──行かなきゃ────
少年は、苦痛に顔を歪めながらも、顔をあげる。
その先には、ひび割れ、大きく穴の穿たれた黒い空間が見えている。
あの中に、行かなければ。
───フェイトたちの言ったとおりなら。
「彼女」に本当のことを伝えなくては。それができるのは、「彼女」を作った一族である、自分だけ。
「待ってて・・・なのは・・・フェイト・・・そして・・ダイム・・・」
光の噴流の中、フェイトは全力で防御魔法を展開し、ダイムの一撃を耐えていた。
「っ・・・ぐうううううっ・・・!!」
本来、自分が防御魔法を苦手としていることなど、十分に分かっている。それでも、フェイトは避けるわけにはいかなかった。
彼女の背後には、傷ついたなのはがいる。それを放っておいて自分だけが逃げるということは、考えられない。
「っ・・・どう・・・して・・・!?」
差し出した右腕は、みしみしと音を立て、圧迫感に耐えている。
「どうして、こんなこと・・・!!」
額に汗を浮かべ、眉根を寄せ、フェイトは語りかける。
かつて、なのはが自分にしてくれたこと。自分にだって、きっとできる。
どうして、そうまでして、レイジングハートを・・なのはを憎むのか。
「君にとって・・レイジングハートは・・・妹も同然じゃないか・・・・!!」