「───は、なの・・・・のは、なのは」
夢うつつの中、だれかが自分を呼んでいた。
意識が、少しずつ覚醒していく。皮膚の感覚もよみがえり、目覚めようとしているのが実感される。
一匹のフェレットが、こちらを覗きこんでいた。
「・・・・ユーノ、君・・・?」
顔に何か、ふわふわした白いものが当たっているのがわかった。傷口を覆うガーゼだった。
「よかった・・・目を覚ましてくれて。待ってて、今美由紀さん呼んでくるから」
なのはは、丸二日間、眠り続けていた。怪我自体はアースラに運ばれて受けた治癒魔法のおかげで
なにか軽い事故に巻き込まれたといっても不自然ない程度には回復していたのだが、失われた魔力を回復するために、
身体が休眠を欲していたのだ。
駆けつけたクロノ達により事件の事後処理は迅速に行われ、なのはの怪我もまたリンディお得意の「九割の嘘と一割の真実」で怪しまれないよう説明されていた。
そして、フェイトは。
「すごく、残念そうにしてた。もう、いかなきゃならないから、って」
「そっか・・・」
一通りすることを終えてちゃんと寝ているよう言って美由紀が出て行くと、再び二人は話し始める。
もう、フェイト達は行ってしまっていた。事後処理が終わった後すぐに、別の任務で呼び出されたらしい。
「──けど」
右の掌を見つめる。
ユーノの話では、出発の直前ぎりぎりまでフェイトはこの手を握り、付き添ってくれていたという。
「・・ダイム、だった?・・あの子は、どうなるの・・?」
「・・・うん・・。一旦、危険がないか管理局で調べて、長老の下へ届けてくれるって」
「そっか・・よかった・・・」
「アースラのみなさん、元気だった?」
「うん。とっても。ああ、そうそう。フェイトから聞いたんだけど・・・」
「何?」
「あー・・・やっぱりやめとく。本人から聞いたほうがいいよ」
「?」
フェイトが、リンディ艦長から養子になる誘いを受けていること。それについて迷っていたこと。
そして、結論を出すことができたこと。
忘れていいものなんて、きっとない。けれど、ずっと同じところで立ち止まっていても、だめだから。
フェイトの言葉を思い出す。それはきっと、本人の口から語られるべき性質のものだから。
──決めたことは、僕も一緒。
眠り続けるなのはを見ながら、ユーノが決めたこと。それは。
「あのね、なのは───」