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[624]640 2005/09/17(土) 15:56:17 ID:0uaAU1q4
[625]640 2005/09/17(土) 15:57:52 ID:0uaAU1q4
[626]640 2005/09/17(土) 15:58:44 ID:0uaAU1q4

She & Me  第二十四話 異端者の言葉

「・・・・全部、聞いたよ」

壁にもたれかかった美由希が見守る中。
すずかは少し迷ったあとで、前置きを省いて単刀直入にフェイトに告げた。

全部。それが意味するところは、フェイトにも理解できた。
彼女たちはもう知ってしまったのだ。彼女達の前にいる金髪の少女が、人間でないということを。
フェイトがいたせいでなのはが巻き込まれたということを、彼女たちはわかっている。

「・・・・・ごめんなさい・・・・・」

せめて今、謝らなければ。消え入りそうな声でフェイトが告げたのは、謝罪の言葉。

「どうして、私たちに謝るの・・・・?」
「だって!!」
顔を上げるフェイトの頬には、ずっと堪えていたのだろう、涙がつたっていた。


「・・・・だって、私がいたから・・・・!!人間じゃない私がいたせいでなのはが・・・!!」
「違うよ、フェイトちゃんのせいじゃ・・・」
「そんなことない!!」

なだめようとするすずかの言葉も、聞こえない。聞いてはいけない。
自分に、やさしい言葉に甘える資格なんてないのだから。

「・・・みんな、私が・・・得られることのないものを欲しがったから・・・。そんな資格、ないのに・・・」
「フェイトちゃん・・・・」
「なのはがいなくなったのも、クロノが怪我したのも・・・全部私が悪かったから・・・!!」
だからもう、私にやさしくするのはやめて。
すずかの視線を避けるように、再びフェイトは視線を落とす。

「私に・・・・家族や、友達なんて、不相応だったんだよ・・・結局・・・」
「そんな・・・・」




「・・・資格とか、そんなの関係ないと思うよ」



それまでずっと静観していた美由希が、はじめて口を開く。
「え・・・」
「・・・リンディさんも、クロノ君も、フェイトちゃんの生い立ちを話す時ね、すごく辛そうな顔してたんだよ」
「美由希さん・・・?」
「それってきっと資格とかそういうのに関係なく、二人にとってフェイトちゃんが大切な家族だからじゃないかな」

美由希は壁から離れると、ベッドの上、フェイトの横へと腰を下ろす。

「フェイトちゃんが責任を感じてるのも、なのはやクロノ君達のことを大切に思ってるからでしょ?だったら、根っこは同じ」
「それは・・・・・」
「私も、そうだったから」
「・・・?」

「私ね・・・・本当は、恭ちゃんとも、なのはとも、血は繋がってないんだよ?」

「「え?」」

すずかとフェイトは同時に驚きの声をあげていた。
あんなに仲のいい美由希となのはが本当の姉妹でないなど、たった一言で信じられるわけがなかった。

「うそ・・・・」
「本当だよ。このこと人に言うの、すごく久しぶりだけど・・・私は、とーさんとかーさんの娘じゃない」

美由希の本当の母は、現在の父・士郎の妹で、今はわけあって香港にいる。
父親の顔は覚えていない。
幼い頃引き取られて、恭也やなのはと共に兄妹、姉妹として育てられた。

「しばらくは、私も普通に恭ちゃん達と兄妹として生活してた。けど・・・丁度その頃だったかな」

士郎が仕事中の事故で、大怪我を負った。
しばらくは入院したまま動けず、開店間もない翠屋の経営はたちどころに苦しくなった。

幼いなのはを一人残して、家族はそれぞれ必死に働いた。

「そのとき私、思ったんだ。こんな風になったのは私のせいかもしれない、って」

本来なら高町家は四人家族。自分という余計な存在がいるせいで、ただでさえ苦しい家計を余計に圧迫してるのではないか。
恭也や桃子に大変な思いをさせ、なのはをひとりぼっちにしているのは自分のせいではないか、と。
更には士郎の入院の原因となった怪我も、自分を養うために必要以上に危険な仕事を引き受けなければならなかったからではないか。
そのように考えるようになっていた。

「今考えると、飛躍しすぎなんだけどね。当時はほんと、罪悪感でいっぱいだった」
「そんな・・・」
「・・・・それで、どうしたんですか・・・?」
「しばらく悩んで・・・・かーさんに聞いてみたの。私なんかいないほうがいいんじゃないかって」
「・・・!!」

「おもいっきり、叩かれて、怒られた。馬鹿なことを言うな、って。泣きながらだったけど、あの時ほど怒ってるかーさんは見たことない」
「・・・・」
「責任を感じて背負い込んじゃうし、それが許せなくて悲しくなる。これってお互いのことが大切だから。フェイトちゃんとリンディさん達も、きっとそう」
「それ、は・・・」
「辛い思いをさせたくないのはお互い様ってこと。リンディさんがフェイトちゃんの過去を話したのも、きっとフェイトちゃんに言わせたくないから」

言えばきっと、フェイトが辛い思いをするから。

「・・・・・・」
「要は気持ちの問題。だから、ね?互いを思いやることができるって時点で、フェイトちゃんとリンディさん、クロノ君は立派に家族だと思うよ」

「・・・・気持ちの・・・問題・・・」
「そう。リンディさん達はフェイトちゃんを家族と思ってる。あとはフェイトちゃん次第。血の繋がりも、資格も関係ない」

資格よりも、気持ち。美由希の言うとおりなら、自分は。
再びクロノを、リンディを。家族と呼んでもいいのだろうか。


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