放課後の学校は、どこだって喧騒に包まれているものだ。
帰宅の途につく者、掃除当番の不平を漏らす者。あるいは、クラブ活動に精を出す者もいる。
そしてそれらは互いに混ざり合い、一種のカオスとも言える煩雑とした状態を生み出す要因となっている。
高町なのはもまた、その雑然とした状況の教室をあとにしようと、
アリサ、すずかの親友二人組と会話をはずませながら、鞄に荷物をつめている最中だった。
「なのは、早くしなさいよー」
アリサの急かす声に呼応するように、手際よく、鞄へと教科書を放り込んでいく。
「ごめん、お待た・・・・」
────許さない─────
「せ・・・・?」
心の中に直接響いてきた、少女らしき声。その声になのはの動きが止まる。
(念・・・・話・・・・?)
気のせいでなく、それはたしかに聞こえてきた。だれかが、なのはに、直接放った、呪詛のような念が。
「?なのはちゃん、どうしたの?」
「・・あ、ううん、なんでもないよ」
「そう?ならいいけど・・」
───消えろ────
「!?」
また。再び聞こえた少女の声に振り返るなのは。
しかし、そこには誰もいなかった。
そう、「だれもいなかった」のだ。
いるべき人間、その全てが。まるで神隠しにあったかのように消失していた。
「え・・・?」
余りに現実離れしたできごとに、思考回路が一旦ストップする。
ジュエルシードを集めているときでも、こんなことはなかった。
「あ・・!!まさか!?」
なのはの予感は当たった。
隣にいたはずのすずかも。既に教室からでていたアリサの姿も、消えていた。
「そん、な・・・!?」
いてもたってもいられず、「走るな」と書かれた張り紙も無視してなのはは走り出す。
最上階から、一つ一つ、全ての教室を見て回る。
だが、それでもやはり、誰一人発見することはできず、ただ苦手な運動を続けたことによる
疲労と、誰もいないことによる寂しさが残るだけだった。
────来なさい─────
「!!」
そうだ、この声。きっと、この声に、なにか原因があるに違いない。
「レイジングハート、お願い!!」
瞬間的にバリアジャケットに換装し、自らの愛杖を手にすると、
休むことなくなのはは声、思念を感じる校庭へと走った。
きっと、そこに何か手がかりがある、そう信じて。