「ぐっ・・・!!」
異形の力はかなり強力で、爪を受け止めたバルディッシュを持つ両腕には、
ずしりと重い力がのしかかっている。魔力で強化していなければ、到底フェイトの細腕で防ぐことのできる代物ではない。
「フェ・・フェイト、あんた・・・!?」
「なのはっ!!」
何が起こっているのか理解できていないアリサを尻目に、大声でなのはを呼ぶフェイト。
「待ってて!!今!!」
『divine shooter』
「シュート!!」
フェイトと鍔迫り合いを演じていた異形の巨躯を、桜色に輝く光弾が直撃する。
アリサとすずかも、光が放たれた方向を思わず見上げる。
「なのは・・・ちゃん・・・?」
「浮いてる・・・!?」
「はああああっ!!」
アリサたちが視線を戻したときには既に、なのはの一撃にぐらりと身体を傾かせた異形はサイズフォームからの一撃によって一刀のもとに切り伏せられていた。
「アリサちゃん!!すずかちゃん!!」
二人の出現に警戒した怪物たちが後退するのを確認し、なのはがアリサたちに駆け寄る。
「大丈夫!?怪我とか、してない?」
「う、うん・・・。だけど、あんたたち、一体・・・?」
困惑の色が二人の表情に、はっきりと浮かんでいた。
フェイト達に結界を張っているヒマはなかった。仮に張れていたとしても、フェイトにできるのはただ「張る」だけ。
アリサたちのいるわずかな部分だけを残して空間を切り取るという細かな芸当は、今のフェイトにはまだできない。
なのはに至っては、まだ結界自体練習中で張るところまで行き着いていないのが現状だ。
そして、その結果として、自分達の魔法を使う姿を二人に晒すこととなった。
(ごめん、なのは)
(ううん。仕方ないよ、気にしないで)
「フェイトちゃん・・・なのはちゃん・・・」
不安そうに見上げてくる、四つの目。いずれ、二人にはきちんと説明せねばならないだろう。
だけど、今は、まだ。
「・・ごめん、今は説明してられない。・・・後で、後で必ず、ちゃんと説明するから」
まだ、言えない。その時間がない。
「なのは、来るよ・・・!!」
「・・・・うん。・・二人とも、危ないからここから動かないで。きっと、守るから」
「ちょっと!!なのは!フェイト!!」
残った怪物は全部で10体。
ふしぎな服に身を包みそれらに向かっていく友人たちに対してアリサとすずかに出来たこと。
それはただ、遠ざかっていく背中を、手を伸ばすこともできず見ていることだけだった。
その二つの背中は、いつもと同じなようで。
なんだかとても遠かった。