クリスマスの贈り物(4)



 土井垣が作れば野菜のごった煮になるところだが、トマト味のスープは美味しかった。
 昨日のトンカツが少し胃にもたれていたので、さっぱり味のスープを作ってくれた不知火の気遣いを、普段なら感謝していたことだろう。
 そう。普段ならば。
「さすがの土井垣さんもやっぱり食欲優先ですか……」
 不知火は土井垣の口にスプーンを運びながら、根元の縛めを緩めた。食事に気を取られたのか、少し柔らかくなっている。
「手も解け!いい加減にしろ!黙ってたのは確かに悪かった。衝突するのが面倒で……ついつい先延ばしにしちまってな。お前をこんなに傷つけるなんて思ってなかったんだ。それは悪かったと思うが、だからと言ってこんなことをされる筋合いはないぞ!」
「あなたを行かせるわけにはいきません」
そう言うと不知火は土井垣の口にスープを運ぶ。
「もう約束の時間はとっくに過ぎちまってるよ!」
「さぁ、スープも早く食べてしまってください。はい、あーん」
 不知火は聞えなかったかのように微笑んでいる。土井垣はしばらく睨みつけていたが、不知火がにこにこしながらいつまでもスプーンを唇に押し当てるので、観念したように口を開けた。こんな食事でなければ、とても美味しく感じただろうに。
 とにかく早く食べてしまおう。土井垣が素直になったので、不知火は嬉しそうに世話を焼いた。
「トーストもスープも全部きれいに食べてくれましたね」
不知火は土井垣の口をタオルで拭うと、食事を下げようとした。
「もう気が済んだろ……早く解いてくれ。今日はお前と1日中一緒にいるよ。……いや、明日も明後日もずっとだ。予定が台無しになってしまったからな、クソッ。……連絡がないところをみると、お前、本当に勝手に断ったんだな。後であいつに謝らんと……」
 言葉は、続けられなかった。不知火に唇を塞がれたので。
 土井垣は睨みつけたまま、顔を背けて逃れようとしたが、後ろ手に縛られているのでままならなかった。
 こいつはキスが上手い。駄目だ、また流される……。
 噛みついてやろうとしたのを悟ったのか、不知火が舌を引っ込めた。そこで土井垣は唇を閉じようとしたが、突然、下半身に疼痛を感じ、思わず喘いだ。また不知火の舌が進入してきたが抵抗する力は失せていた。
 口内を這いまわる巧みな舌は、土井垣の頭を痺れさせたが、下半身のほうは痛みでしかなかった。
「ごめんなさい、ちゃんと濡らさないとね」
疼痛が消え、土井垣の力が緩んだのをいいことに、不知火は唇をむさぼった。手を伸ばし、頭の上のほうで何やら探している。 
 
 ローションの冷たいぬるりとした感触とともに、内部が押し広げられた。土井垣は器用な指の攻撃から逃れようと慌てて後ずさったが、絡み付いてくる舌の感触が邪魔をする。
 やめてくれ……。思いとは裏腹に、萎えかけていた部分がまた硬くなっていくのがわかる。
自由な足で蹴ろうとしたが、腰を動かすと、新たな感覚に声を上げそうになった。指で尻を串刺しにされていたのでは足を閉じる事もままならない。
「自分から腰を使ってくれるんですか?あなたって本当にいやらしいな。指の数を増やしてあげますね」
 土井垣が苦しそうに仰け反り、踵が抉るようにシーツを蹴るのを、不知火は満足げにながめると、片手で器用に自分のズボンを下ろした。

刺激がさらに強いものになり、内部のある部分ばかり重点的に擦りあげられ、土井垣は何かが漏れてしまいそうな感覚にうめき声をあげる。空いた手は胸の突起を探り、もう片方は唇が吸い上げていた。
 しかし不知火の刺激は『後から開発された場所』ばかりで、馴染みの部分は放っておかれたままだった。そこはがちがちに膨れ上がり、透明な液体を垂れ流し、ほんの少し触れるだけで、この狂おしい快感から解放されるところまで来ていた。
「不知火……そんなところばかりじゃなくて……」
 胸から唇を離す。「どうして?あなたはここが感じるんでしょう?」
「違う……わかってるだろ」
「なぁんだ、違うんですか。ここは感じないんですね」
 不知火は指を引き抜いた。先ほど緩めた根元を縛りなおし、土井垣が一番触れてほしい周辺ばかり、思わせぶりに指を這わせた。
「不知火!」
「なんです?……キスして欲しいんですか」
 不知火はのしかかり口付けした。尖ったあごを軽く噛み、首筋に舌を這わせる。土井垣の腹に、硬く強張った熱いものが触れ、ぬるりとした感触が残った。
 唇は鎖骨の窪みをさまよった後、すでに感じて突き立っている胸の突起を咥えた。熱い塊の先端が、先ほど指で抉られた部分に押し当てられので土井垣は体の力を抜いたが、不知火はそのまま動かない。ただ胸の刺激だけが増していく。
「不知火……不知火」
「どうしたんです、土井垣さん。……そんなに押し付けたら入ってしまいますよ。そんなところ感じないんでしょう?」
「……」
「欲しいんですか、ひょっとして?」
「……」
「黙っていたらわかりませんよ」
不知火はますます押し当てたが、挿入はしなかった。
「不知火、頼む……入れてくれ」
「土井垣さんいつもしてもらってばかりなんですよねぇ」
 飽きれたように言うと体を離し、ごろりと仰向けになった。
「たまにはあなたからしてください」
「……」
 土井垣は中腰になったまま黙っている。躊躇しているようだ。
「してくれないのですか。仕方ないなぁ」
 不知火はローションの小瓶を取ると、手にたっぷり滴らせ、自分で自分を弄びはじめた。呼吸が荒くなり、溜息が漏れる。目をつぶりわざとらしく顎を仰け反らせると、片目を開けて、なす術のない土井垣を見た。
「こうすると気持ちいいですね、土井垣さん。……あなたも気持ち良くなりたいでしょう?」
「……」
「俺、1人でイッちゃおうかな」
「ま、待て……わかった……」
 
 土井垣は不知火の腰の上にまたがった。下からじろじろ見上げる視線から逃れるように、恥ずかしそうに目を伏せている。後ろでに縛られているために、臍に向かって伸びているものを挿入するのは難しかった。
 体を前に傾け何度も試みるが、ぬるぬるのそれはつるりと滑って上手くいかない。
「手伝って欲しい?」
 土井垣が素直にうなづいたので、不知火は自分の根元に手を添えて立ち上がらせる。「これでいいかな。後は自分でやってください」
 土井垣はしばらく位置を決めるように揺らいだ後、息を吐き体の力を抜きながら、ゆっくりと腰を沈めた。張り裂けそうな感覚に眉をひそめている。やがてそろそろと腰を降ろしたが、ある部分に当ると、唇からうめき声が漏れた。そこを刺激するように体を動かし始める。うめき声が喘ぎ声に変わった。
「ああ、土井垣さん……」
 不知火が満足そうにうめいた。
 土井垣の臍のあたりまで直立しているものは、硬く腫れ上がり滴を漏らしている。いつもは流されるだけの受身な彼が、自分から快楽を求めて腰を振る姿は不知火の目にはひどく淫靡に映った。
「感じているんですね、土井垣さん。おかしいのはお前らだ、なんていってたくせに。男に跨って自分から入れるなんて、おかしいのはあなたのほうだ……」
 指先で結合している部分がはっきりするようにぐるりとなぞった。
「ほら……わかりますか。入ってるでしょう?指よりずっと太いのに」気持ちが高ぶり、今にも出してしまいそうになるのを堪えるために、不知火はわざと饒舌に言った。 
「自分で腰を振って悦んでいるなんて……こっちはぜんぜん触ってもいないのに気持ちよさそうにビクビクしてますよ、先走りまで漏らして。尻だけで感じる人なんだ、あなたは。……ああ、駄目です、そんなにしたら……」
 不知火は目を閉じると苦しそうな表情になったが、口元はだらしなく歪み、笑っている。苦しいだけの土井垣の表情とは大違いだった。
「あ、あぁ、不知火、解いてくれ!もう終りたい……助けてくれ、頭がおかしくなりそうだ!!」
 いくら腰を振っても苦しさが増すだけなのはわかっていたが、もうすぐそこまで来ている絶頂を求めて本能的に動く体を止めることができずに、土井垣は腰を動かしながら叫んでいた。
「土井垣さん、凄くいい……いつもいつもこれぐらい積極的だったらいいのに……」
 不知火は目を閉じた。もう他人の事など構う余裕はなかった。腰に手をあてがい、自らも突き上げる。土井垣の声が悲鳴に近いものに変わり、哀願に嗚咽が混じりはじめるのを、意地悪な気分で聴いていた。
「土井垣さん、俺が終るまでは……う……泣いたって許しませんよ。もうあなたに……あ……置き去りにされるのは御免だ。気持ちよくなりたかったら、頑張って俺を……イカせて」
「し、不知火!……早くイってくれ……苦しい、は、早くしろ!!」
「土井垣さん……ああ、土井垣さん!……もっと続けたい……のに……ああぁぁ、うっ、ぐぅ」
 動く腰を両手で捕まえると、貫かんばかりに突き上げた。硬く閉じた目、皺の寄った眉間、仰け反る顎。理性では押えられない声が、放出の瞬間ごとに唇から漏れた。
 
 腹の上の土井垣の、終れない苦しみをよそに、不知火は心地よい弛緩を味わっていた。このまま眠ってしまいたい気分だった。
「不知火……イッたんだろう……」
 搾り出すような土井垣の声が、遠くから聞えてくるように感じる。
「だったら早く解放してくれ、お願いだ」
「ああ、凄くよかった。……土井垣さん、まだ動いてるの?」不知火は乾いた笑い声を立てた。
「ははは、止めてください、くすぐったいですよ、もう駄目です……ほら、抜けちゃった」
「不知火!」
「わかりましたよ。そのまま中腰でいてください」
 不知火は目の前のそそり立つものの先端に軽く手を触れた。ほんの少し撫でただけなのに、土井垣の体はびくびく震え、体内からは腹の上にポトポトと、先ほど不知火の漏らした液体が垂れる。
「いけない、こっちが先だ。ごめんなさい土井垣さん、またやっちゃった」
 不知火は皮ひもを思わせぶりになぞった後で、もっと後のほうに手を伸ばす。
「ちゃんと掻き出さないといけないんですよね?」
「あぁ……もう、やめてくれ……」
 土井垣の目から涙が零れ落ちた。
「駄目ですよ、土井垣さんが病気になったら困るもの。また感じているんですか?」
「あぁ……あぁ……」
 うわ言のようなものしか返ってこない。
「まったく土井垣さんったら。……ねぇ、俺のこと好きですか?」
 掻き出すよりも明らかに刺激する動作だった。
「……好きだよ……だから……助けて」
「絶対何処にも行かない?」
「行かない……ずっと一緒にいる……だから」
「俺のこと愛してる?」
 言いながら不知火は、やっと皮ひもに手を伸ばした。
「ああ……愛して……る……うわぁぁぁ!!……あ……あ……」
 外されると同時に、先端から白い、粘っこい液体がどろどろと流れ出した。前立腺のみの刺激によるそれは通常の射精と異なり、普段なら一瞬の快感を何度ももたらした。
 
 横たわる不知火の上に体が崩れ落ちるのを止める事が出来ない。
 
 死ぬとはこんな感じなんだろうか……意識を失いながら、土井垣は思った。

 

(5)に続く

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