お前のことなんか好きじゃないのに
6
もうこれで何日目だろうか。
その日の学校帰りにもまた、長瀬は病院に来ていた。
病室が並ぶ病棟廊下を歩き、いつものように一つの病室の前で立ち止まる。
入口脇のネームプレートには『城戸章吾(きど しょうご)』の文字があった。
軽くノックすると、長瀬は引き戸を開ける。
「城戸、来たぜ」
返事はない。
病室に入り、引き戸を閉めると、長瀬はベッドへ近寄る。
そこには、何本もの管や機械に繋がれ、死んだように静かに眠る城戸の姿があった。
「城戸……」
呟くように言って、長瀬はベッド脇のイスに腰掛けると、眠る城戸の顔を覗き込んだ。
鼻と口を覆う透明なマスクをかぶせられ、人工呼吸器に繋がれた城戸は静かに目を閉じ、長瀬の前に無防備な寝顔を見せている。
穏やかで静かなその表情は、長瀬の知っている城戸とはまるで別人のようで、起きている時に見る顔よりもずっと幼く見えた。
「……」
静まり返った部屋の中、心電図モニターの規則正しい電子音と、人工呼吸器の作動音だけが響く。
無言のまま城戸を見つめながら長瀬は、この病院に城戸が救急搬送されたあの夜のことを思い出していた。
+++
「バイタル!」
「意識混濁、血圧低下してます」
「受け入れ先の病院と連絡取れました! 担当医と患者の容態確認します」
救急車の中、一刻を争う戦場のような現場で、救急隊員たちは重傷を負った城戸を手際よく的確に処置していく。
ストレッチャーに仰向けに寝かされた城戸は、ぐったりと目を閉じたまま死んだように動かない。
救急車に同乗した長瀬は何もできず、救急隊員に処置される城戸をただじっと見つめるだけだった。
一秒でも早く、病院に着くことを願いながら。
やがて救急車は病院に到着し、城戸を乗せたストレッチャーは、救急患者用の裏口から病院内へ運び込まれていく。
白衣を着た医療スタッフたちがストレッチャーを引き、廊下を走る。長瀬も後に続いた。
その間にも、医療スタッフたちは何やら専門用語で、おそらく城戸の容態や処置についてだろう……をやり取りし合っているようだった。
廊下突き当たりにある手術室の扉が開き、ストレッチャーは中へと入っていく。
立ち止まる長瀬の目の前で扉が閉ざされ、ドアの上に掲げられた『手術中』の赤いランプが点灯した。
「……」
手術室のすぐそばには長椅子がある。
長瀬はそこに倒れこむように腰を下ろすと、両肘を膝に置いて俯き、目を伏せた。
人間は全血液量の3分の1以上を失うと死に至るという。
それが一体どれぐらいなのかは知らないが、あの廃倉庫で城戸は、長瀬が今までに見たことがないほど大量の血を流して横たわっていた。
今思えば、駆けつけた時に意識があったのが不思議なくらいだ。
あんなに血が出てたんだ、もしかしたらもう城戸は……。
……助からないかも知れない。
考えたくもない最悪の考えが一瞬、長瀬の頭をよぎる。
バカな! あいつが……とか、んなことあるワケねーだろ!
突然浮かんできた嫌な考えを強く否定し、打ち消すように長瀬は頭を振った。
これ以上、嫌な考えに憑りつかれないように。
ふいに、静まり返った空間の静寂を破るように、廊下に女性の大声が響いた。
「先生、息子は……章吾は、どうなるんですか?!」
「……?」
顔を上げ、声がした方を見てみると、白衣を着た医師らしき人物に一人の女性が詰め寄っているのが見えた。
「城戸さん、落ち着いてください」
「そうだ、落ち着くんだ」
今にも医師に掴みかかりそうな勢いの女性を、白衣を着た看護師と、女性の付き添いで来たと思われる男性が引き留めている。
会話から察するに、この女性はおそらく城戸の母親だろう。一緒にいるのは父親か。
取り乱した様子の母親に、医師は難しい顔で告げる。
「息子さんの容態ですが、出血多量によるショック状態で、こちらに搬送されてきた時には既に意識はありませんでした。あと少し処置が遅れていれば、恐らく助からなかったと思われます」
真剣な表情のまま、医師は淡々と言葉を続ける。
「先ほど緊急手術に入ったところです。こちらとしても最善を尽くしますが、もしもの場合もないとは言い切れませんので、覚悟はしておいてください」
「! そんな……!」
医師の厳しい言葉に、城戸の母親は悲痛な声を上げてその場に泣き崩れた。
その肩を夫である城戸の父親が支える。
医師と看護師が去った後、城戸の母親は父親に肩を抱かれながら去っていった。
廊下には長瀬一人だけが残され、辺りには再び静寂が訪れる。
「……」
城戸が助かったのは良かった。
あの時、急いで駆け付け、冷静に119番通報した長瀬の行動が、ギリギリのところで城戸の命を救ったのだろう。
だが、医師の言葉によれば、まだ安心できる状況ではないようだ。
何とか一命を取り留めたものの、手術の結果によっては、医師の言う『もしもの場合』も十分に考えられる。
この緊急手術にすべての命運が懸かっている。
険しい顔で長瀬は『手術中』の赤いランプを見つめた。
その後しばらくこの場所で、長瀬は城戸の手術が終わるのを待っていた。
しかし待てど暮らせど、『手術中』の赤いランプは一向に消える気配はない。時間だけがいたずらに過ぎていくばかりだ。
あとどのくらい待てば終わるのか分からないし、たとえ待っていたところで、身内でもない長瀬は城戸に会わせてはもらえないだろう。
……仕方ねえ、今日はもう帰るか。
ため息をつき、長瀬は長椅子から立ち上がる。
その時、ふいに誰かの声がした。
「あの、君は……」
見ると、目の前には、先ほど廊下で見た城戸の父親がいた。
隣には泣きはらしたままの赤い目の母親もいる。
尋ねる城戸の父親に、長瀬は答えた。
「城戸くんと同じ学校の……晴嵐男子高校の長瀬八尋(ながせ やひろ)です」
その言葉に、城戸の父親は確信したように頷く。
「そうか、やっぱり……。城戸章吾の父です。初めまして」
「はじめまして」
会釈する城戸の父親に、長瀬も軽く頭を下げる。
ふいに、城戸の父親が口を開いた。
「救急車に同乗してくれた友達がいたと聞いたんだけど……もしかして長瀬くんだったのかな。だとしたら、お礼が言いたくて」
「え……」
友達、なんだろうか。それとは違う気がするが、とりあえずここはそういうことにしておいた方がいいだろう。
「あ、はい。そうです。たまたま通りかかったんで、119番通報も俺がしました」
「そうか、救急車も君が……」
長瀬の言葉に城戸の父親はしばらく黙っていたが、いきなり長瀬の両手を取ると、大声で深々と頭を下げた。
「ありがとう、本当にありがとう!」
「!」
突然のことに、長瀬の目は驚きで丸くなる。
城戸の父親は顔を上げると、長瀬の両手を握ったまま長瀬を見つめ、言った。
「さっき、医師(せんせい)に言われたんだ。あと少し遅かったら、助からなかった、って……。長瀬くんは章吾の命の恩人だよ。本当にありがとう」
「……」
平身低頭でお礼を述べる城戸の父親に、長瀬は困惑の表情を浮かべた。
「恩人だなんて、そんな……」
大それたものじゃない、と胸の内で呟いて、長瀬は目を伏せた。
それから数日後。
いつものように長瀬が城戸の見舞いに行くと、見覚えのある女性が城戸の病室から出てくる所だった。
あの夜、廊下で医師に詰め寄り泣き崩れていた、城戸の母親だ。
心労からか少しやつれたように見えるものの、その様子はあの夜よりは幾分落ち着いた印象だった。
「長瀬くん? こんにちは」
こちらから挨拶するよりも先に声をかけられて、タイミングを失った長瀬は一瞬戸惑った。
「あ、どうも。こんにちは」
「章吾のお見舞いに来てくれたの? どうぞ、入ってちょうだい」
言って、城戸の母親はドアを引く。
開けられた入口から長瀬は中に入った。
白く静かな部屋の中で城戸はベッドに横たわり、静かに眠っている。いつもと変わらない光景だ。
長瀬の後から病室に入ってきた城戸の母親が枕元に立ち、息子に声をかける。
「章吾。長瀬くんが来てくれたわよ」
もちろん、返事はない。
「じゃあ、私は帰るけど、長瀬くんはどうぞゆっくりしていってね」
言って、城戸の母親はドアに向かう。
立ち去ろうとするその後ろ姿に、長瀬は声をかけた。
「あの……城戸く……章吾くんの容態は、どうなんですか?」
「……」
ドアに手をかけていた城戸の母親の動きが止まる。
城戸の母親は振り返ると、再びベッドの側に戻ってきた。
そして、目の前で眠る息子を見つめながら、ベッド脇のイスに腰掛けている長瀬に答える。
「あんまり良いとは言えないかも知れないわね……。主治医の医師(せんせい)の話では……」
陰った表情でため息をつくと、城戸の母親は主治医から聞いたという城戸の容態の話をしてくれた。
主治医曰く、手術の結果、何とか一命は取り留めたが、昏睡状態が続いているため、このまま目を覚まさなければ植物人間か、目を覚ましても何らかの障害が残る恐れがあるのだという。
というのも、城戸の場合、大量出血による血流低下で脳が酸欠状態に晒され、いわゆる低酸素脳症になった可能性があるというのだ。
これは、脳に十分な酸素が行き渡らなかった結果、脳細胞が傷害され、脳機能障害を起こすというもので、一度傷害された脳細胞は二度と元に戻ることはない。
意識が戻らないのも、これが原因なのかも知れないのだと、城戸の母親は長瀬に教えてくれた。
「早く目を覚まして、元通り元気になってほしいんだけど……もしかすると、それも難しいかも知れない、って……」
言って、城戸の母親は目を伏せた。
「……」
長瀬は黙ったまま何も言えず、目の前で静かに眠る城戸の寝顔をただじっと見つめていた。
+++
静かな病室の中、無言のまま長瀬は、眠る城戸を見つめていた。
掛け布団の上に置かれ、点滴の管に繋がれた城戸の手に、長瀬はそっと触れる。
温かい。
そっと確かめるように触れた手には、血の通った命のある確かな温もりがあった。
あの夜、廃倉庫で触れた血の気を失った冷たい手ではないことに、長瀬は心底安堵した。
「城戸……」
長瀬は城戸の手を強く握ると、その頬にそっと口づけた。
温かい、確かな温もりが、長瀬の唇に触れる。
城戸とは今まで何度も数えきれないほどの口づけを交わしてきた。
だが、こんな風に長瀬から口づけたのは、もしかするとこれが初めてかも知れなかった。
人工呼吸器のマスクに阻まれ、唇に直接触れられないもどかしさを感じながらも、長瀬は城戸の手を握り、その頬に何度も優しく口づける。
手に唇に触れる城戸の命の温もりが、長瀬を穏やかな優しい気持ちにさせていく。
ふと長瀬は、記憶の中にあの日のことがよみがえってくるのを感じていた。
それは、空き教室で最後に交わした城戸とのやり取りだ。
『お前のこと……本気で好きになっちまったからな』
あの日の城戸は、今までに見たことのない、思い詰めたような切ない眼差しで長瀬を見つめていた。
『……お前なんか、嫌いだ』
『知ってる』
否定する長瀬の言葉に自嘲気に笑い、拒絶するように背を向けた城戸の姿が鮮やかに浮かんでくる。まるで昨日のことのように。
どうしてあの時、ためらったりしたのか。心にもないことを言ってしまったのか。
今となっては苦い後悔でしかない。だが、あの時はそうするしかなかったのだ。
あまりにも、驚きと戸惑いが大きすぎて。
だけど、こうなることが分かっていたら……城戸を永遠に失うかも知れないことが、もし分かっていたら……。
「っ……」
城戸を見つめる長瀬の顔が、辛く切ない表情に歪められる。
ベッドに横たわる城戸はそんな長瀬に気づくこともなく、穏やかで安らかな表情のまま、静かに目を閉じている。
「なあ、城戸……実はさ、俺もお前のこと……好き……なんだ」
眠る城戸を見つめながら、長瀬は胸の内に抱いた想いをためらいがちに言葉にした。
あの日、言えなかった、答えられなかった本当の気持ちを、今。
「バカだよな……今ごろ、好き……だなんて……」
こらえた嗚咽に震える長瀬の頬を、一筋の涙が伝う。
こぼれ落ちた涙の滴は、城戸が横たわるベッドの布を濡れた色に染めた。
城戸はもう二度と目覚めないかも知れない。
もし目覚めたとしても、何らかの障害が残っていた場合、もう元の身体に戻ることはできないだろう。
脳細胞が傷害された部位によっては、口もきけず、身体を動かすこともできなくなっているかも知れない。
どうなるのかは分からない。主治医にも分からないのだ。
「城戸、なあ、目ぇ開けてくれよ……っ! いつまで寝てんだよ……っ! なあっ……!」
城戸の手を握ったまま、長瀬は眠る城戸の顔を覗き込み、叫んだ。
嗚咽交じりのその声は、静かな空間に虚しく溶けて消えていく。答えは返ってこない。
「城戸……っ」
長瀬は目を閉じ、強く握った城戸の手に頬をすり寄せた。
この温もりも失われてしまうのだろうか。こんなに温かいのに。
ふと長瀬は、空き教室で最後に城戸と抱き合ったあの日のことを思い出した。
あの日の城戸は、温かく大きなこの手で長瀬に優しく触れ、頬を撫でた。
今、その手は力なくだらりと弛緩したまま、長瀬の手の中にある。
「……」
睫毛に浮いた涙が長瀬の頬を伝い、頬に触れる城戸の手を濡らす。
どうにもならない悲しみが、やるせなさが長瀬の胸を塞いでいた。
長瀬は城戸の手に自らの頬をつけたまま、唇を寄せて口づける。
唇に触れた城戸の手は、ほんのり涙の味がした。
長瀬はそのまま、城戸の指一本一本に口づけていく。
「っん……」
唇に触れる城戸の指先を舌で舐め、口に含む。
いつしか長瀬は城戸の指を咥え、音を立てて舐めしゃぶっていた。
ごつくがっちりとした城戸の指は、硬く勃ち上がった雄肉を連想させて、長瀬は自らの両性器が急速に発情していくのを感じていた。
城戸のモノを舐めたい、しゃぶりたい。
城戸としたい。
興奮に息を荒げながら長瀬は、口に咥えた城戸の指を舐めしゃぶる。
イスに腰掛けた長瀬の股間はパンパンに張り詰め、硬く勃ち上がった男の部分の形は着衣の上からでも分かるぐらい、くっきりと浮き出していた。
ついに我慢が出来なくなった長瀬は、ズボンのベルトを外すと、イスから立ち上がり、ズボンを下着ごと一気に膝上辺りまで下ろした。
窮屈な着衣に押し込められていた長瀬の男の部分は、解放された反動で弾かれたように勢いよく飛び出す。
その動きで、男の部分の尿道口に浮き出していた我慢汁の飛沫が飛び散った。
長瀬は右手で自らの男の部分をせわしなく扱きながら、左手で城戸の掛け布団を足側からめくった。
黒いチェック柄のパジャマを着せられた、城戸の腰から下があらわになる。
長瀬は右手を止めると、両手で城戸のズボンの腰を掴み、下着ごと太ももの中ほどまで引き下ろした。
黒く濃い茂みの中、股間にだらりとぶら下がっている城戸の男性器が、長瀬の目の前に姿を現す。
「ん……」
長瀬は左手で城戸のモノを握ると、口に咥えた。その右手は再び自らの男の部分を扱いている。
ぴちゃぴちゃと濡れた音を立てて、長瀬は城戸の雄を口で愛撫する。
意識はなくとも身体は反応するのか、長瀬の愛撫に城戸の雄はすぐに硬く勃ち上がった。
「相変わらずすげーな、お前の……」
興奮に声を上ずらせる長瀬の唇からは、唾液と我慢汁が混ざり合った粘液が糸を引いている。
城戸の股間にそそり勃つ赤黒くごつごつした肉棒は、我慢汁を溢れさせ、ドクドクと脈打っていた。
「城戸のチ○ポすげーから、オマ○コに欲しくなってきちまった……」
切ない声で息を上げ、長瀬は独り言のように呟く。
硬く張り詰めた男の部分を扱いている右手は、溢れ出した我慢汁でぬるぬるに濡れていた。
「っん……」
上気した切なげな表情で長瀬は眉根を寄せ、左手の指先で男の部分の後ろに隠された箇所を探る。
他の部分とは明らかに違う、柔らかい肉の感触が指先に触れた。
長瀬は、その中央を縦に走る割れ目を指で左右に割り拡げると、確かめるように内部に指を滑り込ませた。
指に触れた柔らかな肉襞は熱くとろとろにとろけ、硬い雄を欲しがって濡れ疼いている。
城戸が欲しい。城戸としたい。
「城戸……」
うわごとのように呟いて、長瀬は発情した雌の顔で城戸の顔を覗き込んだ。
眠るその顔を見た長瀬は、ふと我に返る。
な、何考えてんだ、俺は……! こんな、意識不明のやつを襲うとか……マジでありえねえだろうが!
ベッドに横たわった城戸は、安らかな表情で静かに眠っている。
その寝顔を見ながら長瀬は、欲望にまみれた自分を一喝した。
だが、城戸を求めて疼く心と身体を理性で押し止めることは、長瀬にとってもはや不可能に近かった。
城戸が欲しい、一つになりたい、という気持ちと、意識のない相手を同意なく犯すという罪悪感が、戸惑いと共に長瀬の胸の内で渦巻く。
「ごめん、城戸……こんなことになってんのに、マジありえねえよな……。でも、止められそうにねえんだ、ごめんな……」
長瀬はズボンを下着ごと脱ぎ捨てると、ベッドの上に上がり、膝立ちの体勢で城戸の上に跨った。
そして、硬く張った城戸の剛直を後ろ手に握り、背後から自分の雌穴の入口に押し当てる。
「んぅ……っ」
長瀬は腰を後ろに突き出し、城戸の肉棒に強く押し付けた。
ぐぷっ、と濡れた音を立てて、柔らかく濡れた割れ目が太い亀頭に押し開かれる。
「あ……っ、すげっ……城戸のチ○ポ……っ、すげー気持ちいい……っ……!」
感じやすい入口を硬い肉棒で押し広げられ、圧迫される快感に喘ぎながら、長瀬はそのまま城戸の肉棒に腰を押し付けていく。
誘い込むようにうごめく濡れた肉襞は、我慢汁で濡れた亀頭に吸い付き、くびれの辺りまでゆっくりと飲み込んでいった。
亀頭の部分だけが浅く食い込んだ長瀬の膣内で、城戸の尿道口から新たな我慢汁が溢れ出す。
溢れ出した我慢汁は、とろとろに濡れ潤った膣内で愛液にとろけて混ざり合った。
膝立ちになった両脚を割り開き、腰を後ろに突き出した長瀬は、浅く交わり合った城戸との結合部にゆっくりと体重をかけながら、自らの女性器と城戸の男性器との結合を徐々に深くしていく。
ふいに腰が震え、不安定な体勢からバランスを崩した長瀬は後ろ手に片手をつき、正座で尻もちをつくように後方に倒れ込んだ。
結合部に長瀬の体重が強くのしかかり、硬く張った城戸の雄肉が柔らかい長瀬の膣をその最奥まで一気にずぶりと深く刺し貫く。
城戸の硬い肉棒が長瀬の子宮口に刺さるほど強く食い込み、乱暴な衝撃が子宮を強く突き上げた。
「んぅあぁ……ッ……!」
声にならない悲鳴のような嬌声が長瀬の喉から迸り出た。
硬い肉棒に子宮を強く突かれ、胎の奥深く感じた快感で長瀬の膣はぎゅっと強く締まる。
その刺激でだろうか。人工呼吸器のマスクの下で城戸がくぐもった声を上げた。
「ん……っ」
「? 城戸?」
驚いたように目を丸くした長瀬は、城戸の顔を覗き込む。
城戸は目を閉じたまま、先ほどまでと変わらず、静かな表情で横たわっている。
だが、その頬が先ほどまでとは違い、わずかに上気しているのを、長瀬は見逃さなかった。
もしかしたら、これで城戸が目を覚ますかも知れない。
長瀬の心に、わずかな希望の光が差し込む。
「なあ、城戸……俺のオマ○コでお前の勃起チ○ポ、いっぱい扱いてやるから……俺と一緒に、気持ちよくなろうぜ……」
呟くように言って、長瀬はベッドの上に置かれた城戸の両手をぎゅっと握った。
そして、城戸の硬い肉棒を子宮口に強く突き当てたまま、腰を上下に揺り動かし始めた。
固く閉じられた子宮口をこじ開けるように、長瀬の子宮に城戸の硬い雄肉が食い込み、尿道口から溢れ出した我慢汁が子宮口になすりつけられる。
愛液でとろとろに濡れ潤った長瀬の膣を、硬い肉棒でこね回す濡れた音が、深く繋がり合った二人の性器の結合部から上がった。
「あ……っん……いいッ……! オマ○コいい……ッ!」
久々に味わう城戸との性交の快感に、長瀬は腰を揺すり、声を上げて喘いだ。
女性器を突かれる快感に興奮した長瀬の男の部分は、触られなくてもガチガチに硬く反り返り、尿道口から我慢汁を垂れ流している。
ドクドクと脈打つ男の部分の疼きに我慢できなくなった長瀬は、城戸と手を重ね合わせたまま、城戸の左手ごと自らの右手で男の部分を扱き始めた。
「ぁあ……ッ、チ○ポいいッ……! 城戸の手、すげー感じる……っ!」
ごつくがっちりした城戸の手に男の部分を包まれ扱かれる快感と、子宮を硬い肉棒で突き上げられる快感に、長瀬の女の部分はヒクヒクと痙攣し、結合部から多量の愛液を溢れさせる。
両性器に与えられる快感に、長瀬は快楽にとろけ切った淫らな表情で喘ぎ声を上げた。
膣奥深く咥え込んだ城戸の雄肉は先ほどよりも硬く膨らみ、長瀬の膣と子宮を圧迫している。
女性器で感じる城戸の雄肉の変化に、長瀬は城戸の射精が近いであろうことを感じ取った。
城戸のチ○ポ、すげー硬くなって……俺の中でイキそうになってる……。
硬く張り詰めた城戸の雄肉を腰を使って膣で扱きながら、長瀬は城戸とのセックスで幾度となく感じてきた、城戸に膣内射精される生々しい感触を思い出していた。
力強く脈打つ硬い肉棒と、勢いよく迸り出るどろりとした精液の温もり。
城戸の精液で膣奥が満たされる快感を想像し、長瀬は充血して膨らんだ膣粘膜から新たな愛液を溢れさせた。
いいよな……城戸のザー○ン、中出ししても……俺、今日、デキにくい日だし……。
城戸の全てを受け入れたいという欲求と、もしかすると妊娠するかも知れない、という不安が、長瀬の中でせめぎ合う。
今、城戸に膣内射精されたところで、もうすぐ生理が来る予定の、いわゆる安全日の状態である長瀬が妊娠する確率は極めて低いだろう。
しかし、妊娠の可能性は限りなく低いとはいえ、ゼロではない。完全なる安全日というものは存在しないからだ。
なので、このまま長瀬が城戸の膣内射精を受け入れてしまえば、その子種で孕む可能性はほんのわずかながらある。
だが、そんな一抹の不安すらどうでもよくなるほど、心と身体で城戸を想う長瀬の気持ちは昂り、強くなっていた。
城戸の全てを受け入れたい。
感極まった長瀬は叫んだ。
「城戸っ、俺、お前の子どもなら、デキちまってもいいっ……! それぐらい、お前のことが好きだ……!」
すると長瀬の目の前で、城戸の閉じられた目から一筋の涙が溢れ、頬を伝って流れ落ちた。
まるで長瀬の言葉に応えるかのように。
「?! 城戸? もしかして、俺のことが分かるのか……?!」
城戸の突然の反応に、長瀬は驚いたように目を見開き、城戸の顔を覗き込む。
問いに応えるように城戸の瞼がゆっくりと開き、濃い茶色の目が長瀬を見上げた。その目は涙で濡れている。
「長瀬……」
人工呼吸器のマスク越しに、かすれくぐもった城戸の声が長瀬の名を呼んだ。
「! 城戸……!」
驚きと喜びが一体となった表情で、長瀬は城戸に飛びつき抱きしめる。
城戸はそんな長瀬の学ランの背中に腕を回し、強く抱きしめ返した。
着衣越しに、お互いの温もりが伝わり合う。
城戸は人工呼吸器のマスクを顎の下にずらすと、長瀬の髪を優しく撫でた。
そしてそっと口づける。
「んっ……」
くちゅくちゅと濡れた音が響き、深く口づけ合った咥内でお互いの舌が絡み合う。
絡み合う舌の熱さに長瀬の両性器は絶頂を求め、再び疼き出していた。
「城戸……っ、俺、もう……っ」
「イキそうか? いいんだぜ、いつもみたいにイッても……」
切ない声を上げる長瀬を、城戸は優しい眼差しで見つめている。
「俺はあんま動けないだろうから、お前をイかせられるか分かんねえけど……」
言って、城戸は両手で長瀬の剥き出しの尻を掴むと、上下に揺すった。
ごつごつした肉棒が柔らかく濡れた膣粘膜を擦り上げ、発情して降りてきている子宮を強く突き上げる。
「! ぅあぁ……ッ……!」
女性器で味わう快感に声を上げながら、長瀬は城戸にしがみついた。
城戸の肉棒を咥え込んでいる長瀬の膣が締まり、お互いの身体の間に挟まれた長瀬の男の部分がびくりと脈打つ。
「っく……」
射精間近の肉棒を強く締め付けられ、城戸の顔が快感に歪んだ。
「気持ちいいぜ、長瀬……俺もイッちまいそうだ……」
ハアハアと息を荒げながら、城戸は長瀬の尻を上下に揺すり、とろとろに濡れ潤った長瀬の膣で自らの肉棒を扱く。
「あぁッ、いいッ、オマ○コの奥っ、子宮に、城戸のチ○ポ、刺さってるぅ……ッ!」
限界まで硬く膨らんだ城戸の肉棒が、発情して疼く長瀬の子宮を何度も強く突き上げる。
理性を突き崩された長瀬は卑猥な言葉を口走りながら、城戸の目の前で快楽にとろけた雌の顔を晒した。
「城戸っ、俺の中に、オマ○コにザー○ン出してっ……! 城戸のザー○ン、オマ○コの奥で感じながらイキたい……っ!」
「! 長瀬っ……!」
雄の子種を欲しがる雌の本能のまま、長瀬はなりふり構わず城戸に中出しを求めた。
快楽にとろけ切った雌の顔で自らを求めてくる長瀬に、城戸の射精欲は否応なく高まる。
とろとろに濡れ潤った膣を硬く張った肉棒で掻き回す音がぐちゅぐちゅと響き、長瀬の尻を揺り動かす城戸の動きは一層激しくなった。
結合部からは我慢汁と愛液が混ざり合ったぬるぬるの汁が溢れ、射精寸前にまでせり上がった城戸の陰嚢を濡らしている。
長瀬の膣奥に射精したくてたまらず、城戸は雄の本能に衝き動かされるまま、長瀬の子宮を強く突き上げた。
その一突きで長瀬の女性器は絶頂に達する。
「あっ、ぁあっ、いく、イクぅッ……城戸のチ○ポで、オマ○コイクぅッ……!」
長瀬の喉から悲鳴のようなアクメ声が上がり、城戸の肉棒を咥え込んでいる膣が強く締まった。
子宮で感じる深く強い絶頂に、長瀬はとろけたイキ顔を晒しながら、城戸に身体ごと強くしがみつく。
「ッひぃ……ッ! チ○ポもイクッ……!」
女性器の絶頂とほぼ同時に、お互いの身体の間に挟まれていた長瀬の男の部分から、どろりとした白濁汁が勢いよく吐き出された。
ビクビクと脈打つ男の部分から発射された精液は、学ランの下に着ている長瀬のTシャツと、城戸の黒いパジャマを白くべっとりと汚していく。
「っ……長瀬っ、俺もイクっ……オマ○コにザー○ン出る……ッ!」
獣のように息を荒げながら、城戸は性急な声を上げる。
そして、子種を欲しがって食らいついてくる長瀬の子宮を、自らの硬い肉棒で力任せに突き上げた。
長瀬の膣奥で、硬く膨れ上がった城戸の肉棒がどくりと力強く脈打つ。
子宮口に突き刺さるほど強く突き当てた肉棒の尿道口から、どろりとした濃厚な子種汁が勢いよく迸った。
ドクドクと断続的に吐き出される子種汁は長瀬の膣奥に溜まり、子宮口を浸らせながら膣奥を温かく満たしていく。
「あぁ……っ……城戸のザー○ン、俺のオマ○コの奥にいっぱい出てる……っ……あったかくて、すげー気持ちいい……」
絶頂の余韻に浸りながら長瀬はうっとりと目を細め、恍惚とした笑みを浮かべた。
抱き合う身体の熱が覚めても、二人はベッドでお互いを抱きしめ合い、寄り添い合っていた。
ふいに長瀬が口を開く。
「城戸、俺、本当はお前のこと、好きなんだ。……嫌いだなんて言って、ごめんな」
「長瀬……」
ためらいがちに告げる長瀬を、城戸は静かに見つめている。
「俺も……大好きだぜ、長瀬……」
応えるように言って、城戸は長瀬をぎゅっと強く抱きしめた。
やっと一つになれた想いを、もう二度と離さないように。
そして、ゆるやかにうねる長瀬の髪を優しく撫でると、その唇にそっと口づけた。
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