校庭は、異様なまでに強力な魔力によって、満ち溢れていた。
踏み出した瞬間、なにか背中に冷たいものをあてられたように身体が強張っていくのがわかる。
「これ、は・・・・?」
否。ただ、強力なだけではない。冷たく、どこか恐ろしさを感じさせる。そんな魔力によって支配された空間。それが今、なのはのいる場所だった。
───ユーノ君、・・ユーノ君、聞こえたら返事をして───
目を閉じ、家にいるはずのユーノへの念話を試みる。しかし、その呼びかけに対するユーノの返事はない。
(やっぱり・・・だめか・・・)
ここに来るまでの短い間に数度、試みてはいる。しかし、何かによって阻害されているのか、
未だ成功していない。あるいは・・・
(ユーノ君にも、何かあったんじゃ・・)
───来たわね、レイジングハート───
また、この声。なのはは念話への集中を解き、思念を感じたほうへと杖を構える。
・・・そこには、少女がいた。
薄い衣をまとった、銀色の長い髪の少女が、ただ一人。強大無比な魔力を、その身に従えて。
「あなた、は・・・?」
なのはの問いに、少女は答えない。
「あなたが、こんなことを・・!?」
ただ、少女がなのはへと向けるのは。
「どうして・・・!?」
憎悪の宿った悲しげな目と。
「ッ・・・!?」
凄まじいまでの魔力の込められた右腕だった。
────レイジングハート。あなたと主の大切なもの、みんな消してあげる。あなたが私に、そうしたように───
少女の右腕が、光った。