二人の背中が森の中に消えて、どれくらい経ったろう。
「すずか」
「・・・・うん」
わかってるよ、と小さく答えたすずかに、アリサも頷く。
なのはにはここにいてと言われたけれど。
(じっとしてなんかいられない・・・)
二人ともきっと、大変なことをしているのだろうから。
何が起こっているのかわからなくても、なんだか行かなくちゃいけないような気がする。
怖くても、不安でも。
これはきっと、待っているだけでは駄目なこと。
「サンダーレイジ!!」
四条の稲妻が、躍動する異形達の身体を捕らえる。
うち三体は断末魔と共に閃光の中に消え、残った一体もまた黒煙を上げながら大地へと落下していく。
なのは達がすずか達を巻き込まないよう、月村邸から少しはなれたところまで怪物達を誘導し戦闘をはじめてからおよそ15分。
───あと三体。
「ディバインシューター!!」
フェイトへと迫ろうとしていた異形が、一瞬にして焼き尽くされる。
───あと、二体。
「なのは!!」
「うん!」
二人が手をかざした先に出現する小さな魔方陣に、危険を感じた異形達は距離を置こうとする。
「おそい・・・!!」
(これで決めないと・・・!!この怪物、最初の頃戦った個体より明らかに強い・・・!!)
ライトニングバインド。
そして、レストリクトロック。
光の拘束具が、異形達の身体の自由を奪う。
「サンダー!!」
「ディバイン!!」
二人は、互いに絶対の信頼で、その背中を預け合い。
倒すべき敵へと向けてそれぞれの得意技を発射する。
「スマッシャー!!」
「バスター!!」
それは、時計の針が丁度六時を指すようにまっすぐ。二つの方向へと伸びていく。
異形達の身体を構成する魔力は、その力の前に崩壊し、洗い流されるかのように消滅していった。
「・・これ、で・・全、部・・・?」
「・・・うん・・多、分・・」
大きく肩を上下させながら、二人は辺りを探ってみる。
魔力反応はゼロ、問題はない。
「・・・街のほうに、行こう・・・、アルフ達が、がんばってくれ・・・」
言葉を切ったフェイトの身体がゆらり、とよろめく。
「う・・・」
「フェイトちゃ・・・あ、れ・・・?」
駆け寄ろうとしたなのはもまた、己の身体の異変に、その身をふらつかせる。視界が、ぐにゃりと曲がって見えていた。
無理もない。ただでさえここのところの連戦で慢性的に消耗していたのに加え、今日も既に十体もの異形との戦闘をこなしている。
(だめ、いかない、と・・・・)
眩暈は止まらず、意識がぼうっとなっていく。
「あ・・・・」
「なのは!!フェイト!!」
危うく倒れて頭を打ちそうになったところを、いつの間にか追いかけてきていたアリサとすずかが抱きとめていた。
疲労困憊した二人を、それぞれの両腕で。