(2)
「え、アニキにイライラってアカシア姉ちゃんが? そりゃないだろ、姉ちゃんが好きだったのはむしろ……ちょ、ちょと待て、痛いほどわかるってことはC・Jもかぁ?! そ、そんな、そんな、ランデル兄貴ばかりが何故モテる……て俺別にC・Jなんかにモテてもちっとも羨ましくないぞぅ、羨ましがるな俺」
と言いながらも頭を抱えそうになったスナイプスに、幼なじみは腰掛けた木箱をカタカタ揺らしながら陽気に笑いかける。
「あはは、姉さんと私の場合ウルスラとはちょっと違うよ。姉さんが怒ってたのは兄さんの鈍感なところ。だってどんなに似合うドレスを着てたって、どれほどキレイにお化粧したって、アベル兄さんだったら香水変えただけでも反応してくれるのにランデル兄さんはいつもボーッとしてたでしょ。気づきもしないって常に美しく魅力的であろうとしている者からすればとても失礼なことなのよ」
「そんなこと言われたって、男にとっちゃ服とか化粧とかはどーでもいい些細な事だからなぁ。そりゃアベル兄ちゃんほど頭よくて抜け目のないオシャレな男なら違うのかもしれんけど、下心もないのにそんなのフツーにできるヤツなんてそうはいねーよ。あのニブくてトロいランデル兄貴には尚更無理な相談だ。ちっ、ウルスラのヤツ思わせぶりな事やってねーでさっさとコクっちまえ。俺またオタマぶん投げられるのはごめんだからな」
唐突に、コトコトとリズミカルに鳴っていた木箱の音がピタリと止んだ。奇妙な間にスナイプスは何か不味いことを言ったかと背筋にヒヤッとしたものを感じる。
「あの子にとってそれがどれほど一大決心なのかわからないの? 男なら断られてもあのブドウはどうせ酸っぱい、で済むけど、女の子にしたらあのブドウは不味くて食べられないって言われるようなものなんだよ」
そっかなぁ男でも女でもフラれるショックは一緒だと思うけどなぁとスナイプスは思ったが、ひとまずは空気を読んで黙っていることにする。
「あーあ、もう! 兄さんこのままだとウルスラの気持ち、絶対気づかないだろうな。だいたい久しぶりに会ったのに、大きくなった、元気になったってまるで子ども扱いじゃないの。その上……その上この私についてのコメントが一言もない、って一体どういうことよ!」
ガタッと大きな音がして、C・Jがいきなり木箱から立ち上がった。なんだかとても怒っているようである。
「お、俺だって特になかったぜ……」
「あら、だってスナイプスは帽子も服も昔のまんまじゃない。……私は違うわ。私は凄く変ったはず。……でしょ?」
「え……ああ、う、うーん」
「変ったはずよね」
話が激しく脱線して言ってるような気がしたが、目の前で仁王立ちするC・Jの迫力に気をされ、彼はそのまま調子を合わせることにした。
「う、うん。……で、でも気にすんなってその、C・Jは俺と違って昔から可愛い顔してたからさ、だからアニキも何にも言わないんじゃないかな?」
「あの頃の可愛さと今の可愛さはぜんぜん違うと思う」
「いやま……ア、アニキはあのとおりニブイだろ。ウルスラにだってあんなことしか言わないんだぜ、普段ならいざ知らず商い中だったってのに。……わかった!アニキは大きなおっぱいとかバーンッと張った尻とか、そんな目立つパーツしか気づかないタイプなんだよ、何しろニブイからな。いるじゃないか、そーゆーわかりやすい客」
C・Jは仁王立ちを解くと頬に手をあてうなずく。
「……ふーんなるほど。さすがスナイプスさん、あったまイイ……。ねぇねぇ、ところでそーゆー人にボーンッでもバーンッでもない子が気づいてもらうには、一体どうすればいいのかな?」
「そりゃそんなバカッタレには裸で目の前に立つ……」
頭がいいとおだてられ、調子に乗りしゃべりすぎたことに気がつき、彼は慌てて口ごもる。
「お、おいおいウルスラにそんなこと勧めんなよ!」
「あらやーね、あの子にそんなアブナイこと教えないよ。だって本気でやりかねないもん」
C・Jは口元を片手で覆い、クスクス笑い出した。可愛いけれどなにやら含みのある、ちょっと気取った笑顔。
 スナイプスは急に心臓がドキドキし始めて、危険な幼なじみから逃げ出すべく後ずさった。そんな彼に相手はまるで気づいてないふうに人差し指をふって話を続ける。
「ふふふ、おしゃべりしてたらすっかり朝になっちゃった。もうそろそろごはんもできる頃かな、下に行って兄さん起こしてこようっと……あ、スナイプスはこなくていいからココで日向ぼっこしてなさい。……いいこと、わかった?」

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