噛んだあとがまだくっきりと残っている。
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「ほう。誰につけられたんだ?」
指が二本に増やされる。
「めでたく塔矢とヤレたのか?」
ヒカルは唇を噛みしめた。
座間は含み笑いを漏らすと、肩についた赤い小さな歯のあとをペロッと舐めた。
そして、ヒカルの中を煽るように指をゆっくりと動かした。
「あぁ…!」
頭がくらくらする。座間の指はヒカルを翻弄するように浅く深くえぐり、時おり、奥をチ
ラチラとくすぐる。
身体の芯が鋭く痺れ、思わず声が漏れてしまう。だが、座間の指はすぐにそこを離れ、
再び、今度はさらに圧迫感を伴って侵入してくる。
「おお、三本はいっちまったぞ。――なあ、毎晩ここを自分でも弄っているのか?
――それとも、塔矢に入れてもらったのかな。」
「くぅ…ん…や…だ…そんなこと…」
アキラには後ろは触れさせたことすらない。そもそも、アキラの頭の中にはアナル
セックスなんてないだろうとヒカルは思った。
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アキラに口でしてもらうのさえ身体の血が逆流しそうなほど恥ずかしいのに、座間に
後ろを弄ばれながらアキラの名前を出されるなんて、死んだほうがましだった。
ヒカルは必死でかぶりを振った。
グシュグシュとローションの音が響き、甘い痺れが立ち昇る。
「あっあっあっあっ…ん…」
腰を乱暴に掴まれ、太くて硬いもので犯されたい。そう考えてしまう自分が途方もなく
いやらしくて、犯すのがアキラだったらと意識を飛ばす。
さんざん蹂躙されて開いた蕾に硬く熱い肉棒があてがわれた。
「欲しいだろう?」
できることなら、こんなおぞましいものなんて拒絶したい。だが、ヒカルはもうすでに
理性を半分以上失っていた。こくんと首を縦に振ると、座間の肉棒がゆっくり蕾に入れられた。
「ああっ…!」
座間も息を荒くつきながら、少しずつ進む。
すっぽりと全部、肉棒をくわえ込ませると、座間は緩慢に動き始めた。
「うおぅ…最高だ。」
ゆっくり動きながら、太い指が乳首を摘みあげた。
「はぁんッ…!あっあっいや…。」
「お…ぉ…!締まる…!」
ローションが擦れ合う濡れた音と、腰を打ちつける音が重なる。熱い杭を打ち込まれ、
腰が溶けそうだった。
もし、それが座間ではなくアキラだったなら。
「あ――あン…。いい。もっと…」
頭の中にアキラの、思ったよりもしっかりした身体を思い浮かべた。アイツは細いくせに
結構力もあるし、手もアソコも大きい。
「あぁッ…いい…もっとして…やめないで…激しくして…!」
だが、返ってきたのはねっとりとした座間の声だった。
「ああ、俺のチンポをこんなに咥えこんで…よしよし、種付けしてやるからな…」
「う…んんぅ…ああああん!」
座間の動きが一層激しさを増し、最後は獣のように唸りながら――果てた。
(75)
――どのくらい経ったのだろう。
気がつくと、ヒカルはひとり、ベッドの上に転がされていた。
後孔がうっすらと熱を持っていて、座間に犯されたのが現実なのを思い返す。
起き上がろうとして、両手が奇妙なベッドフレームに括りつけられているのに気づいた。
(くそッ…変態オヤジめ。)
引っ張ったりねじったりしてみたが、分厚い皮の拘束具とあって、どうにかなる代物では
なかった。
諦めて天井を仰ぐ。
ふと、ドアが軋む音がして、そちらを向くと、ズボンからシャツを出した状態の座間が
立っていた。
「お目覚めのようだねェ。」
ヒカルはキッと座間を睨みつけた。