遠くのほうで、爆発音が聞こえた。
「あっちか!?」
恭也は走り出す。
急に周囲の雰囲気が変わったと思った瞬間、数体残っていた化け物たちは消えていた。
一応刀は納めたが、辺りに漂う嫌な感じは消えてはいない。
(忍達は無事に逃げられたのか・・・・?)
爆発の方向を目指しつつ、愛しい者達の身を案じる恭也。
(全く・・・どうなってるんだ?)
恭也は知らない。自分が今外界から隔絶された空間にいるということを。
そして、向かう先で戦っているのが彼の大切な妹達であるということも。
「先に、聞いておこう・・・何故、フェイトを狙う・・・?」
「答える必要はありません」
「・・・目的はなんだ?主とは誰だ?」
「聞かれていましたか・・・・執務官ともあろう者が盗み聞きとは、感心しませんね」
───答えはやはり、ノーか。
ならば、止むを得まい。
実力行使で聞き出すしかないだろう。
「・・・待って、兄さん」
「下がってろ・・・もう戦うほど魔力はないだろ」
「そうじゃなくて・・・」
口ごもるようなフェイトの口調に顔を振り向かせるクロノ。
その目に映る義妹は、明らかに何かを言おうとして躊躇していた。
「どうした?」
「その・・・あの人は・・・リニスは・・・・」
言うべきか、否か。自分とリニスの関係を。
リニスに退く意思がないからには、クロノに告げたところでどうにでもなるものではない。
フェイトが大切に思っている人達に傷つけあって欲しくない、傷ついて欲しくないと思っているとしても。
そんなことを言ったところで、クロノを困らせるだけだ。
「・・・大丈夫だ」
「え・・・・」
「確約はできないが、努力はする。あくまで彼女の戦闘力を奪うだけだ」
まるで、心の内を読んだかのようだった。
フェイトの頭に手を置き、安心させるべく言い聞かせる。
「全部、聞いてた」
「兄さん」
「行ってくる・・・!!」
そしてクロノは、S2Uへと魔法の発動を命じる。
『stinger snip』
「スナイプショット!!」
「ち・・・」
光の一撃をかわしたところに振り下ろされるS2U。
リニスはこれを両腕を交差させて受け止める。
「く・・このっ!!」
リニスが振り払うと同時にクロノもそこから飛び退く。
逃すまじと放たれる光弾を打ち落としつつ、クロノは綺麗に着地した。
「なかなか、やりますね・・・」
「あなたが傷つくとフェイトが悲しむ・・・さっさと身柄を確保させてもらうよ」
口ではそう言いながらも、クロノは内心、彼女の捕縛が一筋縄で行きそうにないということを感じ取っていた。