「お兄ちゃま、逢いたかったよ……」
「俺も、逢いたかった」
そう言って、思い切りいもうとの花穂を抱き締める。


第2話 引越し? 同棲? 大騒ぎ



「相変わらず仲がいいわね」
「いいじゃないか。仲良き事は美しきかな、と言う言葉もあることだし」
……父さんと母さんが何か話してるが、無視して花穂を抱きしめ続ける俺。
花穂も恥ずかしそうにしながらも応えてくれる。

……で、そんな倖せな時間を破る声が一つ。
「うー……、祐一なにやってるんだおー!」
名雪……起きてきたのか。どうせならもっと眠っててくれればいいのに。
「うぐぅ、祐一君が女の子と抱き合ってるよ」
「あうーっ、許さないんだからぁ」
……あゆと真琴まで。頼むからもっと倖せを噛み締めさせてくれ。
「あらあら……大変ですね」
……秋子さん。いるのなら止めてくださいよ。

「お……お兄ちゃまぁ」
流石にこれだけの人の中で抱き合ってるのが恥ずかしいのか、花穂が顔を真っ赤にしてるので
名残惜しいけど離れることにする。
……あとでまたゆっくり抱きしめよう。

……と、母さんが話し掛けてくる。
「でもね、祐一。普通あたし達両親を無視して花穂と抱き合う?」
「い……いいじゃないか。それより何しに来たんだ?連絡もなしに」
「あら? 連絡はしたわよ。ね、秋子」
「はい。でも祐一さんには話さないように、と言われたので」
……秋子さんの答えを聴いて少し頭痛がしたような気がした。
「……さいですか。で、結局何しに来たんだ?」
「それは中で話すわね。秋子、あがってもいいわよね」
「はい。ちゃんと昼食の準備もできてるわ」
「さすがね。というわけで行くわよ」
そう言って秋子さんと一緒に中に入っていく父さんと母さん。

「……行こうか、花穂」
「うん、お兄ちゃま」
ここにいても仕方がないので僕も花穂と一緒に入っていく。

「うぐぅ、祐一君……」
「祐一、無視はないんだおー」
「あうー、あの娘は一体誰なのよう」
……後から何か言いながらついてくる水瀬シスターズ。
……どーでもいーけど、少し怖いぞ。

そして、昼食中。
ちなみにメニューはカレー。秋子さんが作ったので当然の如く美味しい。
……何処かのバニラアイス娘は食べられないと思うが。
……“そんなこと言う人、嫌いです”とか聴こえたような気がするが気にしないでおく。事実だろうし。
「……で、もう一回訊くけど、結局何しに来たんだ?」
「何を言ってるんだ。家が完成したからこっちに来たんじゃないか」
「あ、家完成したんだ。どうなってるのかなんて全然知らなかったから」
「……ねぇ祐一君、家って何?どういうことなの?」
あゆがよく解らないといった顔で訊いてくる。
見ると、真琴と名雪も同じような顔をしていた。
「あれ、話してなかったか?」
「あうーっ、聴いてないわよぅ」
「そうだっけ?じゃあ、説明するからよく聴けよ」
「「「はーい」」」(←水瀬シスターズ)
「もともと、この街にきたのは父さんが転勤するからだったんだ。
 で、本当は春になったら家族全員で引っ越してくるハズだったんだけど、俺は学校の都合でどうしても1月から編入しなきゃならなかったんだ。
 だから、みんなより先にきて水瀬家にお世話になってたというわけだ」
「ふーん。じゃあ、さっき言ってた家っていうのは?」
「家族4人がこっちで住む家だけど」
「じゃあ、祐一君はこのうちから出て行っちゃうの!?」
「そういうことだな」
「うぐぅ………」
「あうー………」
「だおー………」
……水瀬シスターズが拗ねてしまったが、気にしないことにして父さんに話を振る。
「それで、いつ引っ越すんだ?俺、全然荷物まとめてないんだけど」
「その事なんだがな、祐一」
深刻な顔で話し出す父さん。
「何か問題でもあるのか?」
「実は、転勤が決まったんだ」
「……は?」
唐突にそんな事を言い出す。
「なんだ、転勤も知らないのか?」
「そんな訳ないだろうが!」
「冗談だ」
「笑えねぇよ。……で、転勤が決まったって、ここに転勤してくるんじゃなかったのか?」
「その筈だったんだがな、別の所に転勤が決まった」
「……さいですか。……とりあえず訊くが、何処にだ?」
「ドイツだ」
「……は?」
一瞬、頭の中が真っ白になる。
「ドイツを知らないのか?」
「……同じネタを二回繰り返すな」
「それもそうだな」
と言いつつ少し寂しそうである。
「……もういい。とりあえず海外転勤が決まったということは解ったから」

……と、ふと隣を見てみると花穂が驚いた顔をしていた。
「花穂、どうした?」
「……花穂、今までパパの海外転勤の話知らなかったよ」
「……父さん、話しとけよ」
「細かい事は気にするな」
「細かいかなぁ……」
「花穂、言うだけ無駄だって」
「……そうだね」
俺と花穂、二人そろって溜息をつく。こういう両親なのだ。
しかし、このままでは話が進まないので母さんに話を聴く事にする。
「で、結局俺はどうすればいいんだ?」
「実は、最初は花穂も一緒にこの家に住んでもらおうと思ったのよ。でも、娘が増えてて秋子も大変だと思うのよね」
確かにそうだ。今でも大変なのにこれ以上増えるというのも問題だろう。
……でも、頼めば間違いなく一秒で「了承」だろうなぁ。
「だから、新しい家に祐一と花穂の二人で暮らしてもらうことにしたの」

「「「えぇ~~~~~~~~~!」」」
悲鳴に近い声を上げる水瀬シスターズ。……近所迷惑かも。
「ゆ、祐一君が………」
「お、女の子と一緒に………」
「あうー………」
何か言ってるが、構ってると話がそれそうなのでとりあえず放置プレイ(ぉ

「お兄ちゃまと二人っきりなんだぁ……」
見ると、花穂がちょっとトリップしていた。
まぁ、友人のいもうとの咲耶ちゃんほどじゃないけど……。……って二人?

「母さん、“二人で”ってことは母さんも父さんについていくのか?」
「モチロンよ。だって父さんと母さんはラブラブだもの」
「あ……そう」
「ママ、恥ずかしい……」
何時の間にか元の世界に戻ってきていた花穂からもツッコミがはいる。
ちなみに、水瀬シスターズはまだショックから抜け出してない。
「それに、父さんこの間一回風邪を拗らせちゃったでしょ。だから、一人にしておくには心配なのよ」
そういえばこの父親は一月の終わりごろ一回寝込んでるんだっけ。
……それは一人で海外に行かせるのも心配だろう。……というか、俺も心配だ。
「と言う事で、祐一と花穂は二人で暮らしてもらうからね。二人ともちゃんと家事は出来るんだし大丈夫でしょ」
いや、その辺は心配してないんだけどね。花穂、料理上手だし。
「と言う事で祐一。昼食も食べ終わった事だし引越しの準備してきてね」
「……やっぱり今日引っ越すんだな」
「一応その予定よ。どうせ荷物なんてそんなに無いでしょ」
そう言ってリビングに移動する父さんと母さん。
……確かに荷物は少ない。家具は俺がこの家に来る際に秋子さんが準備してくれたものだし。
それに、これから住む家がそんなに遠いわけでもないだろうから、取りにくる事も可能だろう。
「ま、準備に行きますか。……花穂、手伝ってくれる?」
「うん。モチロンだよ、お兄ちゃま」
「よし。じゃ、行こうか」
「うん」
そして席を立つ俺と花穂。

「祐一、待つんだおー!」
花穂と一緒に俺の部屋に行こうとすると、いつのまにか復活していた名雪が背後から呼び止めてくる。
「名雪、何か用か? 一応急いでるんだから早くしてくれよ」
俺がそう言うと、名雪が言い返してきた。
「まだ説明してもらってないおー!」
「祐一君、その娘は一体誰なの?」
「あうーっ、ちゃんと説明しなさいよ!」
あゆと真琴も一緒になって訊いてくる。
「その娘って、花穂のことか?」
「その通りよ!」
……そういえば説明してなかったっけ。色々あったせいで自己紹介も無かったし。
……このままじゃ五月蝿そうだし、仕方ないかな・・・。

「花穂、説明してもいいか?」
「……うん、いいよ」
「そっか。無理はするなよ」
「大丈夫だよ、お兄ちゃま」
花穂の承諾も取れたので、説明する事にする。

「じゃあ、仕方ないから説明するぞ」
そう言って、俺と花穂はまた椅子に座った。
「とりあえず名雪、あゆ、真琴。先に花穂に自己紹介ね」
「「「え~~」」」
「人に名前を訊く時はまず自分から名乗るのが礼儀だろ」
「「「は~い」」」
……結構素直だね。

「それじゃ、名前と歳と好きなもの……でいいか。まずは、名雪から」
「うん。わたしは名雪、水瀬名雪だよ。歳は17歳、新学期から高校3年生だよ」
「名雪さん……ですね」
「うん。好きなものはイチゴとネコとけろぴーだよ。これからヨロシクね」
「はい、よろしくお願いします」
「ちなみに、こう見えても陸上部の部長だ」
「へー、すごいんですね」
……素直に感心する花穂。……よいこだね。

「サクサクいくか。次はあゆね」
「はーい。ボクはあゆ。月宮あゆだよ」
「えっ!?」
見ると、花穂が驚いた顔をしている。何故?
「どうした、花穂?」
「えっ、な、なんでもないよ、お兄ちゃま」
「……まぁ、それならいいけど」
……全然なんでもなさそうに見えない。……後でもう一回訊いてみよう。
「えっと、あゆさん、ですね」
「うん、そうだよ。歳は名雪さんと一緒で17歳だよ」
「(……高校生だったんだ)」
……花穂、小声で何気に凄いことを言ってるね。
「それで、好きなものはタイヤキだよ。仲良くしようね、花穂ちゃん」
「はい。よろしくです」
……これなら仲良くやっていけそうだな。

「……で、次は真琴だな」
「あう………」
……真琴、お前は花穂相手でも人見知りするのか……。
「ほら、真琴。しっかり自己紹介しろよ」
「あう……。わかったわよう。あたしは真琴、沢渡真琴よ。歳は16よ」
「真琴さんですね。よろしくお願いします」
「あう……、よろしく……」
……真琴、仕方ないような気もするけどもう少し人に慣れてくれ。

「……さて、花穂。これでみんなのことが少しは解ったか?」
「うん。名雪さんにあゆさんに真琴さん。ちゃんと憶えたよ」
「そっか。じゃあ、次は花穂の自己紹介だな」
「はーい」
そう言ってあゆ達の方を向く花穂。

「えっと……相沢花穂です。これからよろしくお願いします」
「花穂ちゃんだね。……それで、花穂ちゃんと祐一君はどういう関係なの?」
「どういう関係って……」
「えっと……、花穂は祐一お兄ちゃまのいもうとです」
あきれる俺と律儀に答える花穂。
「えっ!? 祐一、妹なんていたの?」
「いるよ。……まぁ、確かに7年前にはいなかったけどな」
「え、じゃあその娘、まだ7歳になってないの?」
「あぁ、最後にこの街にきたときにちょうど母さんが妊娠してて……、ってそんな訳ないだろ」
「えっ、そうなの?」
「当たり前だ。と言うか、見れば解るだろ」
「うぐぅ、ボク解らなかったよ……」
普通は信じないと思うぞ。
……それに、もし7歳だったら雛子ちゃんや亞里亞ちゃんより年下になるよな。流石にそれはないぞ。
「花穂、とりあえず歳言っておこうか」
「はい。えっと、花穂は13歳で、新学期から中学2年生です」
そして、少しシリアスモードに入る俺。
「花穂は……養子なんだよ。7年前、俺が最後にこの街にきた後で引き取られたんだ」
「え……、そうなんだ」
「あぁ。まぁ、色々あって花穂の両親がいなくなったんだ」
……そう、花穂の両親は亡くなっている。だから、花穂の前ではあまり説明したくなかったんだ。
「だから、仲の良かったうちの両親がひきとったんだ」
「……そうだったんだ」
……微妙に空気が重い。

「……って、それって祐一君と花穂ちゃんは血が繋がってないって事だよね」
そして、そんな空気の重さを一瞬で壊すあゆの声。
「……そりゃ、まぁ当然そうなるわな」
「……うぐぅ」
「? ……じゃあ、俺たちは部屋に行くから」
……何故か机に突っ伏す水瀬シスターズ。あれ、そういえば……

「母さん」
ふと思い出したことがあって、リビングのソファーでテレビをみていた母さんに話し掛ける。
……ダイニングにいる名雪たちには聴こえない声で。
「どうしたの、祐一?」
「花穂って、確か姉がいるんだったよな?」
「えぇ、確かにいるわよ」
「その娘は、たしかこの辺にいるウチの親戚に任せてるんだよな」
「そうよ。前にも言った通り、2人増えるのは大変だったし。……と言うのは嘘なんだけどね」
「嘘? そういうことだ?」
「……これは言ってなかった話なんだけどね。実は、その娘って入院してたのよ」
「ウソ……。花穂のお姉ちゃまが……」
確かに、それは言えないよな。
「……なんで入院なんてしてたんだ?」
「木から落ちちゃって、大怪我しちゃったのよね」
……なんか、どこかで聴いた話のような。
「……それで、その娘はどうなったんだ?」
「しばらく入院してたけど、怪我が治ったあとは元気に暮らしてるわよ」
「よかったぁ」
花穂が安心してる。と言うか、俺も安心した。
それはそれとして……木から落ちて怪我をしたのって、やっぱり……
「それで、結局その親戚に任せたままなのか?」
「えぇ、「うちで面倒見る」って言ったから、任せる事にしたのよ」
……ほぼ確定。……確信を持って母さんに訊いてみる。
「……ちなみにその娘、今俺達の後ろで机に突っ伏してたりする?」
「うん、正解」
……おいおい、そんなのアリかよ。

「ねぇ、お兄ちゃま。どういうことなの?」
流石によく解らなかったらしく、花穂が俺に訊いてくる。
「……とりあえず、俺の部屋へ行こう。そこで話すよ」
「はーい」

と言う事で俺の部屋だ。基本的には片付いてると思う。……単に物があまり無いだけだけど。
ちなみに、花穂に見られて困るようなものは無い。……ディスクだけじゃ18禁ゲームと判別できないだろうし。
「……それで、花穂の姉さんの話だったな」
「うん」
「簡単に言うと、さっきの月宮あゆが花穂の姉さんだ」
「……やっぱりそうだったんだ」
花穂が納得したような表情になる。
「花穂、さっき驚いてたのも名前が一緒だったからだろ?」
「うん。“つきみや”って苗字も“あゆ”って名前も珍しいからもしかして、と思ったんだけど……」
「それが大当たりだった、ということだね」
「うん。花穂、お姉ちゃまに会えてとっても嬉しかった」
花穂が本当に嬉しそうな表情で言う。
「……ま、感動の再会はまた今度にして、とりあえず部屋の片付け手伝ってね」
「はい、お兄ちゃま」
そうして、引越しの準備を始めた俺と花穂だった。


続く


第2話です
……こんな設定にしちゃってよかったんでしょうか?
ちなみに、あゆと花穂が姉妹という設定は今後生かされる予定はありません(ぉ

ちなみに、ウチでは雛子と亞里亞の年齢は10歳(小4なのでこのSSの場合はまだ9歳)ということになっています。
あと、花穂は家事一般が出来ます。G'sで「見かけによらず家庭的」と言われていた事は忘れません。
ただ、花穂は自分がドジなことを自覚しているため慎重になるので少し時間がかかります。
……それでも、人並み以上に早いんですけどね。

次回は第3話。引越し先での話です。
また新しいキャラが出てくる予定だったりします。

……ちゃんとこの連載を終わらせられるだろうか(ぉ



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