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[706]640 2005/10/05(水) 17:43:18 ID:VMx+XQga
[707]640 2005/10/05(水) 17:44:48 ID:VMx+XQga
[708]640 2005/10/05(水) 17:45:35 ID:VMx+XQga


She & Me  第二十七話 二度目の戦い、その不在証明

「これを・・・・預かっていて欲しいんだ」

フェイトが差し出したのは、幾度となく彼女が身に着けているのを目にした、ピンク色のリボン。

「これって・・・」
「確か」

すずかとアリサ、二人の表情に戸惑いが浮かぶ。
このリボンが元々なのはのもので、フェイトにとってすごく大切なものであるということは二人も知っている。
それを何故今、なのはを助けに向かおうとするこのときになって二人に預けようというのか。

「・・・・もう一度、約束したいんだ。今度はなのはに言われて気付くんじゃなくて、はじめから自分の意思で」
「フェイト」
「なのはを連れて、二人で帰ってくるよ。このリボンを受け取りに。これは私となのはの、大切な思い出だから」








あれから数日。
なのはがプレシアの手に落ちたのは大きな痛手であったが、同時にそれは時空管理局にとって好都合でもあった。
ジュエルシードをめぐる事件において共に行動したなのはの魔力パターンデータは、十二分にアースラのデータベースに蓄積されている。
プレシア達がなのはを連れ去れば、その軌道、目的地をなのはの魔力の波形をトレースすることで容易に特定することが可能であるからだ。


そして「それ」は、なのはの魔力が途切れたその場所に、かつての威容そのままに存在していた。


「・・・・これは・・・まさか、修復されていたとは・・・」

───虚数空間からの生還といい、あの人は・・・どこまで底が知れないのだろう。

クロノが見上げるモニターに映し出されたのは、見紛うはずもない。

「時の庭園」────そう呼ばれていた。この目で確かに崩壊を確認したはずの、次元間航行要塞であった。

(・・・これほどのものをこの短期間で修復するとなると・・・魔導師一人の魔力でどうにかなるもんじゃない。とすれば・・・)

やはり、彼女と共に落ちていったジュエルシード。あるいは虚数空間内で起こったであろう何かが関係しているのであろう。

(おそらくそれはアリシア・テスタロッサの復活を可能とするほどのもの・・・少なくともプレシアがそう感じるほどの・・・)

急ぐ必要が、ありそうだ。

手元のサブモニターを覗けば、フェイトがアリサ達に出発前の最後の会話をしているのが見えた。
彼女の復活は執務官としての立場で考えるなら、幸いだった。
いくらクロノとはいえ、なのは、リニス、プレシアの3人を続けて相手にするのは辛い。
ユーノやアルフの援護があったとしても厳しいだろう。

そういった点では、フェイトが無事戦列に復帰してくれたことは有難かった。
彼女なら十分、なのはと渡り合えるし、その分自分も力を温存しておくことができる。

だが、もう一つの。「兄」としての想いはというとそうではない。
今回戦うことになる三人はいずれも、フェイトにとって大切な人たちだから。
できることならフェイトをこの戦いに参加させたくない、というのが正直な気持ちだった。
フェイト本人が平気だと言っていてもやはり、再び自分を兄と呼んでくれた少女に辛い思いをさせたくはなかった。
その辺りがクロノのプロでありながら未だ大人になりきれない甘い部分であり、自身よくわかっている欠点でもある。

(やれやれ。・・・執務官・・・失格だな)
義妹と事件。二つの天秤が釣合ってしまっていることを、クロノは自覚する。
これが、身内に甘いということなのだろう。母に似てきたのだろうか。
フェイト自身が決意を固めているというのに、情けないものだ。

自嘲の笑みを浮かべつつ、クロノはモニター越しの妹に無言で詫びた。









「・・・よし、いくぞ」
そして今、彼らはアースラ艦上、時の庭園の正面に立っている。
ユーノが、アルフが、フェイトが、それぞれ無言で頷く。

「武装局員が陽動をかける間に、アルフは僕と最下層ブロックから」
「私は、ユーノと最上部から」

それぞれ、二手に分かれて侵入し、プレシアのいると思われる中心部を目指す。
そしてなのはを回収し、プレシアを捕縛する。大まかな作戦の流れはこうだった。
フェイトがアルフと別れユーノと組むなど、編成が変則的なのも、内部の構造を良く知る者が双方に必要であったためだ。
また、彼女たちが構造を知っていたからこそできた作戦とも言える。
何分早急に事を進めなければならなかったため細かい点は煮詰まっていないのが現状だが、
それでも正面からバカ正直につっこんでいくよりは有用な作戦であった。
「フェイト、気をつけるんだよ」
「うん、アルフも。無事で」

「ユーノ」
「ああ」
「フェイトの足をひっぱるなよ、フェレットもどき」
「なっ・・・!?」
「兄さん・・・・?」
「・・・冗談だ。フェイトの援護、頼むぞ」
「・・・・・・・・・了解」
こんなときにまで、人をからかいやがって。ユーノはそんな顔を浮かべつつも了承する。
いつも通りの二人のやりとりに、苦笑するフェイトとアルフ。

「行こう」
「・・・うん、また、中央の間で」

兄妹は頷きあい、しばしの後の再会を約す。

(待ってて、なのは・・・)
───決戦が、始まろうとしていた。


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