「……ふぅ」
とりあえず便座横のセンサーに手をかざして水を流した。
この館の主人が主人だけに、この手の機械類は充実してい
た。センサーの他にもビデやら何やらのボタンが付いている
が、少女はどれも使ったことが無かった。自宅に無いのもあっ
たが、初潮もまだどころかよく分かっていないし、洗浄も何
となく痔の人が使うイメージがあったからだ。
「う、ちょっと遠いかも」
少女はトイレットペーパーに手を伸ばすが、あと少しでと
どかない。個室自体が広いこともあるが、ヒーターが組み込
んであるせいで便座の位置が高く、少女の足が注に浮いて安
定しないため、ちゃんと手が伸ばせないからだ。それでも少
女は便座の反対側をつかみ、思いっきり手を伸ばす。
ピッ、ブゥゥゥ。
「え、あれ?」
少女のお尻の下から、何か機械が動く音がした。その音は
すぐに止まるが、代わりに水が噴き出す音がし始める。どう
やらボタンのどれかを押してしまったらしかった。
「ぇ、ぇ、やん!」
あわてた少女が姿勢を戻すのと同時に、温かな水流が少女
の後ろの穴を穿つ。勢いはそう強くないものの、シャワーと
違う太い水流の感触に、少女は身を固くした。
「ぅぅっ…ぅぅ……ぅ……」
しばらくは慣れない感触に力みっぱなしだったが、小刻み
にぶれる水流が思っていたよりも不快ではなく、少女は握り
締めていた拳をゆるめた。水流は力がゆるまって開いた双丘
の谷間、窄まりの周囲やその中心を微妙な動きで優しく撫で
るように洗浄する。
(これって、ちょっと気持ちいいかも)
そこより前にあるの敏感なところを触るのに比べれば弱い
刺激だが、程よいこそばゆさが心地よかった。予想外の感じ
ですぐ止めるつもりだったのに手が動かず、何となくシャワ
ーを浴びるようなつもりでこのまま身を任せたくなる。お尻
がいいというのが少し後ろめたかったが、普通の生活習慣の
ものということもあり、イケナイことをしている感覚が弱かっ
た。
それでも少女は大切な待ち人のことを思い出し、操作パネ
ルの停止ボタンを押した。
ピッ……。
しかし水は止まらず、少女のお尻を刺激し続ける。少女は
あれっと首をかしげ、ふたたび停止ボタンを押した。
ピッ……。
音は鳴れど、まったく止まる気配がしない。少女の汚れを
落とそうと、トイレは丹念に水を吹き付け続けている。
「もしかして、故障だったり?」
そもそもトイレットペーパーを取ろうとした時につかんで
いたのは前座の部分で、操作パネルはその外側にあり、まっ
たく触りようがない。考えられることとしては接触不良で、
便座が揺れてスイッチが入ってしまった可能性があるが、そ
うだったとしても少女にどうこう出来るわけではない。AV
機器やゲームの類は強い少女だが、ハード的な故障となると
さすがに手が出ない。揺らしたり叩いたりすれば直るかもと
思っても、人様の家の物を勝手に叩いたりするほど少女の行
儀は悪くないのだ。
自分でどうにか出来なければ誰かにしてもらうしかない。
それには大声で呼ぶか、自分で呼びに行くかのどちらかだが、
今の状態で便座から離れれば服が濡れてしまうだろうし、ト
イレの中もびしょびしょになってしまう。しかも悪いことに、
トイレの床は高級そうな絨毯が敷き詰められていた。本当に
高いのか少女は分からないが、そんなことに関係なく汚して
しまうのには躊躇してしまう。
ならばノエルかファリンを大声で呼ぶしかないが、お風呂
ならともかくトイレで下半身丸出しの姿を見られるのはとて
も恥ずかしい。百歩譲って彼女らに見られるのは仕方がない
としても、兄や忍に知られたら顔を合わせられないかもしれ
ない。さらに少女の待ち人が帰って来たら……。
「ど、どうしよう……」
あまり良いことではないと分かっていたが、焦った少女は
停止ボタンを連打してしまう。
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ……ブゥゥゥ。
最初の時と同じ、何かが動く低い音。
「なおった!?」
少女はほっとして胸をなでおろした、が……。
「きゃっ!」
股間に強い衝撃。大事なところを指で弾かれたような、強
烈な刺激が少女を襲った。指ならばその瞬間だけだが、これ
はずっと続いて終わる気配がない。水流は止まったのではな
く、洗浄位置を変えたのでもない。もう一本、水流が増えた
のだ。
それは少女の一番敏感なところを直撃し、少女を悶えさせ
る。その動きはまるで、米粒ほどの大きさしかない幼いクリ
トリスを、肉付きの薄いスリットからほじり出そうとしてい
るかのようだった。水流は微妙に角度や強さを変えながら、
クリトリスを守る包皮をめくろうとする。
「ひゃ……ゃ…やめ……て……」
許しを請うても、ただの機械には届かない。少女は吹き飛
ばされそうな意識を振り絞り、少なくとも当たる場所をそら
そうと便座に両手を付いて痺れっぱなしの下半身をずらした。
「…ん…んんっ……ふぅ」
まだ敏感なところに当たっているものの、直接当たらなく
なっただけでもだいぶ負担は軽くなった。
(何なんだろ、これ。早くしないとすずかちゃんとアリサちゃ
んが帰ってきちゃう)
もう呼ぶしかないと、少女は腹をくくる。あとで笑い話に
されても、こんなことで二人と会える時間を減らしたくない。
それに少し余裕が出来てしまったことで、少女は感じてきて
しまっていた。長引けばどうなるかを考えると背筋を冷たい
ものが流れ落ち、そして下腹部の奥深くがじんわりと熱くなっ
た。
少女がいるトイレから皆がいる部屋までは結構離れている。
そこまでにはいくつか扉があるし、月村家は広さの割に住人
が少なく、たまたま誰かが通りかかるのは期待できない。か
なり大きな声を出さなければと、少女は思いっきり息を吸い
込んだ。
「すぅぅ……きゃぁぁっ!!」
またもや不意打ちだった。少女の隙をつくように、水流が
向きを変えて少女の敏感なところを襲う。予想外のことに、
一瞬視界が真っ白になるほどだった。
「……ゃ…な、なんで……?」
問いただしても、機械は答えてくれない。少女は動揺を押
さえ、震える腕の力を振り絞って水流から逃れようと腰を動
かす。
「ぁっ…ぅそ……そんな……ぁぁっ」
少女が逃れられたのは一瞬だけだった。ほっとする間もな
く低い振動音が響き、ふたたび水流が牙をむく。
「…ゃ…ゃ…ぃゃ……」
広くない便座の上でも、小さな少女の体では動ける範囲は
限られる。その中で懸命に逃げ回っても、水流はそのたびに
少女を追いかける。反応もどんどん早くなり、ついには完全
に追随して少女の逃げ場を奪ってしまう。
「ゃっ…ゃぁ…やだ……ゃぁっ」
水流の正確さは何かしらのセンサーだろうが、恐慌に陥っ
た少女はもっと得体の知れぬものに股間を覗かれているよう
に感じてしまう。下手に下が見えないだけに、目玉のついた
ノズルがうねうねととぐろを巻いているような、おぞましい
ものを想像してさらなる恐怖をつのらせてしまった。
「……ぃゃ……ゃ…やめ…ゃ…ゃめてぇ…」
少女は半泣きになりながら、操作パネルのボタンを目茶苦
茶に押しはじめる。本来は気丈な少女だが、度重なることが
少女から余裕を奪っていた。このような状態であれば、便座
から離れて室内を水浸しにしても誰も責めないであろう。だ
が、すでにそんなことにも頭が回らなくなっていた。
「やだ、ぃや、ゃ、いゃっ、やっ!」
ついに少女は思いっきりパネルを叩いた。
ピーッ。
かん高い音が鳴り、水流が止まる。
「……ぁ……ぇ……ぇ?」
本当に止まったのか、先程のこともあって少女は半信半疑
だった。だが今のうちにと少女は体を動かす。
「ぅぅっ」
ずっと座っていたことと今までの刺激で、少女の下半身は
痺れてしまっていた。ほんの少し動かすだけでも激しい痛み
を感じ、少女は悶絶してしまう。
ブゥゥゥ。
それを狙いすましたかのように、ふたたび低い機械音が響
く。
「ひっ!」
何とか逃れようと、少女は懸命に体を動かす。しかし麻痺
した下半身は重く、きつい痛みで思うように動かない。カタ
ツムリにすら負けそうな歩みに、無情にも水が吹きこぼれる
音が少女に迫る。
「た、たす……んっっ!!」
声にならない悲鳴。幾多もの水流が少女の股間に襲いかか
る。後ろの恥ずかしい穴にも、前の一番敏感なところにも、
そして少女の一番大事なところにも。
「…っ……ぅ…ん……んっ!」
もう何本の水流が当てっているのか分からない。それぞれ
が微妙な動きで少女を刺激し、無理やり快感を与えようとし
ている。
(やだ、誰か助けて!)
自分の指でも大好きな母の指でもない得体の知れぬ水流の
指は、たとえ快感があっても恐怖でしかない。それは、幼い
少女にはあまりにも酷なことだった。
トントン。
水流の音に交じり、扉を叩く音がする。
「あの、大丈夫ですか?」
昨日か一昨日にも聞いていたはずなのに、とても懐かしく
感じる声。少女の大切な親友の一人、月村すずかの声。
「……す…っ……ぅ…く……」
ただ、すずかの声を聞いただけで胸が一杯になり、返事を
することができない。
「やっぱり具合が悪いのよ。私が待っているから、早くノエ
ルを呼ぼう」
誰かが立ち去る気配と、新たな少女の声。もう一人の親友、
アリサ・バニングス。
扉がガタガタと揺れる。開けようとしているようだが、錠
のあるしっかりしたカギのため、子供の力ではどうにもなら
ない。
「だめ、やっぱり開かない……。がんばって、もうすぐ大人
の人がくるから!」
様子のおかしい少女を気遣い、励ますアリサの声。
(アリサちゃん、すずかちゃん……)
恥ずかしい姿を見られたくないと思っていた二人が、少女
をまっさきに見つけて助けてくれる。少女の頬を涙が伝う。
辛い涙じゃなく、感極まった嬉し涙。
「…ぁ………っ……んっ」
もう大丈夫。少女は目を閉じ、静かに助けを待つ。口を開
けば喘ぎ声しか出ないし、もう少女にできるのは二人と会え
るのを待つだけ。
相変わらず水流の激しい愛撫は続き、少女に強制的な快感
を押し付けている。どれだけの快感でも、無理強いなら嫌悪
しかない。だが、これも二人と会うための試練と考えると、
少し受け入れられそうな気がした。
「……ゃっ……ぁ……」
一番敏感なところは指で弾かれているようで痛いし、一番
大事なところは無理やりスリットを開けさせられる感じで怖
い。でも後ろの恥ずかしい穴は、水が中に染み込んだり出た
りする感じが排泄時の心地よさみたいで、そこで感じてしま
うのが恥ずかしい。アリサがドア一つ隔てたところで少女に
話しかけたりドアを叩いて励ましてくれているのに、恥ずか
しいところで感じてしまっているのはとても悪い気がしてし
まう。しかしアリサの声が少女の胸を熱くさせ、少女を高ぶ
らせているのも事実だった。
「んっ…っ…ぁ…ゃ…ゃっ…ぁっ…んんっ」
そろそろ少女も限界が近づいていた。成熟した女性でも、
精神的に乗れなければ体が感じていても絶頂感を得るのは難
しい。少女だけであればただ体力を消耗し、いずれ倒れてし
まうだけだったろう。しかしありさとすずか、二人の存在が
少女の心に安心感をもたらし、緩んだ心を高みへと運んでい
く。
「ゃぁ、ぁっ、ぁ、ぁ、ゃっ、ぁぁっ」
頭の中が真っ白になりそうな少女の耳に、遠くから近づい
てくる駆け足の音が聞こえる。化粧室の扉を開く大きな音が
し、一足飛びに目の前の扉が叩かれる。
「・・・、大丈夫か!?」
ほとんど聞いたことがない逼迫した兄の声。「カギがかかっ
ているの」とアリサの声が聞こえたかと思うと、目の前でガ
ンッガシッと大きな音が鳴る。
少女が目を開けると、カギを壊されて開いた扉、もぎ取っ
たドアノブをもつ心配げな兄、追いついてきたノエルが見え
る。そして、金髪碧眼の気の強そうな少女と長い髪をカチュ
ーシャで止めたおとなしげな少女。
「……っっ!」
少女はアリサとすずかに笑顔を見せようとし、そのまま絶
頂を向かえて気を失った。