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[23]640 ◆x5RxBBX8.s 2006/02/23(木) 09:17:12 ID:mY9Er9zF
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魔法少女リリカルなのはA’s −変わりゆく二人の絆− 第六話 過ぎ去りし記憶と共に・前編

「広域結界、発生」

──彼女達の紡いだ言葉が発動の鍵となり、その足元に広がる床を、壁を、そして遺跡全体を結界が包んでいく。
それは不埒なる侵入者達を逃さぬよう、確実に仕留められるよう広げられた一種の檻。

「侵入者達と、その仲間を排除せよ」

彼女達は二手に別れ、それぞれの獲物の元へと向かう。
目的はいずれも同一に。たったひとつの目標のために。

「夜天の、主がために───」

と。




魔法少女リリカルなのはA’s −変わりゆく絆−

第六話 過ぎ去りし記憶と共に・前編




目の前には、一体の狼型使い魔。その身全てを砕かんと振り下ろすのは、鋼の色に光るハンマーヘッド。
紅の戦闘服に身を包んだ少女に気付き向き直る暇もなく蒼い毛並みの狼はボロ雑巾のように叩き落され、
魔力によって形成されたその身体を大気中へと霧散させていく。

「5つ!!次っ!!」

紅の鉄騎こと、鉄槌の騎士・ヴィータ。屠り去った敵を一々見ているヒマなどない。
次なる相手に向かうべく愛機・グラーフアイゼンを構えなおす彼女の周りには同型の個体がまだうようよといるのだ。
それこそ、手を伸ばせばすぐとどくと言わんばかりに。

「ザフィーラの格好なんかしやがって、てめーら一体何なんだよっ!!」

叫びとともにまた別の個体へと向かっていくヴィータ。
数が多い以上、カートリッジは使えない。すぐ息切れしてしまうのが目に見えているからだ。
そんな彼女からすこし離れた場所で、すぐ後ろに浮ぶ艦を守りながら武装局員達が狼の群れの相手をしている。

「武装隊の皆さんは三人ずつで一体を相手にして下さい!!撃ちもらしたんはうちとヴィータでなんとかしますから!!無理はせんといて!!」
『いきますっ!!』
彼らの指揮を執っているはやての動きに合わせ、肩上のリインフォースがいくつもの標的へと照準を合わせていく。

「ええ子や、リインフォース!!」

先端に剣十字を模した杖、シュベルトクロイツを大きく振る。彼女のその動作にあわせ無数の光弾がターゲットとなった使い魔へと放たれ、
あるものは狙い通りの獲物を撃墜し、あるものはかわされることで体勢の崩れた狼を武装隊が倒すための布石となり、戦果を挙げていく。

「・・・ザフィーラの相手しとるみたいで、いい気はせんな」

シグナム達が内部に突入した直後か、入るのと同時だったのか。現れた狼の大群は明確な敵意を以ってアースラへと攻撃を波状に繰り返してくる。
ブリッジからクロノ達が見守る中はやて達は武装隊を率い、彼らへの迎撃戦を繰り広げていた。
なのはの手によってかなりのレベルまで鍛え上げられた彼らであっても、やはり根本的に火力が足りない。戦術やフォーメーションで補うにしても、
はやてとヴィータに頼る部分は大きい。必然、二人は武装局員達のフォローと遊撃に飛び回ることになっていた。

「クロノくんの手も借りたいとこやけど・・・艦長やししゃあないか・・・!!」
『マイスター、あれを!!』

「!?」

自身のデバイスの声に振り向くと時を同じくして、眼前の遺跡の上空に円形の見慣れた魔法陣が展開される。

「結界まで・・・!?これじゃシグナム達が!!」

彼女と同じように異変に気付いたヴィータも、使い魔の相手をしつつそちらを見て驚愕している。

「そ、それだけやない・・・この魔法、この魔力て・・・まさか!?」
『間違いないです、あの結界の魔力、ユーノさんのです!!』
「どーゆーこったよ、そりゃあ!!はやて、なんであの眼鏡ヤローの魔法が・・・・」

幾度となく自分達をサポートしてくれていた結界が、仲間達を閉じ込める壁となっている。
遺跡内で助けを待っているはずの、心優しい少年の魔法が。何故。どうして。
その事実に彼女達は困惑し、戦線にわずかな綻びが生じる。

「彼女」・・・いや、「彼女達」はそれを見逃すほど、甘くはない。

はやてとヴィータの動きが鈍くなったために手薄になった空域。
使い魔たちに苦戦する数人の武装隊員達のいるそこを、一筋の光が狼ごと薙ぎ払う。

「っ!!」
「ああ!!」

気がついても、あとの祭りだった。一瞬にして戦闘不能に追い込まれた局員達が煙を突き破って大地へと落下していく。

『エイミィ、転送急げ!!』
『やってます!!』

耳の奥に聞こえてくる通信から、クロノが彼らを救助すべくエイミィに怒鳴っているのが聞こえる。
聞こえているが、それ以上動くことはできない。
なぜなら、彼女達の目は、友と同質の結界に受けた驚きに、更に驚愕を重ねるように現れたモノへと、ただ注がれているのだから。

「あれ・・・は・・・・?そんな・・・っ!!」
「嘘やろ・・・なんで・・・なんでっ!!?」

狼の群れの最深部に、遺跡の入り口を守るかのように出現する、二つの三角形の魔法陣。間違えるはずもない。
はやてもヴィータも、己が魔法の基本となるべく普段から使用しているその形を。
そして主がために空に消えていった、愛おしき者の名を、忘れるはずがない。

「なんでだよっ!!リインフォースが・・・!!二人もっ!!」
『ヴィータさん、危ないですっ!!マイスター、どうしちゃったんですか!?』

自分の名が立ち塞がる敵に向けて呼ばれたことに戸惑いながら、リインフォースはヴィータの周囲を気遣い、
完全に動きを止め震えるだけになってしまった主へ呼びかける。

「嘘や・・・・嘘や・・・・うち・・・この眼で・・・」
「はやて!!」
『マイスター!!』
『はやて!!気を確かに持て!!今は戦闘中だ!!』
通信越しにクロノまでが激を飛ばすが、効果はない。
はやての援護を失った武装隊が一人、また一人と攻撃を受け、落とされていく。

「く・・・まずい・・・!!エイミィ、指揮は君に任せる!!僕も出て迎撃を!!」
「はいっ!!ゲート開きます!!」

艦長だから艦を離れられないとか、そんなことを言っている場合ではない。
このままでは、武装局員達が壊滅する。見かねたクロノが席を立った。手には待機状態の愛機・デュランダルが既に握られている。

(だが一体でも六年前、あのなのはとフェイトのコンビが勝機を見出せなかった相手だ・・・・二体を同時に・・・やれるか!?)

当時と今とでは、状況が違う。よくも悪くも。
実質一人で戦わざるをえなかったなのはと違い、こちらには今多くの戦力がある。
だがかつてとは違い、彼女達を内から止めることのできる存在もまた、いない。
不安と共に走るクロノの背後でブリッジのドアが閉まる。
彼からはもう見えないモニターには、
漆黒の広域空間攻撃魔法───デアボリック・エミッションを構え、今にも放たんとする、二体の夜天の書の意志が捕捉されていた。







「何故だ・・・何故貴様が生きている!!リィンフォース!!」
「・・・・・」
「答えろ!!六年前空に還ったはずのお前が何故っ!!」
剣撃と、拳による打撃。
打ち合い、振り返りざまに大声で問う烈火の将は、自分が「彼女」と戦わねばならないのかという点において、
自分でもわかるほどに激していた。外のクロノ達の状況と同じく、自分達へと攻撃をしかけてくる、かつての戦友の出現に対して。

彼女と同様にフェイトもまた、もう一体の・・・・シグナムとしては認めたくはないがもう一体のリインフォースと斬り合い、
激しい接近戦を演じている。

「自らの守護騎士の顔を忘れたか、リインフォース!!」
「・・・守護、騎士・・・・?」

顔面へと迫っていた拳がぴたりと止まり、跳躍した彼女は後退する。

「私は・・・夜天の書・・・そのバックアップに過ぎん・・・そのような名ではない・・・」

無論、それはただシグナムの問いに答えるための休止ではない。
足元に展開されたベルカ式魔法陣こそがその本意。「呼び出す」ための召喚陣。

「・・・そして・・・我が守護騎士は、ここにいる・・・」
「な・・・!?」
「そんな、あれは・・!?」

夜天の書の元、ひざまずくように現れたその姿は、女性。
騎士甲冑こそ身に着けてはいなかったが、長い緋の髪を後ろで纏めた、鋭く切れ長の瞳の持ち主。
それは正に、シグナムと瓜二つ。まだ、はやてと出会う前、戦うためだけの駒に過ぎなかった頃の彼女がそこにいる。

「私が・・・・もう一人・・・・?」
「いや」

もう片方と戦っていたフェイトが、背中合わせにシグナムの背後に着地する。

「・・・もう、二人です」

見ると、フェイトの向こう側の夜天の書もまた、同様の騎士を呼び出し終えたところだった。
その腰に下げた剣まで、シグナムのレヴァンティンにそっくりだ。

「・・・・・注意しろ。技術的には奴らは今の私には及ばん。だが身体能力や魔力は全て私と同じだ・・・。なるべく連携をとらせるな」
「・・・?・・・・わかりました。あなたも気をつけて。まずは・・・ここを突破しないと」
「ああ・・・いくぞっ!!」

もう一度、二人は自分の相手たる魔導書、そして騎士へと向かっていく。

(実戦経験の差で・・・まだ習得していない動きも、多いはずっ・・・!?)

────待て。何かが。何かが、おかしい。

(?・・・なんだ、何か、違和感が・・・?)

───何故私は、こいつの戦闘能力を知っている・・・・?

(どうして、私は・・・?)

ザフィーラの姿に酷似した守護獣達。
ユーノを感知できなかったクラールヴィント。
己が姿を模した敵。
そして自分たちのことを知らないリィンフォース。

───・・・否。知っているのではない。「覚えている」。

(!!まさか、こいつらは・・・!?)

斬撃を落としながら、シグナムの中で何かが一本の線に繋がった気がした。
既にあった記憶と言う名のパズルのピースがきれいに合致した、そんな感覚が違和感を払拭していく。
だがその思考は一方で彼女の太刀から、本来の鋭さを奪っていて。

「・・・」
「!!」

鈍った刃は敵を捉えることなく地面を穿ち、致命的な隙を晒すことになる。

「シグナムッ!!」
「く・・・!!」
「・・・ブラッディ・ダガー・・・」

回避など、させてはもらえない。
血濡れの短剣が四方八方から無防備なシグナムの全身を囲み、雨あられと降り注ぐ。

彼女の姿は、着弾の爆音と煙の中に飲み込まれ、包まれて消えていった。


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