「片付けはわたし達がやるからいいよ。・・・はおかーさん
とお風呂に入っちゃいなさい」
皆のどんぶりを片付けようとした少女を姉が止める。
「でも……いいの?」
てきぱきと片付けを始める姉と父に、少女は心配そうに聞
いた。食事で少女に手伝えることと言えば、物にもよるが配
ることと片付けぐらいしかない。
「・・・は、お母さんと入りたくないの?」
母が少女の両肩を抱き、少し意地悪そうに耳元にささやく。
ビクッとして振り向いた少女に、母は優しい笑顔で「いや?」
と聞いた。
「ううん! わたし、お母さんと入る」
よしよしと母が少女の頭をなでる。
「じゃ、一緒に入ろうね」
脱衣所で服を脱ぐ少女と母。少女の記憶と寸分違わない母
の綺麗な体。豊かな胸や細い腰、大きな腰、年齢よりは張り
のある肌、程よく肉ののった女性らしい体つき。母似の少女
は、よく大きくなれば母のような美人になると言われている
が、最近心持ち胸がふくらんできた感じがあっても、まだま
だ幼い自分の体が母のようになるとは思えなかった。
「なあに?」
服を脱ぎ終わった母が不思議そうに少女を見る。それで少
女は母に見取れていたことに気が付き、顔を赤らめる。
「えっ、えと、お母さん、きれいだなぁって」
「ん、ありがと。でも手がお留守になってるよ。さ、手を上
げて」
母がにこりと笑ってキャミソールの裾をつかむ。小さな子
供のようで少し恥ずかしかったが、少女は素直に両手をあげ
た。
母にキャミソールをまくり上げられ、あらわになる少女の
白い素肌。まだ腰のくびれもなく、ほっそりした幼い体型。
乳房と呼ぶにはあまりにも小さいが、わずかに胸が隆起して
いる。同い年の少女らに比べて成長がよいのは、母の血を濃
く引いているのかもしれない。
続けて少女はショーツも脱がして貰う。臀部は白桃のよう
な双丘が女の子らしい曲線をかたどっている。前の方は本当
に幼く、細い脚の間はわずかに膨らんだ盛り上がりの中央に、
ぴったりと閉じたスリットがそのままの姿をさらしている。
少女のショーツを手にした母が、「あ?」と妙な声をあげ
た。
「な、なに?」
心配になる少女だが、母はそそくさと自分の下着も一緒に
洗濯カゴにほうり込んだ。
「着替えは後でお姉ちゃんが持ってきてくれるから。お下が
りだけどいいよね」
「……うん」
母の反応も気になったが、お下がりという言葉が突き付け
た現実の前にはささいなことだった。姉のお下がりは嫌では
ないが、それしか着替えがないということは、少女の服が今
の家にはないこと。つまり……。
(わたしの部屋も、ないのかな……)
家が広く父の大怪我もあり、小さな頃から自分の部屋があっ
た少女。それは一人で寝るということで与えられた時は複雑
な気分ではあったが、何年も過ごせば大切な自分の部屋になっ
ている。その部屋がないということは、今の高町家には少女
の居場所がなかったということだ。
「・・・、早く入りなさい」
湯気のこもる浴室から母が手招きする。
「……はい、お母さん」
少女は髪を縛るリボンをほどき、浴室に入る。
それは、考えれば予想できること。だが、とても考えたく
ないことだった。