現に、今クロノとなのはを傷つけているのは自分だった。
二人とも、自分に関わったせいでプレシアによって痛めつけられている。
「何も言わないということは、自分でもわかっているようね」
何も反論、できなかった。ただフェイトは、俯くばかりで。
「当然よね。所詮人形に過ぎないのよ、お前は。使い魔と創られたもの同士、傷を舐めあっているのがお似合いよ」
「・・・・・」
「絆?友情?笑わせないで。お前などには一生、家族なんて得られるはずがないのよ」
プレシアの言葉が、金髪の少女の心を深く抉っていく。
そして。
決定的な言葉が、フェイトを破壊する。
「こいつらとの・・・家族ごっこ、友情ごっこはおしまいよ、フェイト。これからお前は今まで通り私とアリシアのために働くのよ」
「────!!」
───家族、ごっこ。友情、ごっこ。
自分と、みんなの関係は、本当にただ、それだけのものでしかなかったのだろうか。
なのはと出会って、友達になって。
クロノのことを兄と呼ぶようになったけれど。
アリサやすずか、高町家の人達。義母となったリンディにアースラの面々。
彼らすべてと築いてきたありとあらゆるもの。
楽しく、暖かだった日々、そのすべてが。
それらみんなが、まがいもの。プレシアの言うように、ただのごっこ遊びに過ぎなかったのか。
この身と同じ、贋作にしか過ぎなかったのか。
感じていた絆も。暖かさも。手に入れたつもりになって勘違いしていただけだったのだろうか。
その勘違いこそが、今のこの状況を招いた、諸悪の根源なのだろうか。
かつて、自分が人間でないと知った時と同じ感覚が、フェイトの視界を真っ暗に染め上げていく。
(わから・・・ないよ・・・なのは・・・・クロノ・・・・)
心が、軋んでいく。
誰でもいい。
誰でもいいから違うと言って欲しかった。
だが。
兄と呼んでいた少年も、友情を結んだはずの少女も。
倒れ伏すだけで、何も答えてはくれない。
(誰か・・・教えて・・・・)
もはや涙さえ、出ない。何ももう、見えない。先程まであれほど抉られ、
癒えぬ傷を刻み込まれていた心の痛みすら消えてしまっている。
何も、感じない。ただ。
ただ、フェイトには。
フェイト・テスタロッサには。
自分という存在が、「フェイト」という存在が。ただ、わからなくなっていた。