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 28 Aug 2010 (4)

「で、インフルエンザだったのか?」
『いえ、体温調節の不調からくる風邪だと。関節には問題はないとのことです』
「……それは寝冷えじゃないか。子どもか、お前は」
『………ええ子どもですよ、私は。医師には十歳だと言ってやりました』
 俄に不機嫌になるニアの声は、風邪によるものか僅かに掠れたようだった。
「通じたか」
 月のからかいに、ニアが一瞬間、黙り込んだ。
『……幸いにも魅上がフォローを入れてくれました』
 十歳だと真に受けられたためのフォローか、実年齢を告げたときの医師の戸惑いに対するフォローなのか、どちらにしても、ニアにしてみれば面白くないことばかりだろう。月は笑いを噛み殺した。
 しかし、月の気配は通信機越しでも判ったようで、ニアの声は更にとげとげしくなった。
『データは届きましたか』
「ああ」
『別件の方、日本警察が資料を持っているはずです。至急手配してください』
 時折、画面にロボットが現れては消える。ローテーブルの下で寝転んだまま、遊んでいるのだろう。しかしだからと言って機嫌が良いわけはなく、月はぐずる幼児を相手にしているような気がしてきた。背中が疼き、苛立ちはじめたのもある。
 また、白い指に支えられたロボットが視界を横切った。
「……ニア、顔を見せろ」
 ふいの月の言葉に、ニアはロボットを画面から見える位置に静止させた。
『支障はないでしょう。だいたい、通常の通信がなぜカメラ越しである必要があるのかわからない』
「他の回線は本業のほうに回している。最初に説明したはずだが」
『増やしてください。お金がないわけじゃないでしょう。それに私は体調不良で起き上がれません』
 自分の代わりとばかり、ロボットを振る。この挑戦的な口調と態度に以前、日本の捜査本部に揺さぶりをかけにきたことを思いだした。機械音声ではないだけに、あの時よりも神経に触る。
「−図に乗るな、ネイト・リバー」
 周囲に人がいないとはいえ、深夜の病室であることを忘れ、思わず声を荒げていた。
『…………』
 沈黙したが、すぐに、くすくすと笑う声が聞こえてきた。

08.09.04

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