────あきらめなさい────
少女は、念話で語りかける。どこまでも、憎悪に満ちた目をなのはに向けながら。
───その子では、私に勝つことはできないのだから────
少女から発せられる魔力が、更に増大していく。
───この結界内なら、私は常に最大出力を発揮できるのだから───
それは、絶望的なまでに強大で。なのははただ息を呑み、表情を凍らせるだけだった。
「あ・・・・?」
レイジングハートを握る左手が、震えていた。無意識のうちの、恐怖。絶対的な力に対する、本能的な恐怖だった。
今まで、戦っている最中に怖いと思ったことは何回もある。けれど、これほどに身体の底から来る、抑えても抑えても湧き上がってくるような恐怖は初めてだった。
────性能でも、魔力でも私が上なのだから────
少女の掌が青白く発光する。光は魔力流を伴い、収束していく。
「あ・・・」
少女の周りに浮かぶ魔方陣は、なのは自身がよく知っている魔法だった。
(スター、ライト・・・ブレイカー・・・・・)
脳で理解しても、根源的な恐怖と、敗北感に支配された傷だらけの身体は、動いてはくれなかった。
───貴方達では、私には勝てない────
放たれた光の噴流へと、なのはの身体が飲み込まれていく。
(だれか・・・・フェイト・・・・ちゃ・・)
白んでいく視界の中、なのはは大切な、友の名を呼んでいた。