先輩、私の事好きですか?
私は、先輩の事好きです。何よりも、誰よりも。
こんな私の想い、アナタに通じますか?
私は、今日も夢を見ます。
月に願いを。
そんな夢を。
2)あんまり先輩を一気に追い詰めるのはよくない……。
「それならいいんです。私、先輩が傷ついてないか、心配で――。」
「ありがとう。しのぶちゃん。僕は、大丈夫だから。」
「はい……じゃあ、私はこれで……。」
静かに部屋を立ち去ると、私は、一つため息をついて笑みを浮かべる。
もうすぐ、おもしろいショウが始まる。
「フフフ……」
そのショウは、存分に私を楽しませて、愛しい浦島先輩を私の胸の中に呼び寄せてくれるだろう。
私は部屋に戻った。
成瀬川の部屋。
「入っていいかな。」
「……」
成瀬川先輩は言葉を返さない。
浦島先輩は、了承を得ずに中に入っていく。
「何で入ってくるのよ!」
浦島先輩が、中に入った瞬間に成瀬川先輩はヒステリックな声をあげる。
「落ちついて……こんなの、何かの間違い……」
「しつこいわね!こないでって言ってるの!」
「アンタと私は終わったのよ!」
先輩の言葉をさえぎり、一方的に怒鳴りつける。
成瀬川先輩はそうするしかない。
先輩の優しさに触れてしまっては、余計につらくなる。
だから、先輩を突き放して、優しさを断ち切ろうとしている。
「なる、俺はなるの事が好きなんだ。」
「俺に何か悪い所があったら謝る。だから……」
「もう……。もうダメなの……。ごめんなさい……。」
「本当に……ごめんなさい……」
成瀬川先輩は、先輩の言葉に、すすり泣きを始めた。
もう先輩を突き放すのが、出来なくなったのか、泣きながらもうあきらめてくれと訴える。
「これは、何かの間違いだろ?なる……」
「う……うう。ごめんなさい……。」
先輩が、成瀬川先輩の肩に手をかけた。
成瀬川先輩が身体を震わしている。
「景太郎……」
……そこまでね。
私は、手元のリモコンのスイッチを押した。
「んひっ……あ……!気持ちいい……」
「!?」
成瀬川先輩が、顔を真っ青に変えた。
突如、テレビ画面が、ビデオの内容を映し出したのだ。
瀬田さんにバックから突かれてもだえる成瀬川がそこには映っている。
「んあっ……瀬田さぁん……一緒に、一緒にイって……中に……」
凍りつく二人をよそにビデオは淡々と映像を流しつづけ、クライマックスのシーンに突入する。
狂ったように腰を動かしお互いの体を重ねる二人。
名前を呼び合い、キスを重ね、求めあっている。
浦島先輩にとって、非現実のかたまりのような音と映像だけど、
それはれっきとした事実だった。
「嘘だろ……」
「だから言ったでしょ!アンタじゃ、私には、ふさわしくないのよ!」
場の雰囲気は破綻した。
顔面を涙でぐしゅぐしゅに濡らしている成瀬川先輩が、半狂乱みたいに叫ぶ。
先輩も泣いていた。
「っ……」
「だから、出てって!アンタ今すぐ出て行きなさいよ!」
「本気でこんなこと……!」
成瀬川先輩の胸倉を掴んだ先輩が、くるったように叫ぶ。
怒鳴られた成瀬川先輩は、なきじゃくるばかりだ。
そろそろ頃合かな……
1)止めに入る。
2)おもしろそうなのでもう少し見ておく。
続きに願いを。
[あとがき]
怒り狂う景太郎。
なきじゃくる成瀬川。
薄笑いを浮かべるしのぶ。
こういったシチュエーションが相変わらず大好きです。
さあ、これからどうなってしまうのでしょうか。
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