───嘘だ────
震えるダイムの声が響き渡ると共に、辺りを包む結界の表面に細かな亀裂が走っていく。
───嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ────
急激に増大したダイムの魔力が、自らの生み出した世界を蝕み、傷つけている。
「く・・・!」
それはまるで、魔力の洪水。空中のフェイトも、地上のユーノとアルフも、防御魔法を使いつつ
避け続けるのが精一杯の状況だった。
──私は、私ハ・・・!!
完全なる暴走。
恐れていた事態が、起ころうとしていた。
長年の酷使によって耐用ぎりぎりだったダイムの機体が、戦闘による度重なる魔法の使用と、
真実を知り、それでもそれを受け入れることのできない心のねじれ、そしてやり場のない憎しみによって、ついに限界を迎えたのだ。
──壊ス・・・・!!
あるのはただ、その崩壊の引き金となった、憎悪と破壊のみ。
ダイムにはもう、理性は存在しない。
「なのはっ!!」
ユーノの声に、フェイトは振り向く。
「ッ・・!?なのは!!!?」
濃密な、魔力という名の強酸に晒され、なのはの身体を拘束し、支えていた鎖が右腕の一本を残し溶け千切れていた。
それ以外に支えるもののないなのはの身体は、魔力の波に煽られ、右へ、左へ、不安定に揺さぶられ続けている。
そして。右腕の鎖もまた今正に千切れようとしていた。
(間に合えっ・・・!!)
考えるより先に、身体が動いた。
例えその身を魔力の大波に晒すことになったとしても、どれほど、傷つこうとも、そんなことは関係ない。
地面すれすれ。
千切れた鎖と共に落下するなのはを、フェイトはしっかりとその両の腕で、受け止めていた。