無慈悲なほどに、力の差は圧倒的だった。
───・・・・・───
少女の掌から放たれるのは、光の雨。青白い流星が何百、何千と降り注ぐ、文字通り、光の豪雨。
「っく・・・・・う・・・」
満身創痍の身体を、辛うじて杖で支え立っているなのはに、それをかわす力は残っていない。
「レイ・・・ジング、ハート・・・」
『protection』
なのはの呼びかけに応えるように、傷ついたレイジングハートも防御魔法を起動する。
展開された魔法のバリヤーは、何物も通さない、強固なもの。の、はずだった。
降り注ぐ光の雨は、薄紙を貫くかのように、その破壊力を減退させることすらなく、
一つ一つが光の矢となり、なのはの身へと襲いかかる。
「ああああっっ!!!」
数え切れないほどの光の雨にうたれ、右へ、左へ、倒れることも許されず翻弄されるなのは。
バリアジャケットも、ほとんどその意味はなく。
ただなのはは激痛の波に耐えることしかできなかった。
「う・・・あぅ・・・」
ようやく光の雨が止み、なのはは苦痛の連鎖から開放された。
もはや足に自分の体重を支える力は残っておらず。ゆっくりと、前のめりに倒れていく。
(まだ・・・まだ、だめ・・・)
ともすれば消えかかりそうな意識。それを必死で鼓舞し、杖を出して身体を支える。
(この子が・・・みんなを、消したんだ・・・・)
大切なもの、みんな消してあげる。それは、頭上に浮かぶ少女が、はっきりと、そして敵意をこめて言った言葉。
フェイトと戦った時は、話し合う余地があった。目的が同じだったし、お互い、
なるべくなら戦いたくないという意志があり、悪意、敵意というものは存在しなかった。
だが、目の前の少女は違う。あるのはただ、敵意。そして憎悪。
なぜ、それほどまでに自分を・・レイジングハートを憎むのか。
少女が応えることはない。ただ、自分にその矛先を向けるだけ。
しかし、それ以上に。
(アリサちゃん・・・すずかちゃん・・・)
大切なものを、守りたかった。取り戻したかった。
敵意に対して敵意で返すなんてことは絶対にしたくない。
けれど。
(私が・・・みんなを・・・助けなきゃ・・・!!)
なのはの目は、まだ死んではいなかった。