「ち・・・・」
リニスは、自分の邪魔をしているこの少年の強さに、思わず舌打ちをした。
(情報としては知っていたけれど、これほどとは・・・・!!)
『stinger snip』
「そこ!!」
不規則な軌道を描くクロノの射撃を相殺し、リニスは叫ぶ。
「お前達・・・行きなさい!!」
彼女の左右の地面に水面のような波紋が広がっていく。
来る────クロノのその読み通りに、波紋の中心に満ち満ちた魔力から、それぞれに異形が現れる。
「させるかっ!!」
右手のS2Uが、左手に発生させたシールドが、異形達の牙を防ぐ。
『break impulse』
そのまま一気に両の腕から衝撃波を流し込み、二体同時に撃破するクロノ。
「・・・やりますね・・・・・」
「お互いに・・・・ね」
このままでは埒が開かない。敵対する二人の胸中は一致していた。
『blaze canon full charge shot』
「・・・・・」
二人の魔力が、それぞれに必殺の一撃となるべく集まっていく。
「・・・考えることは、同じのようですね・・・」
「・・まったくだ」
クロノは、なるべく傷つけずに済ませるため、威力調整が可能な余裕のあるうちに決着をつけるために。
リニスは、迅速な撃破そして、フェイトの捕獲のために。
それぞれの、最大の攻撃を放つ。
「すごい・・・クロノ君、こんなに魔力あったんだ・・・」
クロノの背中を見つめながら、なのはがつぶやいた。
今までなのはの見たことのあるクロノの戦闘スタイルは、最小限の魔力で最大の効果を生み出す、といった
効率を重視した魔力消費を抑えたものだった。もちろんクロノの魔力自体が凄まじいものであるとは知っている。
フェイトから何度も聞かされていたし、アースラの切り札というくらいなのだから。
それでも、これほどとは。
「これなら・・・・?フェイトちゃん?」
フェイトは、自らを抱きしめるようにしながら────震えていた。
「フェイトちゃん・・・?」
「ごめん・・・大丈夫だから」
───私が、弱いだけだから。勇気がなかったから。
だから、こうやって震えていることしかできない。
リニスが自分を狙っていることを知りながら、それを止める力も、彼女と戦う選択をする勇気も持ち合わせていなかった。
だからかわりにクロノが戦っている。自分の無理な願いを聞き入れて。
(私の、せいで・・・・)
大切な二人が全力をぶつけ合わなければならないのは、自分のせい。
「フェイトちゃん・・・」
自分を責めないで。なのはがそう言おうとしたその時。
────そうね。その通りよ、フェイト─────
「え・・・・!?」
かつての大魔導師の声が、辺りに響き渡った。