お前のことなんか好きじゃないのに

 その日の放課後も、長瀬はいつものように空き教室に来ていた。
 だが、そこに城戸の姿はない。
 いつもなら、長瀬よりも先に来て待っているはずなのに。

 いつもの時間を過ぎても、城戸は一向に姿を現さなかった。
「遅せえな、城戸のやつ……」
 焦れたような言葉が、思わず長瀬の口を突いて出る。
 無意識に出た思いがけない呟きに、長瀬ははっとした。

 ちょっと待て。これじゃまるで、城戸が来るのを期待してるみたいじゃないか。
 あんなやつなんて来ない方がいいに決まってるのに。

 半陰陽である長瀬の処女を力づくで奪い、舎弟たちにバラされたくなかったら従え、と脅迫して関係を強要してきた卑劣極まる男……それが、城戸だ。
 城戸に無理やり犯されてからこの一ヶ月間、長瀬はほとんど毎日のように、城戸の性欲のはけ口として好き放題されていた。

 女性器がある以外は見た目も心も男である長瀬にとって、同じ男から女のように辱められることは、酷い屈辱と耐え難い苦痛以外の何物でもない。
 だが、弱みを握られているがゆえに逃れることもできず、心に激しい抵抗を感じながらも、長瀬は黙って城戸に従い続けていたのだ。

 このまま城戸が来なければ、長瀬はそんな苦痛の日々から解放されることになる。元通りの平穏な日常が戻ってくるのだ。
 自分が女の部分を持つ半陰陽だと思い知らされることもないだろう。
 きっと、今まで通り最強の男である『晴嵐のキング』として、一大派閥の頭として堂々と胸を張っていられるはずだ。
 こんな嬉しいことがあるだろうか。

「……」
 なのに、どうしてこんなに落ち着かないのだろう。
 このもやもやする気持ちは一体何なのか。

 黙り込んだまま自問自答する長瀬の顔に、戸惑いの影が差した。

 黒板前の段に腰掛けたまま、長瀬は左腕の時計にちらりと目をやる。
 気づけば、ここに来てから、かれこれ一時間近くも経過していた。
 こんなに待っても来ないのだ。どうせもう今日は来ないだろう。

 諦め顔でため息をつくと、長瀬は立ち上がった。
 そして扉に向かって歩き出す。

 その時、ふいに教室の引き戸が開く音がした。
「! 城戸!」
 扉の向こうから現れた人影に、長瀬は思わず声を上げる。
 ドアが開く音とともに姿を現したのは、城戸だった。

 だが、その表情はなぜだか思い詰めたように暗い。
 思い詰めた表情のまま、城戸は無言で長瀬に近づいてくる。
 そして、いきなり長瀬を強く抱きしめると、その唇にそっと口づけた。
「……っ」
 強引だが、優しい……触れるような、確かめるようなキス。
 そんな城戸の口づけに、長瀬の心は戸惑いと混乱で溢れ出しそうになる。
 どうしてだろう。城戸からこんなふうに優しくされるなんて、今までにはなかった。

「お、おい、城戸……?」
「黙ってろ」
 戸惑いに揺れる長瀬の声を、低く静かな城戸の声が制止する。

 奥歯を噛んだ城戸は、何かに耐えるような、こらえるような切ない表情をしている。
 その辛く切ない表情のまま、城戸は長瀬の両肩を掴むと、壁際に追い詰めた。
 そして、学ランの下に着ている長瀬のTシャツの裾から手を入れ、素肌に直接触れる。
「くぅ……ッ」
 指先で乳首に触れられ、甘く痺れるような快感に長瀬は思わず声を漏らした。

 生理前だからだろうか。敏感になっている乳首は、軽く触れられるだけでも気持ちよくて声が出てしまう。
「ここも感じるんだな」
 確かめるように言って、城戸は笑みを見せた。
 それは今までのような冷たい嘲笑ではなく、穏やかで優しい笑みだった。

 城戸は片手で長瀬のTシャツをたくし上げると、既に勃ち上がっている乳首を口に含んだ。
 そして、そのまま舌先で舐め回す。
「! ……ぅあっ……ぁん……っ」
 長瀬の喉から甘く切ない喘ぎ声が上がった。
 城戸の愛撫に長瀬の股間は急速に熱を帯び始める。

「勃ってるな、長瀬……すげえ硬くなってる」
 嬉しそうに言って、城戸はズボンの上から長瀬の股間を大きな手で包み込んだ。
 そして、指でそっと撫で上げる。
「んっ……」
 着衣越しに撫でられる感触がもどかしくて、長瀬は股間に触れる城戸の手に自らの手を重ね、押し付けた。
 そんな長瀬の行動に、城戸の目が笑みで細められる。
「直に触って欲しいんだろ。してやるよ」
 言って、城戸は長瀬のズボンのベルトに手をかけた。
 カチャカチャと金属音が響き、ベルトが外される。

 城戸は長瀬のズボンの腰を下着ごと掴むと、太ももの中ほどまで一気に引き下ろした。
 ズボンの股間を窮屈そうに押し上げていた長瀬の男の部分は、その反動で弾かれたように飛び出す。
 城戸は、硬く勃ち上がっている長瀬の男の部分を握ると、軽く上下に扱いた。
 硬く反り返った長瀬の男の部分は、城戸の手を我慢汁で濡らしながらドクドクと脈打っている。
「くぅ……っ」
「気持ちいいか? 長瀬……お前のチ○ポ、すげー脈打ってビクついてるぜ」
 快感に眉根を寄せる長瀬の耳元で、城戸は優しくささやいた。

 そう言う城戸の股間も、長瀬と同じぐらい硬く膨らみ、ズボンの股間を押し上げながらその存在を主張している。
 だが、城戸は自らのモノに構う様子はない。
 いつもなら真っ先に自分の快感を優先するはずなのに、今の城戸はそんなことは全く眼中にないようだ。

「今日はお前を気持ちよくしてやるよ。いつも俺にしてくれてたみたいに」
 城戸は自分がいつも長瀬にさせていたように、自ら長瀬の足元にしゃがみ、膝立ちした。
 そして、目の前にそそり勃つ、硬く反り返った長瀬の男の部分を、何のためらいもなく口に含む。
 熱く濡れた城戸の口腔粘膜が長瀬の男の部分をねっとりと包み込んだ。

「?! ぅあッ……! ……っ、城戸?!」
 城戸の突然の行為に、長瀬は驚きと快感の声を上げ、思わず城戸の髪を掴んだ。
 初めて味わう咥内の快感に、長瀬の腰がびくりと震える。
 城戸の手で扱かれることはあっても、口で舐められるのは初めてだった。

 くちゅくちゅと濡れた音を立てて、城戸は長瀬の男の部分を舐めしゃぶっている。
 同じ男同士だからだろうか。ぎこちないながらも、城戸の愛撫は長瀬が感じるポイントを的確に責めてくる。
 壁に背を預け、城戸の咥内に男の部分を突き挿れて、とろけそうな快感に長瀬は喘いだ。

「き、城戸っ……何で、こんな……」
「ん? 言っただろ。お前を気持ちよくしてやる、って」
 戸惑いを隠せない長瀬に、城戸は顔を上げ、事もなげに答える。
 そして俯くと、自分にもほとんど聞こえないほどの小さな声で静かに呟いた。

 ……これで最後だからな。

 その声は小さすぎて、長瀬の耳には届かない。

 城戸は顔を上げると、目の前でそそり勃つ長瀬の男の部分を再び咥えた。
 そして、いつも自分が長瀬にさせていたように、硬く張った男の部分を舌で舐め、愛撫する。

「! んっ……!」
 城戸の熱い咥内に包まれ、こみ上げる快感に長瀬はのけ反り、喘いだ。
 初めての快感に長瀬の男の部分はあっと言う間に限界を迎え、今にも達してしまいそうになる。

 一方、長瀬の女の部分も、男の部分に与えられる快感に敏感に反応して疼き始めていた。
 発情し、男の部分の陰でヒクヒクと疼く女性器から溢れ落ちた愛液は、男の部分の下で射精感にせり上がっている膨らみを濡らし、両脚の間に広げられている下着の股の部分に垂れ落ちた。

「城戸っ……俺、もう、出るっ、出ちまうっ……!」
「いいぜ、出せよ。俺の口の中で……全部飲んでやる」
 咥内にとろとろと溢れ広がる我慢汁を城戸は音を立ててすすり、長瀬の男の部分の先にある尿道口を尖らせた舌先で抉った。
 ガチガチになった射精寸前の長瀬の男の部分が、城戸の咥内でビクンと大きく脈打つ。

「! ぅあぁッ……いくぅっ、チ○ポイクぅッ……!」
 快感に顔を歪めた長瀬の喉から絶頂を告げる声が上がった。
 同時に、城戸の咥内にある長瀬の男の部分から、生暖かい精液が勢いよく吐き出される。
 壁にもたれ、髪を掴んだ手で城戸の頭を押さえながら、長瀬は城戸の咥内で射精した。

「っん……」
 射精しても硬いままの長瀬の男の部分を、城戸が自らの咥内から引き抜くと、城戸の唇と長瀬の男の部分との間に、唾液と精液が混ざり合った粘液の糸が引かれた。
 城戸はその糸を舌で舐め取ると、咥内に溜まった精液をごくりと一気に飲み下して、手の甲で口元を拭い、膝立ちのまま長瀬を見上げた。
 視線の先には、同じようにこちらを見ている長瀬の顔がある。
「気持ちよかったか? 初めてだから、あんま上手くなかっただろうけどな」
 言って、城戸は立ち上がった。

 立ち上がると、身長差のない二人の視線は同じ高さになる。
 目の前で城戸を見つめる長瀬の真っ黒な目は情欲に濡れ、その表情は無防備にとろけていた。
「城戸……」
 長瀬の低く切なげな声が城戸の名を呼び、がっちりした男らしい手が城戸の手を掴んだ。
 そしてその手は、男の部分の陰で密かに濡れ疼いている長瀬の女性器へと導かれる。
 熱く濡れ潤った女の部分の柔らかな感触が、城戸の指先にぬるりと触れた。

「え……」
 まさか、長瀬から触らせてくるとは思ってもみなかったのだろう。
 いつも自分から触れていたはずの女性器の感触に、城戸は驚いたような表情を見せた。
 城戸との度重なる性交で女性器の快感が開発されている長瀬からすれば、それはごく自然な成り行きなのだが、長瀬をあくまで男として尊重しようと思っていた城戸にしてみれば、長瀬の行動は予想外のものだったらしい。

「長瀬……?」
「こっちも、してくれよ……いつもみたいに……。チ○ポだけじゃ、ガマンできねえよ……」
 戸惑いの表情を浮かべる城戸に、長瀬は縋るような目で切なげに訴えてきた。
 城戸はそんな長瀬を片手でぐっと抱き寄せると、耳元で優しくささやく。
「……分かった、こっちもしてやる。お前がして欲しいこと何でもしてやるからな」

 ズボンと下着を脱ぎ去った長瀬は、下半身裸の状態で黒板前の段に腰掛けていた。その隣には城戸がいる。
 城戸は左手で長瀬の男の部分を扱きながら、その下にひっそりと隠れている女の部分を右手の指先で探った。
 ほどなくして、男の部分の膨らみの陰にある女性器の割れ目が、城戸の指先に触れる。

 城戸は二本の指で、慎ましく閉じた割れ目の両脇を押さえると、その指を左右に割り開いた。
 ぱっくりと左右に大きく開かれた割れ目の内部が外気にさらされる。

 慎ましく閉じていた外側とは対照的に、割れ目の内側は男の部分に加えられた快感に興奮して発情し、膣粘膜から溢れ出した愛液でとろとろに濡れ潤っていた。
 城戸は長瀬の割れ目の中に溢れたとろとろの愛液を中指の腹で掻き混ぜると、そっと優しく指先を突き挿れた。
 ごつごつした武骨な男の指が、柔らかく濡れ潤った膣にゆっくりと埋められていく。
「あ……っ」
 城戸の右手を掴んでいる長瀬の手に力が込められた。

「すげー濡れてるな、長瀬。お前のオマ○コの中……熱くてトロトロだ」
 低くささやくように言って、城戸は長瀬の膣を指で突いた。
 充血して膨らんだGスポットが武骨な指の腹に押し潰され、こすられて、膣を指で突かれる度に、長瀬の口から切ない喘ぎ声が上がる。

「城戸っ……城戸の指、すげー気持ちいい……オマ○コとろけそう……」
 ハアハアと息を上げながら、長瀬は恍惚とした表情で城戸に身を任せた。
 やっていること自体はいつも自分でしているオナニーと全く同じなのに、それよりも気持ちよく感じるのは、きっと城戸に触れられているからだろう。

 長瀬の両性器を愛撫しながら、城戸は胸の奥に切ない気持ちがこみ上げてくるのを感じていた。

 こんな風に長瀬に触れられるのも、これが最後だ。
 寂しいし、切ないし、名残惜しい。本当はもっとずっとこうしていたい。

 だが、それは今まで自分が長瀬にしてきた酷い仕打ちを考えれば、絶対に許されないことだ。
 第一、長瀬がそんなこと望んでいるわけがない。
 誰が酷い目に遭わされた相手と一緒にいたいと思うものか。

 だから、これが最後だ。

 長瀬を見つめる城戸の表情が辛く切ないものへと変わっていく。

「長瀬っ……」
「っん……」
 ふいに、低く切なげな声で呼ばれたかと思うと、長瀬は城戸に口づけられていた。
 口づけはほのかに青臭く苦い味がした。長瀬が自ら城戸の咥内に放った精液の味だ。
 気持ち悪いかと思いきや、それすらも長瀬には性的興奮を煽る刺激に感じられる。
 半開きの口に差し込まれた舌に応えるように、長瀬も自らの舌を城戸の舌に絡ませた。

 唇が離れ、目を開けると、至近距離に城戸の濃い茶色の目があった。
 城戸はなぜか泣きそうな顔で長瀬を見ている。
 その顔に微かな優しい笑みが浮かんだ。
「とろけさせてやるよ……俺の指でお前のオマ○コ、イかせてやる」
「城戸……っ、ん……」
 今度は唇が触れるだけのキスをされて、そっと押し当てられた城戸の唇に長瀬の声は途切れた。

 快感でぷくっと膨れて充血した長瀬のGスポットを、城戸の武骨な男らしい指がこする。
 膣が、女性器がとろけるような快感に、長瀬は城戸にしがみつき、喘いだ。
 城戸に指で愛撫されている長瀬の女性器からは、くちゅくちゅと濡れた音が響き、感じて溢れ出した多量の愛液は長瀬の尻を伝って、腰かけている段を濡らしていく。
 城戸に扱かれている長瀬の男の部分からは我慢汁が溢れ出し、城戸の左手を濡らしていた。

「! あっ、いくっ……城戸っ、俺、もう……っ……」
「いいぜ、長瀬……イけよ。俺の指でオマ○コ気持ちよくなって……イッていいんだぜ」
 ふいに上がる長瀬の切なく性急な声に、城戸は低い声で優しく答える。
 長瀬を見つめる城戸のその眼差しは、切なくも温かい。

 掴んだ城戸の右手を、長瀬はぎゅうっと強く握り締める。
「あ、あぁッ、城戸ぉっ……いくッ……オマ○コイクぅッ……!」
 快感にとろけ切った無防備な顔を晒し、切羽詰まった切ない声で長瀬は叫んだ。
 同時に、城戸の指を咥えこんでいる長瀬の膣が強く締まり、ヒクヒクと痙攣する。

 男の部分で射精した時よりも快感の余韻が強いのか、女性器で絶頂した長瀬はぐったりとした様子で城戸に寄りかかった。
「イッたな、長瀬……」
 そっと頬に口づける城戸に、長瀬は放心状態のまま無言で頷く。
 絶頂したばかりの長瀬の女性器は、城戸の指を咥えこんだままヒクつき、絶頂の余韻に疼いている。
 城戸が指を抜くと、開き切った長瀬の女性器から白く泡立った愛液がとろとろと溢れ、尻を伝って段の上に流れ落ちた。

 城戸は立ち上がると長瀬の正面に回り、その両脚の間に自らの身体を割り込ませた。
 そして、そのまましゃがみこむ。

 両脚の間で膝立ちになった城戸は両手で長瀬の膝裏を抱え、持ち上げながら左右に大きく開いた。
 絶頂の余韻にヒクついている長瀬の女性器が、城戸の目の前であらわになる。

「な、なに……」
 突然の行動に驚いたのか、長瀬の真っ黒な目が丸くなった。
 城戸は目の前にある長瀬の女の部分に顔をうずめる。
 熱い舌が、柔らかく濡れ潤った割れ目の内側に触れ、長瀬の身体がびくりと震えた。

「?! 城戸っ……んなとこっ……」
「……嫌か?」
 顔を上げた城戸と視線が合って、長瀬の頬は照れたように赤くなる。
 そんな長瀬を城戸は優しい表情で見つめている。

「い、嫌じゃねぇけど……っ」
 困惑したような顔で口ごもると、長瀬は片手の甲で顔を覆うようにしながら叫んだ。
「恥ずかしいんだよっ……!」

 城戸の頬に優しい笑みが浮かんだ。
「じゃあ、恥ずかしいなんてこと考えられなくなるぐらい、気持ちよくしてやるよ」
 言って、城戸は再び長瀬の女の部分に顔をうずめる。
 そして、左手で長瀬の男の部分を握ると上下に扱きながら、柔らかく濡れ潤った割れ目の内側に舌を這わせた。

 城戸の舌が、愛液で濡れ潤った長瀬の女性器を舐め回す度に、ぴちゃぴちゃと濡れた音が響く。
 膣口のすぐ上にある、充血して膨らんだ小さな肉の突起を城戸が舐め上げると、長瀬の喉から鋭い喘ぎ声が漏れた。
「! ひ……ッ、そ、そこは……っ」
「ここか?」
 城戸は長瀬の女の部分から口を離すと、指の腹で膣口近くの突起を押さえ、こすった。
 この突起は、長瀬が膣に挿入される時に巻き込んでこすられる部分だ。
 だからか、膣の外にあっても、気持ちよくなるように出来ているのだろう。

「あぅ……ッ!」
 城戸の愛撫に長瀬の身体がびくりと震える。
 その膣口は愛液を溢れさせ、物欲しそうにヒクついていた。

「チ○ポとオマ○コ穴以外にも気持ちいいとこがあるんだな」
 嬉しそうに言って城戸は、長瀬の膣口に続く突起に口づけ、舌で舐め回し始めた。
 女性器に溢れた愛液を舌で掻き回す濡れた音が、ぴちゃぴちゃと響く。
「あ、あぁッ、城戸ぉっ……!」
 長瀬の手が城戸の髪を掴み、その喉から低く切なげな声が上がった。

 ふいに、長瀬が慌てたような声を上げる。
「! や、ヤバいって、城戸っ……何か漏れる……っ!」
「いいぜ、漏らしても。ガマンしねーで出しちまえよ」
 事もなげに言う城戸に、長瀬の顔が驚きと羞恥の色に染まる。
「?! そっ、そんな……っ……! あぁッ、出るぅッ……オマ○コイクぅッ……!」
 言うが早いか、長瀬の女の部分から無色透明の液体が勢いよく噴き出し、城戸の顔にかかった。
 俗にいう、潮吹きというやつだ。
 だが、城戸は長瀬の放った潮で濡れるのにも構わず、止めどなく溢れ噴き出してくる愛液と潮の混ざり合った汁を、ジュルジュルと音を立てて吸った。
 学ランの下に着ている城戸のTシャツの胸元は、長瀬に噴射された潮ですっかり濡れた色に変わっていた。

 全身をのけ反らせた長瀬は、身体をびくびく痙攣させながら腰を突き出し、女の部分を城戸の顔に押し付けている。
「あ、あっ、あぁっ、また来る……っ!」
 長瀬の喉から悲鳴のような声が上がった。
 潮吹きと同時に絶頂した長瀬の女性器は、城戸に舐められ、再び絶頂の波に襲われていた。
「いく、イクぅっ、オマ○コイクぅッ……!」
 咥えるもののない空っぽの膣が激しく収縮し、白く泡立った中出し汁のような愛液が膣口からとろとろと溢れ出す。
 溢れ出てきた愛液を城戸は口で吸って飲み、長瀬の女性器の両脇に生えている陰毛に粘りついた愛液も、舌できれいに舐め取った。

 立て続けに何度も絶頂させられたからか、息も絶え絶えになった長瀬は、腰かけていた段の上にそのまま倒れこんだ。
 ぐったりと寝そべったまま肩で息をしていると、いつの間に来たのか、段に腰掛けた城戸が長瀬の顔を覗き込んでいた。
 その眼差しは優しい。
「気持ちよさそうだったな」
 城戸の手が伸びてきて、長瀬の髪に触れる。
 男らしくがっちりした指が、うねった黒髪を梳いた。
「城戸……」
 頬に触れる温かな手が心地いい。
 その温かな手に触れたくて、長瀬は手を伸ばし、城戸の手に触れた。

 ふいに重ねられた手に、城戸は少し驚いたような顔を見せる。
 だがその表情はすぐに、嬉しそうな、それでいて切なく憂いに満ちたものに変わった。
 城戸が時折見せる切ない表情……その理由を長瀬は知らない。

「なあ、城戸。今度は俺がしてやるよ。いつもみてーに」
「……俺はいいよ。お前が気持ちよくなってくれたなら、それでいいからさ」
 無邪気に誘ってくる長瀬に、ためらいながら城戸は答える。

 そう。今日は最初からそのつもりだった。
 城戸には、自らの歪んだ欲望で長瀬を酷い目に遭わせ続けてきた負い目がある。
 そのせめてもの罪滅ぼし……と言っては何だが、今まで苦しめてきた分、いや、それ以上に、長瀬にはいい思いをさせてやりたかった。
 だから、自分のことはいい。

「じゃあさ、してくれよ」
「! なっ……」
 ふいにズボンの股間を掴まれ、城戸は驚いた声を上げる。
 はっとして長瀬を見ると、切なげな眼差しがこちらを真っ直ぐに見つめていた。

「城戸……、城戸のチ○ポを俺のオマ○コの奥まで挿れて、突いて……。いつもみてーにしてくれよ……。胎の奥が……子宮が切なくて、ガマンできねぇんだよ……っ」
 女性器の外側を城戸に愛撫され、弄られたせいで発情した長瀬の子宮は、城戸の硬い肉棒で突いて欲しくて疼いていた。
 膣の浅い部分で何度絶頂しても、城戸の硬く逞しい肉棒で子宮を突かれて達する、胎の奥深くから強くこみ上げてくる絶頂には敵わない。
「……っ、長瀬……っ」
 疼く身体を持て余し、切なく訴えかける長瀬に、城戸の肉棒は長瀬の手の中でズボン越しにどくりと脈打ち、硬さを増す。

 長瀬は身体を起こすと、両手で城戸のズボンのベルトを掴んだ。
 そして、金属音を立てながらベルトを外す。
 ズボンの腰を下着ごと掴み、強引に引き下ろすと、我慢汁でベトベトに濡れた城戸の肉棒が弾かれるようにその姿を現した。
 挿れて欲しいとねだるつもりだったのに、城戸の逞しい肉棒を目にした長瀬は、それをしゃぶりたくてたまらなくなる。

「すげえ……城戸のチ○ポ……」
 うっとりとした表情でそう呟くと、長瀬は身体を屈め、城戸の雄肉を口に含んだ。
 我慢汁で蒸れた雄肉の雄臭いにおいと味が、長瀬の咥内にじんわりと広がっていく。
 だが、それは長瀬にとって気持ち悪いどころか、むしろ性的興奮を掻き立てる刺激に感じられた。

「ん……っふ……」
 鼻にかかった低く甘い声を上げながら長瀬は、硬く勃起した城戸の雄肉を咥内いっぱいに頬張り、ぴちゃぴちゃと濡れた音を立てて舐めしゃぶった。
 城戸の尿道口から止めどなく溢れ出てくる我慢汁を、長瀬は自らの咥内に吸い出す。
 とろりとした我慢汁は、長瀬の咥内で唾液と混ざり合った。

「っ……ヤバいって、長瀬っ……いくっ……出ちまう……」
 息を荒げながら、押し殺したような声で城戸が呻く。
 急速に昂る射精感に、城戸の肉棒は長瀬の咥内でガチガチに膨らみ、睾丸はきゅっとせり上がっていた。
 口から城戸の肉棒を出して舌で舐めながら、長瀬は射精感にせり上がっている城戸の睾丸を手のひらで包むように転がした。
「くぅ……ッ!」
 城戸の身体がびくっとのけ反る。

「キン○マ、キュッてなってるな……いいんだぜ、出しても。俺の口ん中に出せよ。いつもみてーに」
 言って、長瀬は再び城戸の肉棒を咥えた。
 そして今にも射精しそうなほど昂っている城戸の硬い雄肉を、舌で舐めしゃぶり、愛撫する。
 ガチガチに硬く張り詰めた城戸の肉棒が、長瀬の咥内でビクンと強く脈打った。

「! ぅあッ、長瀬っ……イクッ……出るぅっ……!」
 城戸の喉から切羽詰まった切ない声が上がる。
 同時に、どろりとした濃厚な白濁汁が長瀬の咥内に勢いよく放たれた。
 咥内でドクドクと繰り返される城戸の射精に長瀬は、力強く脈打つ城戸の肉棒と、そこから勢いよく吐き出される精液のぬくもりを感じ、味わった。
 城戸の射精が終わるのを待って、長瀬は城戸の尿道に残っている精液を口で吸い出し、咥内に溜まった精液をごくりと飲み下す。

 屈めていた上体を起こすと、長瀬は段の上にかかとを乗せ、城戸の目の前で両脚を大きく開いた。
 硬く反り返った男の部分を下の膨らみごと手で持ち上げ、あらわになった女の部分を見せつけるように指で左右に割り広げる。
 ぐっしょりと濡れ潤ったサーモンピンク色の粘膜が、城戸の目の前で無防備に広げられた。

「なあ、城戸……次は俺のここに……オマ○コに、お前のチ○ポ挿れてくれよ……」
 情欲に濡れた目で、長瀬は縋るように城戸を見つめ、城戸の雄をねだった。
 胎の奥から疼き発情した長瀬の女性器は、充血して膨らんだ膣からとろとろの愛液を溢れ漏らしてヒクつき、淫らな雌になって雄を欲しがっている。

「……っ」
 ごくり、と城戸が生唾を飲み込む音が静かな空間に響いた。
 射精したばかりだというのに、城戸の目は長瀬の女性器にくぎ付けになっている。
 城戸の海綿体に血が流れ込み、浮き出した血管でごつごつした肉棒がドクンと力強く脈打って、硬さを増した。

 今まで自分が長瀬にしてきた仕打ちへの罪悪感も忘れ、城戸は目の前の長瀬が欲しくてたまらなくなっていた。
「長瀬……」
 低くかすれ、上ずった声で城戸は長瀬の名を呼び、手を伸ばす。
 だが、城戸はそこで重要なことを思い出した。
 コンドームを持っていない。

 最初から長瀬とセックスする気だったなら、城戸はいつかの長瀬のように、通学途中のコンビニででもコンドームを調達してきただろう。
 だが、今日の城戸には、自分から長瀬を抱こうなどという気は毛頭なかった。
 だから、持ち合わせがなかったのは当然と言うべきだろう。

「? どうした?」
 うろたえ、ためらっている城戸の顔を覗き込むように、長瀬が尋ねる。
「い、いや、その……俺、ゴム持ってねえけど……」
「いいぜ、生でしても。今日は大丈夫な日だし、もうすぐ生理来るからさ」
 ためらい、しどろもどろに口ごもる城戸に、長瀬の穏やかな笑みが向けられる。
 あまり見ることのない長瀬の笑顔に、城戸は胸がどきりと高鳴るのを感じた。

 手を伸ばし、長瀬はこちらに伸ばしかけていた城戸の手を掴む。
「城戸、来いよ……一緒に気持ちよくなろうぜ」
「長瀬……っ」
 優しく誘いかける長瀬に城戸は嗚咽のような声を上げ、強く長瀬を抱きしめた。

 長瀬が欲しい。
 それは、今まで長瀬に酷い仕打ちをし続けてきた城戸には、決して許されないことだ。
 だが、それでも、もし最後に一度だけ許されるのなら……。

 段の上で仰向けになった長瀬は両脚を大きく開き、片手で男の部分を持ち上げて、城戸の目の前に女の部分を露出させている。
 硬く反り返った男の部分とは対照的に、柔らかく濡れ潤った女の部分は、あらわになった膣口からとろとろの愛液を溢れさせ、城戸を誘うようにヒクついていた。
 城戸は長瀬の女性器の入口に、硬く張った自らの肉棒の先を押し当てる。
 尿道口から溢れ出した城戸の我慢汁は、長瀬の割れ目の内で愛液ととろけ合い、混ざり合った。

「長瀬……挿れるぞ」
 確かめるように言って、城戸は長瀬の顔を覗き込んだ。
 視線を合わせるように長瀬は城戸を見上げ、その頬に嬉しそうな笑みを浮かべる。
「いいぜ、来いよ」
 そして頷いた。

 城戸は長瀬をいたわるように、ゆっくりと腰を押し進める。
 城戸の肉棒を咥えたくてたまらず濡れ疼いていた長瀬の女性器は、何の抵抗も見せず、硬い雄肉の進入を柔らかく迎え入れた。
 ずぷっと濡れた音がして、長瀬の空っぽの膣が、逞しく怒張した城戸の肉棒で埋められていく。

「あぁっ……城戸のが、俺の中に……っ」
 待ち焦がれていた城戸との行為に、長瀬の喉から感極まったような悦びの声が上がる。
 その顔は得も言われぬ幸福の表情で満たされていた。
「っく……」
 柔らかく温かな長瀬の女性器に包まれる快感に、城戸の唇からもため息のような声が漏れる。
 その快感をもっと味わいたくて、城戸が根元まで腰を押し進めると、長瀬の膣奥の行き止まりに突き当たった。
「城戸っ……お、奥っ……当たってる……っ」
 子宮口に押し付けられる城戸の硬い肉棒の感触に、長瀬の身体がびくりと震える。
 とろとろに濡れ潤った膣がヒクつき、根元まで深く咥えこんだ城戸の肉棒を締め付けた。

「奥突かれんのが好きなんだよな、長瀬……お前が気持ちいいこと、いっぱいしてやるよ」
 快感にとろけた表情を見せる長瀬に、城戸は優しい笑みを浮かべると、ゆるやかにうねった長瀬の黒髪を大きな手で撫でた。
 そして、長瀬の子宮口に自らの肉棒を押し当てたまま、硬い雄肉で子宮を突き、揺さぶる。

「あっ、い、いいっ……! 胎の奥っ……子宮がっ……すげー気持ちいいっ……!」
 疼く子宮を城戸の硬い雄肉で突かれるたび、深く強い快感が長瀬の胎の奥から湧き上がってくる。
 それは、両性器を自分で弄るよりも、城戸に愛撫されるよりも、もっと強く深い……城戸との性交でないと得られない快楽だった。
 ずっと求めていた、欲しかった快楽に、長瀬は身体ごと城戸にしがみつき、悦楽の声を上げる。

「俺も、すげー気持ちいいぜ……、長瀬っ……」
 息を荒げ、快感に上ずった声を上げながら、城戸は長瀬を抱きしめ、深く口づける。
「ん……っ」
 性器で深く繋がり合い、強く抱きしめ合った二人は、お互いの咥内で舌を絡め合った。
 お互いに舐め合い味わい合った性器の味が、熱く濡れた咥内でとろけ合う。
 くちゅくちゅと濡れた音を立てながら、二人は雄と雌の味が入り混じったキスを交わした。

 やがて長瀬は、城戸の硬い雄肉でこね回されている子宮から、絶頂間近の強い快感が怒涛のようにこみ上げてくるのを感じていた。
 荒れ狂う大波のような激しい快楽は長瀬の理性を押し流し、男であるはずの長瀬を淫らな雌へと変えていく。
「んぅっ……いくっ……城戸のチ○ポで子宮イクぅッ……!」
 快楽にとろけた淫猥な表情を城戸の間近で晒しながら、長瀬はアクメの叫びを上げ、子宮で絶頂した。
 城戸の硬い肉棒を深く咥えこんだ膣が断続的に痙攣し、膣粘膜から噴き出した多量の愛液が結合部からとろとろと溢れ出す。

「俺とオマ○コすんの、そんなに気持ちよかったんだな……。オマ○コのひだひだが、チ○ポにすげー絡みついてくる……」
 穏やかな笑みを浮かべ呟くと、城戸は長瀬の頬を大きな温かい手で包み込んだ。
 そのまま、精悍なラインを描くその頬と、頬にかかるうねった黒髪をそっと優しく撫でる。

 少し伸びた芝のようなふさふさの手触りが城戸の手に触れた。長瀬の顎鬚だ。
 城戸は長瀬の顎に親指を滑らせると、黒く伸びた顎鬚を指先でなぞるように撫でた。
 そして、長瀬に覆いかぶさっていた身体を起こすと、まだヒクついている長瀬の膣から、射精していない自らの肉棒を抜こうとする。

 ふいに長瀬が城戸の腕を掴み、強い力で引き寄せた。
「城戸っ……」
「?! うわっ、長瀬っ……?!」
 バランスを崩した城戸は長瀬の身体の上に勢いよく倒れこむ。
 目を開けると、至近距離に長瀬の真っ黒な目があって、城戸の心臓はどきりと高鳴った。

「な、なんだよ、いきなり……」
「何だよじゃねえよ……まだ、終わってねえだろっ……」
 詰問するように言って、長瀬は城戸の胸倉を掴んだ。
 強く鋭い眼差しで射抜かれて、城戸は一瞬怯んだような顔を見せる。
 だが、すぐに穏やかな表情になると長瀬を見つめ、言った。
「俺はいいんだよ。お前が気持ちよければ、それで……」
「だったら、続けろよ……俺もまだ、オマ○コイクの終わってねえんだよ……っ、さっきからずっとイキっぱなしで……」
「えっ……?」
 長瀬の口から出た予想外の言葉に、城戸の目が驚きに見開かれた。

 イキっぱなしだなんて……そんなことがあるのだろうか。
 絶頂が続くなど、普通の男である城戸には理解ができない。
 男の絶頂は射精時の一瞬だけだからだ。

「んっ……だから、お前がイクまで……してくれよ」
 快感に身を震わせながら長瀬は、城戸の広い背中に自らのがっちりした男らしい腕を回し、抱きついた。

 ピーク時ほど劇的ではないが、ゆるやかな快感の波は、長瀬の身に小刻みに訪れているようだ。
 その度に長瀬の膣は断続的にヒクつき、半分ほど咥えこんだ城戸の肉棒を、搾り取るような動きで締め付ける。

「分かった……じゃあ、お前の気が済むまで、気持ちよくしてやるよ」
 城戸は優しい笑みを浮かべると、長瀬の頭を撫でた。
 そして、抜けかかっていた自らの肉棒を、長瀬の膣に再び深く挿入する。
 城戸の硬い雄肉が膣奥の子宮口に突き当たり、長瀬の子宮を力強く押し上げた。

「あ……っ、城戸のチ○ポ、子宮に当たってるっ……」
 ゆるやかな絶頂が続いている子宮を硬い雄肉に圧迫され、長瀬の胎に快感の波が広がる。
 快感に息を上がらせ、嬉しそうな声を上げて、長瀬は城戸の肩口に顔をうずめた。

「お前のチ○ポも、俺の腹に当たってるな」
 亀頭を密着させた長瀬の子宮口を硬い雄肉で突き上げ、こね回しながら、城戸が言う。
 硬く反り返り、我慢汁を溢れさせている長瀬の男の部分は、お互いの身体の間に挟まれ、圧迫されながら、城戸の筋肉質な腹に当たっていた。
「こっちも気持ちよくしてやるよ」
 言って、城戸は長瀬を強く抱くと、長瀬の子宮を硬い雄肉で突きながら、長瀬の男の部分に腹を擦りつけた。
「ぅあっ、いいっ、チ○ポいいっ……!」
 長瀬の身体がびくんと反り返り、両脚が城戸の腰を強く挟み込む。
 城戸の腹に密着した長瀬の男の部分から新たな我慢汁がとろとろと溢れ出し、学ランの下に着ている城戸のTシャツに濡れた染みを作った。

「あぁ……っ、すげぇっ、いいっ……」
 男の部分を擦られる快感と、女性器でしか味わうことのできない終わらない絶頂に、長瀬は快楽にとろけた無防備な顔を晒し、城戸に身をゆだねた。
 長瀬の快感が出来るだけ長く続くように、城戸は硬く張った男性器で長瀬の子宮を突き上げ続ける。
「気持ちいいんだな、長瀬……いっぱい気持ちよくなっていいからな」
 城戸は腰を動かしながら、快感に震え喘ぐ長瀬を、慈愛に満ちた優しい眼差しで見つめた。

 城戸の胸の奥に温かく優しい想いが満ちていく。
 ずっとこんな時が続けばいいのに。そう願わずにはいられなかった。
 それが決して叶えられることのない、儚い願いだと知っていても。

 くそっ……何で、俺は……。

 泣き出したくなるような切ない想いが、城戸の胸を強く締め付ける。
 こんなことなら、最初からこうしておけばよかった。
 酷い目になんて遭わせずに、好きだと言って抱きしめればよかったのだ。

 でも、あの時の自分はそんなことなど思いつきもしなかった。
 だってまさか、長瀬のことを好きになるだなんて、あの時は思いもしなかったのだから。
 戻れるものなら戻りたい。長瀬を酷い目に遭わせる前の時間に……。
 辛く苦い後悔の気持ちが、城戸の心を責め立てる。

 だが、どんなに悔やんでも今更もう遅い。
 これも歪んだ欲望のまま、酷い仕打ちをし続けていた報いだ。
 こんな風に長瀬と抱きしめ合うことは、もう二度とないだろう。

「いいっ……もっと、もっとしてくれよ……っ、城戸ぉ……っ」
 終わらない快楽にとろけ切った無防備な顔を見せ、長瀬は城戸に快感をねだる。

 こんな長瀬を知っているのは、自分ただ一人だけだ。
 愛しさと優越感が、城戸の胸に溢れた。
 だが、そんな特別な関係も、もうすぐ終わる。

「……っ」
 こみ上げる射精感から、城戸は終わりが近づいていることを知った。
「長瀬……俺、外で出すから……。嫌だろ、俺に中で出されるなんて」
 息を荒げ、動きを速めながら、城戸は切なげな表情で長瀬から離れようとする。
「?! なっ、何で……」
 城戸の言動に、長瀬の目が驚きに見開かれた。
 そして、城戸を離すまいと強くしがみつく。

「嫌だ、離れんなよ、城戸……っ」
「長瀬……?」
 縋るような切ない表情の長瀬に、城戸は戸惑いを隠せない。
「このまま俺のオマ○コの中でイけよ、城戸……いつもみたいに、俺の子宮にお前のザー○ンぶっかけてくれよ……。子宮で城戸のチ○ポとザー○ン感じながらイキたい……」
「えっ……そ、そんな……」
 男女両性器の性感が高まっている長瀬は、いつもオナニーの時に思っていることをそのまま口にした。
 そんな長瀬のストレートな物言いに、城戸はうろたえたような戸惑いの表情を見せる。

 卑怯な手を使って弱みを握り、無理やり犯し続けてきた相手に惚れられるだなんて、そんな虫のいい、都合のいい話などあるはずがない。
 だが、長瀬から求められ、受け入れられて、城戸はつい淡い期待を抱いてしまう。

 長瀬も俺のことが好きなんじゃないか、と。

 自分が今まで長瀬にしてきた酷い仕打ちを考えれば、そんなことある訳がないのに。

「っく……」
 切なさに息詰まる胸を奥歯を噛んでこらえ、城戸は長瀬を強く抱きしめた。
 固く閉じられた城戸の瞼の縁に薄っすらと涙が浮かぶ。

 終わってしまえば、長瀬にはもう触れることすらできなくなる。
 だからせめて、今だけは……もっと長瀬を感じていたい、長瀬と一つになっていたい……。

 だが、城戸の願いとは裏腹に、終わりの瞬間は確実に近づいていた。
「城戸っ……俺、もうっ……」
「イキそうか、長瀬……。俺も……」
 絶頂間際の長瀬は息を上がらせ、切なく潤んだ目で城戸を見つめている。
 そんな長瀬を見つめる城戸の顔は、今にも泣き出しそうに歪んでいた。

 やがて、両性器で同時に味わう爆発的な快楽が長瀬に訪れた。
「あぁっ、城戸っ……いく、イクッ……オマ○コとチ○ポ、両方イクぅッ……!」
 城戸の身体の下で長瀬は大声で叫びながら、びくびくと身体を震わせ、膣奥深く咥えこんだ城戸の肉棒を何度も強く締め付ける。
 同時に、城戸の腹で擦られていた長瀬の男の部分が大きく脈打ち、勢いよく飛び出した白濁汁は、城戸のTシャツを白く濡らしていく。

「うっ……い、イクっ……! 好きだ……っ、長瀬っ……!」
 切なく溢れ出す胸の内を止められず、射精の瞬間、城戸は長瀬を強く抱きしめ、叫んだ。
 子宮口に強く突き当てた城戸の肉棒が力強く脈打ち、尿道口から勢いよく吐き出された精液が、温かい感触で長瀬の膣奥を満たしていく。
 全てが消し飛んでしまいそうな激しい快楽と、穏やかな幸福感の中で、長瀬は空耳のように城戸の切ない叫びを聞いた。


「長瀬。今日限りでお前を俺から解放してやるよ」
 ズボンのベルトを止めていた長瀬の背に、城戸の低く静かな声が響いた。
「え……?」
 両手でベルトの金具を掴んだまま、長瀬の動きが止まる。
 そして、ゆっくりと城戸の方へ振り返った。
 その目は驚いたように丸く見開かれ、城戸を見つめている。

 突然のことに言葉も出ない長瀬に、城戸は畳みかけるように告げた。
「最初に撮った写真……パソコンに送った方も全部消しといたからな。お前とのことは誰にも言わねえ。俺とお前だけの秘密だ」
「……」
「嬉しいだろ? もう俺とセックスしなくてもいいんだぜ」
 無言のままこちらを見つめる長瀬に、城戸は自嘲気な笑みを見せた。

 城戸の言葉、それは、城戸の欲望のはけ口にされ続けてきた長瀬の苦痛と屈辱の日々に、終止符が打たれたことを意味していた。
 全ては終わったのだ。
 あの悪夢のような、地獄のような酷い日々は、もう二度と訪れることはない。
 城戸の言うように、それは長瀬にとって嬉しいことに違いなかった。

「……」
 そのはずなのに、胸にぽっかり穴が開いたような喪失感を感じるのは、なぜなのだろう。
 胸の奥がたまらなく寂しいのは、どうしてなのだろうか。

 戸惑いに揺れる心を振り払うように、長瀬は頭を振った。
 そして顔を上げ、強く鋭い眼光で城戸を睨み付ける。
「……ああ、そうだな。てめーの玩具にならなくても済むって思うと清々するぜ」
 皮肉めいた強い声音が静かな空間に響いた。
 城戸は自嘲気な表情で長瀬を見つめている。

「でも、急に何でだ? 俺を油断させといて、実は何か裏があるとかじゃねえだろうな」
 疑いの眼差しを向ける長瀬に、城戸の表情が切なく歪められた。
 そして、震えるその唇から言葉がつむぎ出される。
「お前のこと……本気で好きになっちまったからな」
「?!」
 想像だにしなかった城戸の告白に、長瀬は思わず言葉を失うほど驚愕した。
 同時に、絶頂の瞬間に城戸が叫んだ言葉が、長瀬の脳裏にフラッシュバックする。
『好きだ……っ、長瀬っ……!』

 そうか、そういうことだったのか。
 城戸は長瀬のことが好きなのだ。
 だが、今まで散々酷いことをしてきたくせに、いきなり好きだと言われても、一体どうすればいいのだ。
 突然の告白に長瀬はひどく混乱していた。

「じゃあな」
 戸惑う長瀬に背を向け、城戸は一人、扉に向かって歩き出した。
 静まり返った空間に、遠ざかっていく靴音だけが響く。

「城戸っ……!」
 衝動的に長瀬は城戸の名を呼んだ。
 城戸は足を止め、身体ごと長瀬の方へ振り返る。
 その顔には、驚きの表情が浮かんでいた。

「俺は……」
 城戸に見つめられ、困惑したような表情のまま長瀬は口を開く。
 だが、続く言葉が出てこない。
「……」
 恐ろしいほど静まり返った空間の中、時間が止まったかのように動きを止めたまま、二人は静かに見つめ合った。
 聞こえるのは、早鐘のように打つ自分の心臓の音だけだ。

 どのくらい経っただろう。
 やがて、張り詰めた静寂を破るように、低くかすれる長瀬の声が辺りに響いた。
「……お前なんか、嫌いだ」
 城戸の顔が自嘲気な笑みに歪められた。
「知ってる」
 その顔には、諦めにも似た表情が浮かんでいた。

 城戸は再び長瀬に背を向けると、教室を出ていく。
 拒絶するように向けられたその後ろ姿は、もう二度と振り返ることはない。
 ドアの閉まる音が静かな空間に響き、後には長瀬一人が残された。

+++

 長瀬と別れた後、城戸は一人で学校近くの海に来ていた。
 夕暮れの光が辺りをオレンジ色に染める中、城戸は頬に当たる風に首をすくめる。
 春の夕暮れの潮風はまだ冷たい。

 コンクリートの防波堤に腰を下ろし、城戸はうなだれたような格好で一人うつむいた。
 泣き出したいほどの切なさが、胸をきゅうっと強く締め付ける。
「これでよかったんだ……これで……」
 かすれた低い声が、震える唇からこぼれ落ちた。

 確かに最初の頃は、長瀬を力づくで従わせ、支配することが快感だった。
 自分よりも強い長瀬が自らの身体の下で屈辱に喘ぐ姿を見るのは、城戸にとって至上最高の快楽だったのだ。
 だけどいつしか、城戸はその行為を辛く感じるようになっていた。
 それは、長瀬のことを本気で好きになってしまったからだ。

 だから城戸は、自分から長瀬に別れを告げた。
 自分と一緒にいることで苦痛を感じているであろう長瀬を、これ以上、苦しめないために。

『お前なんか、嫌いだ』
 空き教室で最後に聞いた長瀬の言葉が、城戸の胸を冷たく切り裂くように響く。
 嫌われて当然だ。好きだと言われることなんて絶対にない。
 だって、嫌われるようなことしかしてこなかったのだから。

「長瀬……」
 胸の奥から熱いものがこみ上げ、視界がぼやける。
 うつむいたまま、城戸は親指の付け根で目頭を押さえた。

「好きだ……長瀬……っ」
 嗚咽で詰まる胸の奥から絞り出された言葉は、防波堤で砕ける波の音に無情にもかき消され、冷たい潮風の中に溶けていく。
 城戸の頬を一筋の涙が伝い、コンクリートの地面に小さな染みを作った。

+++

 翌朝。
 いつものように長瀬は舎弟たちを引き連れ、校内を歩いていた。
 ふと長瀬は、見覚えのある集団が、廊下の向こうからこちらに向かってくることに気づく。
 その先頭中央に見慣れた金髪の姿を見つけ、驚きの表情とともに長瀬の心臓はどきりと跳ね上がった。
 城戸だ。

 動揺を周囲に悟られないよう、長瀬はいつもの冷徹な表情を作り、動悸に震える脚を奮い立たせ、堂々と歩を進める。
 城戸との距離はあっという間に縮まり、あと少しでいつものように対峙するかと思われた。
 だが、長瀬の目の前にやってきた城戸は、チラリと長瀬を一瞥すると、まるで何事もなかったかのようにすれ違っていく。

「何だ? 城戸のやつ……スルーか?」
「俺らの方が格上だってこと、やっと分かったんじゃねえ? あいつホントバカでしつこかったもんな」
「……」
 背後に並ぶ幹部たちがわいわい言い合っている中、長瀬は微動だにせず呆然とその場に立ち尽くしていた。
 そんな長瀬の様子に気づいたのか、幹部の一人が長瀬に声をかける。
「おい、長瀬」
「! お、おう」
 はっとし、振り返る長瀬に幹部は尋ねる。
「大丈夫か? お前、最近変だぜ? 何かあったか?」
「……別に、何もねーよ」
 驚きの表情を一瞬でいつもの冷徹な表情に作り替え、ぶっきらぼうに長瀬は答えた。

 そう、何もない。もう終わったのだ。城戸とのことは。

「行くぞ」
 戸惑いを振り切り、振り返りもせず長瀬は歩き出す。
 その背中を追うように、舎弟たちも後に続いた。

【to be continued...】 2015/02/04UP

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