「ひどい・・・」
改めて見る、腕の中のなのはの状態は、無惨なものだった。
バリアジャケットは上着がほとんど原型をとどめないほどボロボロに破れ、その裂け目からは
いくつもの傷が覗き、中にはまだ出血しているものもある。トレードマークのおさげも片方を結っていたリボンがちぎれ、ほどけている。
顔の右半分も、目蓋の上から流れ出た血が乾き、こびりついた状態だ。
「なのは・・・」
「こいつは・・・ひどいね・・・」
駆け寄ってきたアルフもまた、なのはの状態にうめく。
そのとき。乾いた音と共に結界が崩れた。ダイム自身の魔力に、結界が耐えられなくなったのだ。
─────・・・
ダイムの目に、光はない。ただ、目の前にいる敵を破壊する。その衝動だけが今のダイムを動かしている。
流れるような動作で掲げられた両腕が、ダイムの頭上に巨大な光の球を形成していく。フェイトを、なのはを。レイジングハートを屠り去るための、最大、最後の一撃。
(きっと、あの子の、全力・・・・)
それなら。することは一つ。
「アルフ、なのはをお願い」
「フェイト!?」
「ユーノは結界を・・!!」
「フェイト、まさか・・・・」
言うまでもない。決まりきったことだ。全力には、全力で。
「あの子・・・ダイムを止める」
暴走したダイムの魔力は凄まじい。暴走状態の彼女とまともに戦ったならば、フェイトも勝てないだろう。
だが、今のダイムは暴走しているとはいえ、連戦と急激な魔力の放出によって、その力はずいぶん弱まっている。
きっと、フェイトの残った魔力でも、ほぼ互角に戦えるはずだ。
(今なら・・・)
これ以上、ダイムにだれかを傷つけさせたくない。
この子は、昔を取り戻したかっただけ。愛し、愛してくれた人達を取り戻したかっただけ。
ほんの少し、そのベクトルが狂ってしまっただけなのだから。
(母さんと・・・この子は、きっと同じ・・・)
だから、きっと、止めてみせる。
母を失った、あの日と同じ思いは、もうしたくない。