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[212](1/7)549 ◆51nyTkmf/g 2005/06/05(日) 16:59:03 ID:5Vg+0Cd5
[213](2/7)549 ◆51nyTkmf/g 2005/06/05(日) 16:59:38 ID:5Vg+0Cd5
[214](3/7)549 ◆51nyTkmf/g 2005/06/05(日) 17:00:20 ID:5Vg+0Cd5
[215](4/7)549 ◆51nyTkmf/g 2005/06/05(日) 17:01:02 ID:5Vg+0Cd5
[216](5/7)549 ◆51nyTkmf/g 2005/06/05(日) 17:01:48 ID:5Vg+0Cd5
[217](6/7)549 ◆51nyTkmf/g 2005/06/05(日) 17:02:38 ID:5Vg+0Cd5
[218](7/7)549 ◆51nyTkmf/g 2005/06/05(日) 17:03:20 ID:5Vg+0Cd5

Call my name! (17)アリサとすずか

「あの……」
「何? ・・・ちゃん」
「いえ、何でもないです」
 兄に支えられて頭をぶつけたりはしなかったが、服は水浸
しになってしまった。とりあえず服は急いで洗ってもらい、
その間に風呂を借りて軽くシャワーを浴びたところだった。
 服が乾くまでまだ時間がかかるからとファリンが着替えを
もってきてくれたのだが、それはバスローブ一枚だけだった。
内側に「すずか」と刺繍がされていて、ふわふわして暖かそ
うだったが、普段着る習慣がないので少女は困惑する。ファ
リンが気を利かせて着せてくれたが、少女が困ったのは着方
ではなく、バスローブ一枚しかないことだった。旅行で着る
浴衣は下着を履くが、バスローブはどうなのだろうと少女は
悩む。バスローブはすずかのもので、ファリンが着せてくれ
たのだから合っているのだろうが、この格好で二人に会うの
は恥ずかしかった。
(でも、もっと恥ずかしいところ見られちゃったし)
 学校で一緒にトイレに行っても個室は別々だし、少年と違っ
て外で一緒にすることはない。している最中じゃないとして
も、様子が変だったのは分かるだろう。子供の二人は別にし
ても、ノエルや忍は少女がどんな状態か理解していた。
(大人の人って、みんなそうなのかな……)
 トイレの機械は忍用ので誤動作したと平謝りされたが、恥
ずかしすぎて何も知らされない方が良かったと思うくらいだっ
た。少女をすずかの部屋に案内するファリンの後ろ姿からは、
その手のことはうかがえない。ファリンより年上の少女の姉
も同じだ。ノエルは普段どおり驚くことでもないという感じ
で、少女の兄は気まずそうだった。少女は今までそんなこと
考えたことがなかったが、昨日から自分に起きていることが
何なのか知りたくて、色々と考えてしまう。
「・・・ちゃん、二人とも中で待っているからね」
「……ぁ、はい」
 気が付くと、もうすずかの部屋の前まで来ていた。少女は
ファリンにお礼を言い、彼女が開けてくれた扉の中に入った。
「…………?」
 少女の部屋の数倍はあるすずかの部屋には誰もいなかった。
部屋の明かりは点いているが、よく三人でゲームをするテレ
ビは消されているし、ゲーム機もしまわれたままだ。
「あの……」
 後ろを振り向くと、もう扉は閉められていてファリンはい
ない。明るいはずの部屋が暗くなり、室温も急に寒くなった
気がして、少女はギュッと自分の体を抱き締める。
(二人とも、どこにいったのかな)
 アリサもすずかもファリンも突然消えてしまい、屋敷のど
こかにいるはずの兄達だけでなく、世界中の誰も彼もが少女
を残して消えてしまったような、そんな悪夢が少女の脳裏に
浮かぶ。
 何度部屋を見回しても誰もいない。いくら広いとは言え、
見渡せないほどではないし、隠れている様子も感じられなかっ
た。
(なんで……わたし、なにをしたの?)
 鼻の奥がツンとして目が潤む。二人が悪戯をしているとは
思えない。ならば何かあったのか。二人は無事なのだろうか。
ただ少女だけが消えただけで、少女のいない世界で何事もな
くすごしているならいいが、二人も少女と同じ目にあってい
ることはないのだろうか。
(そんなの、だめ!)
 例えそうだとしても、自分のことさえままならない少女に
助けるすべなどない。それでも二人がこんな辛いことに陥っ
ているなら、自分のことを差し置いても助けたい、その辛さ
が分かるゆえに。
「……?」
 何か音がした気配があった。一度深呼吸をし、心を落ち着
かせて部屋の中を確認する。運動は苦手でも、そのようなと
ころは父の血を引いているのだろう。
 テーブル、テレビ、ソファー、窓、特に何もない。が、部
屋にあるもう一つの扉が少女の目に入る。すずかの寝室への
扉だ。少しだけ開いていて、中が明るいのが見て取れた。な
ぜ気が付かなかったのか一瞬訝しむが、そんなことはすぐに
うっちゃって扉に駆け寄った。
「すず…か……ちゃん………?」
 扉を開けた少女は、中を見てそのまま固まった。

 部屋の一角を占める天井付きの豪華なベッド。上には大き
なクッションがいくつも置かれ、二人はその中にいた。いた
のだが、少女は二人の様子に絶句する。
(え? えと、えぇ?)
 すずかはTシャツ一枚という格好だった。学校から帰って
きて着替えている途中なのかもしれないが、なぜかアリサも
スリップ姿になっている。アリサもすずかに服を借りて着替
え中だったのかもしれない。少女らは学校の制服を気に入っ
ているが、やはり私服に比べれば何かと堅苦しくなるものだ。
だが、少女が驚いたのはそんなことではなかった。
 アリサとすずかは向き合うように寄り添い、互いに顔を近
づけあい、ある一点で接触していた。小さな唇が互いについ
ばむように触れ合い、少しだけ突き出された桃色の舌が相手
の唇をなめ、舌先をからめあう。
(き、きす?)
 ハーフであるアリサなら、多少はそうゆうスキンシップを
するかもしれないが、今の二人の行為はそんなレベルではな
い。昨夜の両親ほど激しくはないが、それに近いものがある。
 二人の顔が離れ、二つの舌の間を透明な糸が伸びる。それ
を舌でなめ切った二人は、何事もなかったかのように少女の
方を向いた。
「いらっしゃい、・・・ちゃん」
「はい、・・・はここね」
 アリサはすずかとの間を少し開け、新たなクッションを置
いてポンポン叩く。
「……あ、うん」
 我に返った少女は部屋に入り、二人の下に行く。ベッドの
上の二人は下着姿というぐらいで、少女のよく知るアリサと
すずかだった。その下着も見覚えがあり、特におかしいとこ
ろはないように見える。
(って、え?)
 おかしいところはあった。二人の後ろから、毛深く長いも
のが伸びている。尻尾だ。すずかには白い猫の尻尾、アリサ
のはふさふさした大型犬のもの。モーターでも入っているの
か、時折り本物のように動いた。
「・・・ちゃん、どうしたの?」
「ぇ、ううん、何でもない」
 首をかしげるすずかに首を振り、少女はスリッパを脱いで
ベッドに乗った。クッションに座ると、少女の左右に二人が
くる二等辺三角形のようにな位置関係になる。少し話づらそ
うな位置だが、ちょうど正面に大きな液晶テレビがあるので、
ゲームかビデオでも見るのだろうと納得した。
「・・・って、記憶喪失って聞いたけど、でも私達のこと知っ
ているんだよね?」
「うん。これが記憶喪失って言うのか分からないけど、名前
と、いくつか思い出せないことがあるの」
 アリサの問いに少女は答える。何か大切な、大事なことが
分からない。何が分からないかさえ不明なのが、とても辛い。
「でも、お母さんやお父さん、お兄ちゃんもお姉ちゃんも、
ちゃんと覚えているの。アリサちゃんとすずかちゃんのこと
も。二人とも、わたしの大切な、大事なお友達だから」
 少女は一呼吸おいて、「わたしって、変かな」と付け足し
た。
「ごめんなさい、・・・ちゃん。やっぱり・・・ちゃんのこ
とは分からないけど、でも変だなんてそんなことないよ」
「私もウソとかついているとは思えない。だって・・・、と
ても辛そうだから」
 すずかの言葉にアリサが付け足す。
「それに、あまり初めて会った感じがしないのよね」
「うん。三人でいるのに違和感がないというか、三人でいる
方がしっくりするような」
 二人の言葉に、少女の胸はじんっと熱くなる。大丈夫だと
思っていても、それは少女の思い込みだけで、何の確証も保
証もなかった。だが実際は、少女の思っていた以上だった。
「ありさちゃん、すずか、ちゃん……あ、あり…ぁ…ぅ、ぐ
すっ……」
 思いは言葉にならず、熱い涙となって頬を伝う。
「ほら、・・・。泣かないの」
「大丈夫、わたし達は友達だよ」
 アリサとすずかが、少女の涙を優しくなめ取った。

「なに、私ってそんないやな子だって言うの」
「アリサちゃんってば、そんなこと・・・ちゃんは言ってな
いよ」
 学校のこととか、三人が仲良くなるきっかけのことを少女
は二人に話す。似たようなことは二人にもあり、どれも少女
がいないことが違っていた。それでも二人が少女のことを気
遣っているのもあり、三人の話は弾む。会うまでは色々と恥
ずかしいとか心配事もあったが、既にそんなことはどうでも
よくなっていた。
(でも、あれって……)
 尻尾のこととか、少女が部屋に入る前にしていたこととか。
ちょっと微妙すぎて聞いていいのかどうか悩む。下手に聞い
て、今の雰囲気が壊れてしまうのも嫌だった。
「そうだ、すずか。そろそろじゃないの?」
「あ、もう始まっているかも」
 すずかはクッションの山からテレビのリモコンを探す。
「そろそろって?」
「見てのお楽しみ。でも・・・はよく見ているんじゃない?」
 少女の疑問にアリサはよく分からないことを返す。この時
間に放送している番組はドラマの再放送かワイドショーぐら
いだが、どれも少女は視ていない。アリサが何か勘違いして
いるのではと思ったが、視れば分かるだろうと待つことにし
た。
「あ、あった。はいっ」
 すずかがリモコンでテレビの電源を入れる。ピッと音が鳴っ
て画面が明るくなり、何かよく分からないものが画面に映る。
黒と白と赤と、何かぐちょぐちょと動いていて、画面通りに
ぐちょぐちょした音がスピーカーから聞こえる。
「やっぱり始まってたか」
「……?」
 二人は何が映っているのか分かっているようだが、少女に
は何が何やら全く分からない。何なのか聞こうとすると、画
面に大きな動きが出る。どうやら超近接で撮影していたらし
く、一気にレンズが引いて広角に切り替わる。
「え、お兄ちゃん!」
 テレビには少女の兄と忍が映っている。そして、二人とも
全裸だった。


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