テーブルに両手をつき、お尻を後ろに突き出している忍。
少女の兄は忍の腰をつかみ、自らの腰を激しく打ち付けてい
る。パシッ、パシッとぶつかり合う肉体が軽快なリズムを刻
み、スピーカーを通して少女の耳に響く。少女の頭ほどもあ
る大きな忍の胸は痛くないのかと思うほど激しく揺れ、した
たり落ちる汗が飛び散った。
(お兄ちゃん、忍さんと……でも、なんで?)
二人ともまだ十代とは言え、少女から見れば十分大人であ
る。恋人となればキスの一つや二つしているだろうし、もし
かしたらと少女も思ってはいた。だが実際にそれを目の当た
りにしてしまうと、ある意味していて当たり前である両親に
比べて、ストイックな感じの強い兄であるがゆえにショック
が大きい。
そして、それよりも。
「うわぁ、恭也さん激しい」
「うん、お姉ちゃんも気持ち良さそう」
少女にぴったりと寄り添うアリサとすずかは、画面を見な
がらさも当たり前のように感想を述べ合っている。その様子
はテレビでスポーツ観線でもしているようで、少し驚いては
いて少女のとは全く異なっていた。
「あ、あの……これって?」
「わたしのお姉ちゃんだけど」
「・・・のお兄ちゃんでしょ」
これは何かとテレビを指さす少女に、分かり切ったことを
何で聞くのかと、すずかかは不思議そうに、アリサは呆れた
ふうに答える。
画面はアングルが変わり、ふたたび兄と忍の結合部分がク
ローズアップされた。母より量は少ないがきれいに生い茂っ
た忍の秘部は、汗とわき出た愛液で猥らに濡れている。そこ
に赤黒く太長いペニスが出入りするのはまるで手品のようで、
少女は目を離すことができなかった。
「そうじゃなくて、こうゆうの、のぞき見はだめじゃないか
なって」
目を閉じるのも逸らすこともできない自分では、言っても
説得力が無いと思いつつも少女は注意の言葉を口にした。
「ううん、・・・ちゃん大丈夫だよ。お姉ちゃんが後学のた
めに見ておきなさいって言っているんだから」
「というより、忍さんは見られている方が興奮するんだって。
これ撮っているのもノエルだし」
「えっ、そうなの?」
さすがに驚いて左右の二人を見るが、二人とも笑って「そ
うそう」とか「平気平気」と言うだけで、子供が見てはいけ
ないものとの認識は全く感じられない。そんな二人に戸惑い
つつも、少女は新たな疑問を口にした。
「お兄ちゃんは知っているの?」
「どうなのかな、お姉ちゃんのことだから言っていないかも」
すずかが口に指をあて、考えながら答えた。
「そんな……ひどいよ」
少女はよく分からないなりにも、これは個人的なもので他
人が勝手に見ていいものではないと思っている。少女も昨夜
両親のを見てしまったことは、見ずから慰めたことと同じく
らい悪いことだと後悔しているくらいだ。
「でも、恭也さんなら気が付いているんじゃないかな?
・・・の家ってものすごい武術の家系なんでしょ」
「お兄ちゃんとかはそうだけど……」
高町家というより父方の不破家はその通りだが、少女自身
はからっきし駄目だった。父や兄、姉の本気の稽古は怖くて
見ることができないくらいで、すごいとは思っているがどこ
までなのかまったく分からない。
「・・・は家でいくらでも恭也さんのを見られるけど、私達
は見られないんだからいいでしょ?」
アリサがねだるように脇腹をつつくので、少女は身をよじっ
て逃げた。
「きゃ、お、お兄ちゃんのは、見てないよ」
「……ふーん、のは? のは? のは?」
意地悪そうな顔をして、少女を前から見上げるアリサ。さ
らに少女が逃げないよう、両手をつかんでしまう。
「のはって……えっ、・・・ちゃん誰のを見たの?」
すずかも興味津々とばかりに、少女の肩をゆさぶった。
「えと、それはその……」
右にはすずか、左にはアリサ、そして前は兄と忍が映るテ
レビ画面で、体も視線も逃げる場所がない。ウソをつくのは
嫌だが手頃な言い訳も思いつかず、少女はあきらめてため息
をついた。
「お父さんと、お母さん……」
それを聞いた二人は少女を解放し、目を丸くする。
「・・・ちゃん、いいなぁ」
「ねぇ、どうだった?」
「どうって……」
どうと言われて少女は困った。そう聞かれれば、どうして
も昨夜のことを思い出してしまう。
(お母さん、気持ち良さそうで……きれいで……幸せそうだっ
た……)
それは少女が少しさみしくなってしまうほどの、愛し合う
夫婦の濃密な時間。人に話すべきではない個人的な行為だが、
素晴らしくて誇れることではないだろうか。
「……すごかった……すごくて……」
アリサとすずかは両手を胸の前でギュッと握り、少女の言
葉を一言も聞き漏らさないよう耳を傾ける。
「お母さん……きれいで……」
「気持ち良さそうで……」
「とても……幸せそうだった……」
ただそれだけを言うだけで、少女の胸はうれしくて温かく
なる。今は辛いことが色々とあるが、大好きな家族が幸せな
らば、やはりそれは少女にとっても幸せなのだ。
「わぁ……」
少女の思いが伝染したのか、アリサとすずかもうっとりと
ため息をついた。
「・・・のご両親はラブラブなんだね」
「好きな人だから気持ちよくて幸せなんだって、お姉ちゃん
が言ってた」
少女達はテレビを振り返る。
画面には、テーブルの上に横たえられた忍が映っている。
たわわな乳房は存在感を示すようにツンと上を向き、それに
少女の兄がむしゃぶりついていた。忍は兄の頭を優しく抱え、
すすり泣くように兄の名を呼び続ける。幸せで感極まった忍
の顔。流れ落ちる涙は、悲しみじゃ泣く喜びの涙。
「・・・ちゃんを困らせたあの機械。ごめんね、取り外し忘
れてたみたい。それで、あれはお姉ちゃんのなんだけど、恭
也さんと仲良くなってから一度も使ってないんだって」
「絶対好きな人にしてもらった方が気持ちいいよ。あれって
気持ちいいのかもしれないけど、何か冷たそうじゃない?
さみしくて空しくなりそうだよね」
アリサが腕を組んで力説する。実際にそれを体感した少女
はその意見にうんうんとうなずいた。あれは当人がどうであ
ろうと、ただ強制的に快感を得るだけのもの、そんなものに
少女が両親に感じたような憧れや何やらはまったくない。
(お兄ちゃんも、幸せそう……)
こんな時でさえ、あまり表情が表にでない兄。それでも少
女には、母と一緒にいる時の父の顔に似たものが感じられた。
もし兄が忍と結婚したら父のようになるのならば、人を好き
になるのはとてもすごいことなのだと少女は思う。
「きっと、お兄ちゃんも忍さんと一緒だよ」
いつか少女も母や忍のように誰かを好きになるのかもしれ
ないが、まだ漠然としていて実感がわかない。少女でさえさ
わったら気持ち良さそうに思えるたわわな胸はないし、兄や
父のあんな巨大なものが自分の中に入るなんて想像もつかず、
やはり子供には早すぎることを考え過ぎているのではと少女
は思う。やはりウエディングドレスとは異なって、幼い少女
に性のことは生々しいのだろう。
「ねぇ、・・・」
兄と忍の姿に見取れていた少女の腕を、アリサが自分の胸
に抱きかかえた。ハーフ故か、わずかながら胸が膨らみはじ
めているのが感じられ、なぜか赤面してしまう。だが、アリ
サは少女の耳に口を寄せ、さらに赤くなってしまうようなこ
とをささやいた。
「キスしていい?」