「久しぶりね、フェイト」
「・・・・母さん・・どうして」
それは、生きていたことに対する疑問か、リニスを使い自分を狙っていたことにたいするものか。
あるいは、その両方か。
「・・・リニス、下がりなさい」
「はっ」
有無を言わさぬ声でプレシアは、隣に控えるリニスに命じる。
あくまで、厳格な主従関係で。そこにはかつてフェイトをめぐって起きたような、意見の相違や対立は存在し得ない。
「なぜだ・・・・なぜ、あなたが生きている・・・・」
「何故私が生きているのかなどどうでもいいこと。ただ、事実として私はここにいる。・・・そして」
「ッ!!」
起き上がりかけていたクロノの両腕が、突如上に向けて光の輪に固定される。
「く、バインド・・・・!!」
「あなたもいる以上、たっぷりとお礼はしないとねぇ、クロノ・ハラオウン」
プレシアの右手が、クロノの頭部を鷲掴みにする。
それだけでもう、フェイトには彼女が何をしようとしているのかがわかった。いや、わかってしまった。
「だめ・・・母さん、兄さんを・・・やめて・・・!!」
フェイトの声を聞き届けることなく、プレシアは右手へと魔力を込めていく。
このまま解き放てば─────彼女の魔法の威力ならクロノの頭部などふっとぶだろう。
「お前たち親子さえいなければ、私はアルハザードに行けた・・・アリシアの身体と共に・・・!!」
「・・・!!」
「死んで償え、アリシアを奪った罪を・・・・」
クロノを──兄を助けなければ。
「だめ・・・!!」
『divine shooter』
「!!なのは!?」」
フェイトがクロノを助けようと飛び出すより先に、なのはが魔法を放っていた。
「ち・・」
クロノを掴んでいた手を離し、その魔力の篭った拳を持ってディバインシューターを叩き落す。
「そんな・・・素手で・・・!?」
いくら魔力のほとんどない状態で放ったとは言え、それでもなのはの魔法ならば並の術者以上の威力はあるはず。
それを、シールドもつかわずはじくなんて。
「そういえば・・・お前もいたわね」
「・・!!」
「お前がフェイトによけいなことを吹きこまなければ、こんなことにはならなかったのよ・・・!!」
「そんな!!それは!!」
「だまりなさい!!・・・丁度いいわ。フェイトを手に入れる前にお前達二人、まとめてその罪を贖わせてやるわ・・・」
プレシアの顔は既に鬼の形相と化していた。その狂気と力を止めることのできる者は誰一人、いない。
その鬼女の仮面を被ったまま、残酷に口元を歪めプレシアは告げる。
「たっぷり・・・かわいがってあげるわ・・・・」