シャワーから噴き出る湯が二人の肌をたたき、母の艶やか
な肌を、少女の瑞々しい肌を水滴が滝のように流れ落ちる。
少女は母に引っ付くようにしてシャワーを浴びせてもらって
いた。程よい熱さのお湯が心地よく、少女の疲れを流し落と
してくれる。顔をあげると見える母の笑顔が嬉しくて、少女
の顔に初めて健やかな笑顔が浮かんだ。
一通り体を流してシャワーを止めた母が、ボディータオル
を手に取る。
「ねぇ・・・、お母さんが体洗ってあげるね」
「うん。わたしもお母さんの背中、流してあげる」
少女は椅子を並べて母に背を向けて座り、自分の体を洗う
ために別のボディータオルを手に取る。しかし、母が少女の
タオルを取り上げてしまう。
「ありがと。でも、お母さんは全部洗ってあげるから。・・・、
嫌?」
「ううん、嫌じゃいないよ。でも、ちょっと恥ずかしいかな」
少女は家族と入る風呂が好きだ。いつも母や父、姉と一緒
に入る。時には母と父や、母と姉の三人で。風呂に入ると、
つい気が緩んで甘えてしまう。普段でも甘えさせてくれる家
族だが、風呂場では特に甘えさせてくれる気がするから。
「……お母さん」
「ん、なぁに?」
「……えーと、なんでもなくて。ちょっと呼んでみたかった
の」
少女の手足を洗い、今度は背中を洗う母が鏡に映っている。
楽しげで、今にも鼻歌を歌い出しそうな母の姿に、少女は開
きかけた口を閉じた。
「そう? ふふ、いくらでも呼んでいいわよ」
本当は、もっと色々と言いたかった。だが、少女は母のこ
とを知っていても、母は少女のことを知らない。少女を知る
母と知らない母。知らない母に何を話せばいいのか?
「ひゃっ!」
突然の刺激に少女は悲鳴をあげる。物思いにふけっていた
少女の両胸を、腋の下から差し込まれた母の両手が包み込ん
でいた。
「お、お母さん?」
「・・・は九歳だよね。お母さんはまだまだだったのに、最
近の子は成長早いのねぇ」
泡だったボディソープに包まれた母の手のひらが、わずか
に膨らみかけた少女の胸を優しくなでる。泡のぬめりが敏感
な肌を刺激し、少女に不思議な感触をもたらす。
「ゃぁん、なに、するの?」
「何って、洗っているのよ。お母さんも、この頃はタオルと
かでも痛くて、手のひらで洗っていたのよね」
ごく真っ当に答える母。鏡に映る母の顔は、ふざけた様子
もからかう様子も見受けられず、少女が何を驚いているのか
不思議そうですらある。
「でも、わたし、んんっ」
確かに母の言うことは分かるが、昨日だってボディタオル
で普通に洗っていたくらいで、少女は気になるほどのものは
感じていない。まだ母の手の方が刺激が強いくらいだ。
「・・・、洗い辛いから動かないで」
「うぅ、うん……」
思わず返事をしてしまった少女だが、この未知の刺激に動
かないでいるのは辛い。少女は目をつむり、膝の上で両手を
きつく握り締める。
母の手の動く範囲が少しずつ広がって行く。腋の下から鎖
骨、鳩尾の辺りまで。そしてどこまで行っても、必ず指のど
れかが淡い色の小さな乳輪を押さえる。あくまでも母の指は
少女に強い刺激や痛みを与えぬよう、御菓子を作る時のよう
に優しく繊細に動く。
(ヘンな感じ、これ、何なの?)
白い肌との境目がはっきりしないほど淡い色の小さな乳輪、
その中央にあるさらに小さな米粒ほどの乳頭。それは少女自
身がはっきりと自覚できるほど、固く充血していた。母の指
先がそこを通り過ぎるたび、そこから痺れるような、むず痒
いような、不思議な感覚が沸き上がり、少女をいたたまれな
い気持ちにさせる。
(ガマンできないよぉ)
声が出てしまいそうで、出してはいけないと、歯を食いし
ばって我慢する。
しかし、呼び名を知らぬ感覚を我慢するには少女は幼すぎた。
ただ我慢するだけでは息苦しくてこらえ切れず、少女は母の
腕を振りほどこうとした、その時。
「はい、こっちは終わり。くすぐったかった?」
タイミングよく、母は少女の胸から手を放した。解放され
た少女は息絶えだえでぐったりし、後ろに座っている母の胸
にもたれかかる。
「もしかして息も我慢してたの? 苦しかったら言わないと
分からないわよ」
母は背中の泡で滑り落ちそうな少女を抱き寄せ、腹に手を
回して少女を支えた。
「はっ、はぁ、はぁ、で、でもぉ」
少女の背中には大きくて柔らかいものが二つ、強い存在感
で当たっている。その中心に少し固い感触があった。少女は
目を開け、自分の胸を見下ろす。泡まみれの胸から、片方だ
け先端が顔を出している。母のとは比べ物にならないくらい
小さく幼い乳首。それでもそれは、小さいなりに精一杯大き
くなり、自己主張している。もう母の手はそこに触れられて
いないのに、見ているだけで触れられていた時の感覚がよみ
がえり、じっとしていられなくなる。
(お母さんも、こうなるのかな?)
それはさすがに気恥ずかしくて、口に出すことはできない。
少女は幼くても幼いなりに、分からなくてもそれがそういう
ものなのだと、薄々理解しはじめている。だから、自分で自
分のうずく胸を触ってみたい気持ちがあっても、それはいけ
ないと自然にブレーキがかかっていた。
「・・・、まだここも残っているのよ」
母が少女の腹に回した手でボディタオルを絞り、少女の股
間に泡を垂らす。まだ大人の毛が生える気配もないそこだが、
ほとんどの泡が流れ落ちてしまうなか、産毛に引っ掛かった
泡が少しだけそこを隠す。
「そこはいいよ、自分でするから」
さすがに下腹部を洗ってもらうのは抵抗があった。病気や
怪我で仕方がない時ならともかく、胸のこともあって少女の
羞恥心は一際大きくなっている。
「・・・はちゃんと洗っている?」
「洗ってるよ!」
「きれいに全部?」
「うん、全部」
鏡に映る母の顔は、少しからかう雰囲気がある。かちんと
まではいかないが、そう言われるのは不本意だと少女はきっ
ぱり言い切った。
「なら、お母さんに洗ってみせて」
「えっ?」
驚いて振り向いた少女の頬を、泡のついた母の指がつつい
た。
「ちゃんと洗えていなかったら、お母さんが洗うからね。い
い?」
「う、うん」
洗うところをじっくり見られるのも恥ずかしいし、確かめ
られるのはもっとだ。だが、少女の中で母に強く言ったこと
を後悔する気持ちが膨らんでいた。それは口答えと言うほど
ではないが、わがままをしないと決めた少女にはいきなりの
失敗だった。
「なら、はい、タオル」
少女は母からボディタオルを受け取り、ボディソープを追
加して泡立てた。
母は少女の顔の横から、のぞき込むように顔を乗り出す。さ
らに母の胸が少女の背中に押し付けられ、なぜかドキドキし
てしまう。
「じ、じゃぁ、洗うね」
少女はおずおずと足を開き、そこにタオルを持つ手を入れ
る。
最初は内股から足の付け根を洗う。普段と同じことをする
だけなのに、とても緊張する。いつも一緒に風呂に入ってい
ても、こんなにまじまじと見られることはない。ましてやそ
こは少女の一番恥ずかしいところで、きれいに洗えていなけ
れば母に洗われてしまう。少女としては、それは避けたかっ
た。
(それはちょっと、恥ずかしいかな、と)
ゴシゴシと念入りに、いつもより丁寧に。そして。
「…………」
少女は手を止め、ちらっと鏡を見る。少女を暖かく見守る
母の顔。少女がどう洗うのかをじっと見ている。逃げたくな
るが、しっかり両肩をつかまれているし、浴室の広さなどた
かが知れている。あきらめて再び手を動かしはじめた。
女の子の一番大事なところ。そこはさすがにゴシゴシとは
洗えない。優しく撫でるようにして、足の間を目の細かいボ
ディタオルでこする。発毛の気配すらない前のわずかな隆起
から、少し腰を浮かせて後ろの白桃の谷間まで。痛くならず、
こすり過ぎで赤く張れない程度に。でも汚れが残らないよう
に。