(あれ、どこだっけ?)
白い清潔感のある天井。確か風呂に入っていたはずだが、
その天井は自宅のものではなく、翠屋や友人の部屋、学校の
教室の天井でもない、少女の知らぬ部屋のもの。
(あたたかい……)
それにつつまれているかぎり何も心配することはない。そ
う思わせるほど少女を優しくつつみこむぬくもり。それがと
ても嬉しくて、幸せで、思わず頬が緩む。
「あ、笑った! おかーさん、笑ったよ!」
同じ年くらいのメガネをかけた女の子と、無愛想な顔の少
し年上の男の子が少女をのぞき込む。どこかで聞いたことが
ある声、どこかで見たことがある顔。しかし少女のクラスに
も近所にもいない子供たち。
「美由希、恭也、赤ちゃんが驚いてるじゃないか」
男の子によく似た背の高い男が子供たちを下がらせる。そ
れは少女がとてもよく知る人物だった。
(おとうさん? それじゃ、みゆき、きょうや……って?)
少し若い感じもするが少女が自分の父を間違えるはずもな
く、子供たちもアルバムの写真に写っていた幼いころの兄や
姉そのもので。
「はいはい、大丈夫よ。私の可愛い赤ちゃん!」
そっと抱き上げられる少女の身体。目の前には大好きな大
好きな少女の母。
(おかあさん……わたし…わたしは……)
何か色々なことあり、悲しく辛いことで涙を流した。だが、
それは赤ん坊がかいま見た夢だったのか。それがどんなこと
だったのか思い出せない。いまわかるのは母のぬくもりのみ。
「あらあら、どうしたの? そっか、お腹が空いたのね」
着衣の紐をほどく音。驚く兄。からかう父。不思議がる姉。
見えなくても判る家族の風景。
そして、少女の視界は白くて大きな乳房にふさがれ、口に
はコリコリした乳首があてがわれる。少女はためらいもなく、
幼子の本能で命の滴を求めた。
(…おいしい……)
吸う度に甘い味が口の中にひろがり、温かい母の愛が胃の
中を満たす。どれほど吸っても絶えることなく、飽きること
なく、ただただ母を求めて。怖い夢を忘れたくて、暗い穴を
埋めたくて、離したら永遠に無くしそうで、そこがただ一つ
のつながりに感じて、歯の生えそろわぬ歯茎で懸命にくわえ
込んで。
「あぁぁっ」
(あれ、どこだっけ?)
蕩けるような嬌声。はっとして目を開けると、そこは白い
壁。顔をつつむ柔らかなもの。心安らぐかぎなれた匂い。ゆっ
たり揺れる身体。口の中の弾力ある感触。
「おはよう、・・・」
恐る恐る上を見ると、上気した顔に笑みを浮かべた母の顔。
バスローブは羽織っているもののはだけられ、首元から少女
の目の前まで白い肌がつづいている。
「ふぇぇぇっ?」
驚いた声で解放された乳房がぷるんと揺れる。その頂は歯
型の形に赤くなり、唾液で濡れて光っていた。
(わたし、えと…ゆめ……あっち…が?)
呆然とする少女の頭を後ろから大きな手がなでる。体を起
こして振り返ると、同じようにバスローブをまとった父のに
こやかな顔。
「ははは、そんなにお腹が空いていたのかな。赤ちゃんみた
いだったよ」
みたいではなく、夢の中では本当に赤ん坊になっていた。
穏やかで幸せな夢。今が悪い夢だと思ってしまうような夢。
こんな自分を受け入れてくれる家族がいるのにと、少女は申
し訳なくて縮こまる。
「その、おと…ぇ…え?」
感謝の気持ちを伝えようとした少女は、初めて自分がおか
れている状態に気が付く。
「ん?」
「な、なんでも……」
居間のソファーに深く腰掛ける母。バスローブを着せられ
て母にまたがる少女。その後ろに膝立つ父は母の足を抱え、
ゆっくりと体を動かしている。そうと知ると上気した母の顔
もとても艶やかに見え、何だか恥ずかしくて顔を合わせられ
ない。
(いま、してるんだ……)
少女の身体の下で父と母がつながっている。昨夜垣間見た
行為が、すぐ下で行われている。あの大きなものが、母の熱
いあそこに入っている。
(な、なんで、してるんでしょうか……)
いつまでたっても新婚ほやほやな両親。キスぐらいは日常
茶飯事で、仲が悪いよりは良い方いいと思っていても、目の
前でここまでされると少女もどうしたらいいか反応に困る。
「そだ、お腹空いてない? ・・・がのぼせて寝ちゃったか
ら、お母さんたちは先に食べちゃったんだけど」
言われてみれば確かに空いてはいるが、食欲はあまりなかっ
た。
「あまり食べたくないかも」
「そう。でも何か口にしないと体に悪いわ」
そう言われても、折り重なる疲労で少女の体は食事よりも
睡眠を欲していた。目の前にある母の豊かな胸を見ていると、
そのまま飛び込んで寝たくなるほどに。
「食べられないなら何か飲むだけでも……お母さんオッパイ
が出れば良かったんだけど」
少女が凝視している先をみて勘違いをしたのか、それとも
からかっているのか。自分の乳房を絞るようにしてみせる母。
指が沈み込んで歪む乳房はとても刺激的で、すごい恥ずかし
いのに目が離せない。
「そ、そんなじゃなくて……あ、お、お兄ちゃんとお姉ちゃ
んは?」
「二人なら道場で夜の稽古中だよ。まだしばらくは戻ってこ
ないんじゃないかな」
後ろから父の声。相変わらず母と一緒に少女の体は揺れて
いて、それにあわせて体内の珠がうごめく。たぶん姉が戻し
ておいてくれたのだろう。
「そうだ、別のミルクならすぐ用意できるし、それにしましょ
う」
「別の、ミルク?」
とても良いアイデアを思いついたと母は目を輝かしている
が、少女には何のことか見当がつかない。牛乳は冷蔵庫に常
備されているがホットミルクやミルクセーキとか調理した時
ぐらいしかミルクとは言わない。
「そ、お父さんのミルク」
「お父さんの……?」
少女の知識では、ミルクとは赤ん坊のいるお母さんのオッ
パイから出るもの。少女の母でさえでないのに、なぜ父から
ミルクが出るのか、母の言葉に少女は混乱するばかり。
「そうだ、あれは美容にもいいんだ。お母さんがあんなに綺
麗なのは、毎日お父さんのミルクをたくさん飲んでいるから
だぞ」
「もう、やだ、あなたってば」
なぜか最後にはおのろけになる両親に少女は戸惑うしかな
く。
「え、えと……?」
「お父さんのミルクはここからでるのよ」
少女と並んで床に座った母は、入れ替わってソファーに浅
く座る父を指さした。バスローブをはだけた父は傷だらけの
分厚い胸板や引き締まった腹筋があらわになり、股間から拳
を突き上げるように巨大な父のものがそそり立つ。兄のもの
と同じくらいの大きさだが、紫がかった黒い色は大人の力強
さを感じさせた。それがテカテカと濡れて輝く様は、ほんの
さっきまでそれが母の中に入っていた証拠であり、その生々
しさに目がくらみそうになる。
「準備はだいたいできてるから、少しなめてあげれば出てく
るわ」
「なめる?」
昨夜母が父にしたことを少女もするのか、していいのか。
戸惑う少女の肩を抱き、耳元にやさしくささやく。
「大丈夫、お母さんが一緒になめてあげるから」
その言葉が少女の迷いを吹き飛ばし、背中を後押しする。
「一緒に? ホント?」
「そうよ」
仲むずまじい両親がうらやましく、見ているだけなのが寂
しくて悲しくなった昨日の夜。でも今度は大好きな母と父と
一緒、疎外感を感じることはない。
(お母さんと、お父さんと、一緒に!)
少女の顔に浮かぶ笑顔は、瞳だけがギラギラと輝いて。