『scythe form set up』
消えかかった意識の中、聞いたのはいつか聞いた声。
『scythe slash』
そして、いつか見た技。
光輝く刃が、いくつもの軌跡を描く。
漆黒のマントを翻し着地した少女は、手にした無骨な大鎌を、
縦横無尽に薙ぎ払っていく。
「はあああっ!!!」
少女がその動きを止め、振り返った時、同時に少年の身体を拘束していた鎖、その全てが断ち斬られていた。
そして少女は、力なく倒れかかる少年を抱き止める。
「あ・・・・」
見上げた、そこにある顔。
「フェイ・・・・ト・・・?」
殆どの魔力を失い、朦朧とする意識のなかでも、間違えるはずはない。
君が、どうして、ここに。そう訊ねようと、唇に力を込めるが、もぞもぞと動くだけで、それ以上声が出ない。
「・・説明は、あとでするから。今は、手当てを・・・アルフ」
「あいよ」
もう、顔を動かすこともできなかったけれど、ユーノにも、返事をしたのが声でアルフだとわかった。
「よかった・・目立った外傷はないみたいだね」
安心したような、アルフの声。実際、魔力の消耗こそ激しいものの、ユーノの身体にこれといって大きな怪我は見られなかった。
小さく頷き、横たわるユーノの上へと手をかざすフェイト。
魔力を消耗しているだけなら、こちらの魔力を分け与えて、補ってやれば良い。
「ストップ」
「アルフ?」
「フェイトは、魔力とっときな。まだ、本番が残ってるんだからさ。少しでも温存しとかないと」
「でも」
「大丈夫。あたしのを分けてやりゃいいんだから」
フェイトの手を下げさせ、代わりに自分の手を向けるアルフ。
要領は、かつてジュエルシードを強制発動させた時と一緒。
ただ、やさしく。相手を傷つけないように魔力を送る。そのことに注意すればいい。
少しずつ、少しずつ。
荒かった呼吸はゆっくりとした規則正しいものに変化し、苦しげだった表情も、次第に落ち着いたものになってくる。
「こんな・・もんだね」
それでも、ユーノに分け与えることができたのは、必要最小限の魔力に過ぎない。
アルフも、魔力を温存しておくに越したことはないのだから。