目の前の女の子。どうして彼女──憎むべき、レイジングハートの主は、こうもしぶといのか。
圧倒的な実力差。それをまざまざと見せつけられ、直接身体に教え込まれているというのに、
ボロボロの白い服を着た少女から、未だ戦意は失われていない。
銀色の少女にはそれが理解できなかった。
「ディバイン・・・バスターッ!!!」
おそらくは、渾身の一撃であろう。だが、自分には、通用しない。
手を前にかざすだけで、レイジングハートから放たれた光弾はいとも簡単に四散する。
彼女の力が弱いのではない。、本来なら今のようないいかげんな防御方法で、彼女の攻撃を防ぐことはできまい。
「・・まだっ!!」
少女はあきらめず、続けて魔力弾を連発する。
360°、すなわち全方位を囲むように。
けっして、なのはの力が弱いわけではなかった。
ただ、この空間、結界内では。そして、レイジングハートでは。
────私には勝てない────
全方位からの、ディバインバスター一斉射撃。その着弾の硝煙に、銀色の少女の姿が掻き消える。
「っく・・・・!!」
自らの放った攻撃による爆風にゆさぶられ、なのは自身もまた、苦悶の声をあげる。
(これで・・・なんとか・・・)
手ごたえはあった。なのはの身体ももう限界近く、加減する余裕はなかったが少女は無事だろうか。
(酷い怪我・・・してないと・・いいけど・・ごめん、ね・・)
とりあえず、わけを聞こう。みんなを返してもらおう。
───無駄よ───
「・・・!!?」
緊張を解きかけたなのはへと、煙の中から再び光の雨が降り注ぐ。
「っあああっっ!!!」
数え切れない光の流星を受けるなのはは、悲鳴をあげ、地面へと叩きつけられる。
「そん・・・な・・・・」
煙の中から、ゆっくりと一つの影が現れる。
なのは渾身の一撃を受けたはずの、少女。その身体には、傷ひとつついてはいなかった。