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[41]640 2005/10/08(土) 17:59:58 ID:4Kb/Hdka
[42]640 2005/10/08(土) 18:01:26 ID:4Kb/Hdka


She & Me  第二十八話 それぞれの決戦、開始

「なのは・・・・」

フェイトは、足を止めた。
時の庭園へと突入して一時間あまりが経過している。
その間これといってさしたる障害もなく、ユーノとともに中心部へ向けて順調に歩を進めてきた。
そして、中央の間まであとわずか。少し開けた場所へと出たところで、彼女は二人の前へと姿を現した。

「・・・・捕獲、目・・・・標、フェイト・・・テスタロッサ・・・・」

虚ろな目をした友がつぶやくのは、何のぬくもりもない、敵としての言葉。単なる標的としての自分へと放たれた、宣戦布告。

───それでも。それでもフェイトは、敵が現れたという緊張と共に、友が無事であったという安堵感を感じていた。

「捕獲・・・する・・・・」

「・・・!!」

問答、無用。レイジングハートを掲げるなのはにフェイトもまた、己の持つバルディッシュを向ける。
迷いは、ない。

「・・・ユーノ、お願いがあるの」
「・・・・・わかってる。手出しはしないよ」

なのはとは、一対一でやらせて。背中越しにそう言おうとしたフェイトの意思を、ユーノは聞くまでもなく汲み取っていた。
心を読んだかのようなユーノの言葉に驚き、振り向くフェイト。

「どうして・・・?」
「なのはもフェイトも、似たもの同士だしね。・・・忘れてるかもしれないけどこれでも僕だって、二人との付き合いは長いんだよ?」
「そうだね・・・。ごめん、ありがとう・・・」
「ただし、よっぽど危なくなった時は手を出させてもらうよ。クロノから頼まれた以上、ここは譲れない」
「・・・・うん、それでいい」
『scythe form set up』

(ありがとう・・・・行こう、バルディッシュ)

心の中でユーノにもう一度礼を言い、意識を戦闘モードへと切り替える。バルディッシュもそれに応じ、変形する。

あの時は、友達になるための戦いだった。そして今度は、友達を取り戻すための、一対一の決戦。

(・・・・行くよ、なのは。必ず君を・・・助け出す!!)

『photon lancer』
『divine shooter』
全力全開、最初で最後の一騎打ち。かつてなのはがそう表した戦い。その望まれぬ第二幕がここに始まった。



「・・・・向こうは、はじまったみたいだな」
先程まで、武装局員たちが戦っていたのとは明らかに違う方角で、激しい魔力のぶつかり合いがはじまっていた。
確認するようなクロノの視線に、アルフも頷く。
先程からフェイトとの精神リンクは途絶しており、
それはアルフのほうにまで意識を向かわせる余裕がフェイトになくなったことを意味していた。
ならばおそらく・・・その相手は、なのはであろう。

「そのようですね」
相槌を打ったのは、アルフではない。
二人の目の前に立ちはだかる女性・・・リニスによるものだった。

「なら・・・こちらも始めるとするか」
「・・・・ええ」

(リニス、やっぱりあんたと・・・戦わないとだめなのかい・・・?)

二人のやりとりを見て浮かぶ迷いを、とっさに首を振ってふりはらうアルフ。

(フェイトだって、なのはと戦ってるんだ。使い魔のあたしが迷ってどうするんだよ・・・!!)

顔をあげ、倒すべき敵───リニスを見据えるアルフ。
それは、意図的に。完全に敵として認識する、そうすることでアルフは迷いを断ち切ろうとしていた。
あそこにいるのは、敵。リニスではない。

(アルフ・・・やれるか?ダメならここは僕一人で・・・・)
(・・・いや。あれはリニスだけど・・・リニスじゃない。少なくともあたしの知ってる。だから・・・割り切るよ)
(・・・・そうか。じゃあ、フォローを頼む・・・来るぞ!!)

「いきますよ・・・・!!」

気合い一閃、リニスの周囲から出現した四頭の野獣が二人に襲い掛かる。
反撃のブレイズキャノンが火を噴く。




────二組の戦いを、プレシア・テスタロッサは中央の間から念を介して見つめていた。

勝敗など、どちらでもよい。あの小娘──なのはがフェイトに負けようと、リニスがクロノに敗れようと、
最終的にフェイトの肉体さえ無事に手に入ればよい。最悪、十分に消耗さえしてもらえばそれで問題はないのだから。
かつて大魔導師と呼ばれたのこの力、病を克服した今、「儀式」に必要な魔力は温存せなばならなくとも、
消耗した状態の格下魔導師数人程度、容易に屠りさることができる。

「もうすぐよ・・・・アリシア。今度こそ・・・必ず」

あなたを必ずこの世界に、呼び戻す。

その命を失い、還るべき肉体すら失った愛しき我が子。もう少し。もう少しで代わりとなる肉体がやってくる。
準備は全て、整った。

恍惚なる狂気に微笑むプレシアの傍らで。
いつから存在していたのであろうか。
かつてのジュエルシードへと酷似した真紅の宝石が、妖しく光を放っていた。


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