校庭の赤茶けた大地に倒れ伏すなのはに、もう意識はなかった。
その隣には、手から取り落とされた、ひびだらけのレイジングハートが転がっている
完全な敗北。ダイム───銀の少女は、なのはの傷だらけで倒れる姿を、無表情に見つめていた。
────鎖よ────
上空から、空間を割って、漆黒の鎖が現れる。
それらは、金属音を伴って、身動き一つせずに横たわるなのはへとせまっていく。
あるものは、力なく投げ出された左腕に。
またあるものは、赤く出血する右足に。
なのはの全身へと絡みついた鋼の蛇たちは、ゆっくりとそのけっして大きくはない体を持ち上げていく。
まるで、十字架に架けられたかのように、なのはの身体は十文字の形に、空中で固定された。
「ッ・・・」
気を失っているはずの顔が、わずかに歪む。
ユーノの時と同様、残った魔力が鎖達によって吸収されているのだ。
そんななのはの状況を一瞥すると、少女は地面に転がるレイジングハートへとゆっくりと近づいていく。
───これで、やっと───
───貴女のせいで私は───
勝利と、もうすぐ訪れる復讐の完遂を、少女は予感した。
レイジングハートへと右手を傾け、魔力を集中する。
あとはただ、放つだけ。それだけで目の前の杖は砕け、復讐は完了する。
「させないよっ!!」
とっさにとびのいた地面を、何者かの拳がえぐっていた。
『photon lancer full auto fire』
更に少女を追い詰めるように、上空から降り注ぐように放たれる、光の槍。
───だれ───
拘束されたなのはの元まで後退し、新たな敵の出現に身構えるダイム。
「なのはを・・・放せ・・・!」
そう言い放ち、光弾を放った影─フェイトは跳躍する。大切な友、なのはを助けるために。