『そか、フェイトちゃんとなのはちゃんがな・・・・』
「うん・・・全部、聞いちゃった・・・」
『・・・・ごめんな、何にも言えへんまんまおって』
「そんなことないよ。こっちこそ、突然電話しちゃって」
『ええんよ。・・・・教えてくれてありがとな、二人の事』
「うん・・・」
と、すずかの耳に、電話相手の少女の名を呼ぶ声が聞こえる。
だれかが向こう側で、彼女のことを呼んでいるらしい。
『・・・行かな。検査の時間やて。・・・うちも二人の無事祈っとるから』
「ん、それじゃあ・・・」
『二人が帰ってきたら、五人でまたなんかしよな?』
「うん、絶対に・・・・」
携帯を閉じたすずかは、掌に握ったピンクのリボンを見つめる。
アリサと共にフェイトから託された、なのはとの思い出の片割れ。
(みんな待ってるよ、フェイトちゃん、なのはちゃん・・・)
「は、あぁぁぁっ!!」
「・・・・!!!」
双方の杖がぶつかり合い、火花を散らす。
互いをよく知る白き魔導師と黒き魔導師の戦いは、かつてそうであったように、互角。
凄まじい衝撃にもお互い、一歩も引くことなく鍔迫り合いを演じている。
「・・・!!」
「!!バルディッシュ!!」
『difencer』
背後から接近する数発の光弾を防御し、一旦フェイトはなのはと距離を置く。
そう、戦いは一見互角であるかのように見える。だが。
『scythe slash』
この戦いにおいて互角とは即ち、フェイトの不利を意味する。
「っ・・!!」
なのはの砲撃をかわしつつ、接近戦へと持ち込もうとするフェイト。
(く・・・スマッシャーやレイジが使えれば・・・!!)
牽制に放つフォトンランサーもぎりぎりまで威力を絞った、到底ダメージを与えるには及ばない代物だ。
無理もない。プレシアによって強大な魔力を与えられたなのはのバリアーは、あまりに強固。下手に砲撃したところで弾かれ、
スターライトブレイカーの糧とされるだけだ。うかつには使えない。
つまり今のフェイトは、フォトンランサー、サンダースマッシャー、サンダーレイジという三つの主力魔法が封じられた状態で戦っているに等しい。
なのはに対してフェイトの採り得る有効な戦術は、牽制のためのわずかなランサーとバインド、そしてなのはの苦手とする接近戦に持ち込むくらいであった。
「このっ!!」
背後に迫っていたディバインシューターを切り裂く。
振り向いた先にはもうなのははいない。
(バインドで・・・動きを止めないと・・・!!!)
この手の魔法は、対象を操るための魔力を相手の体のどこかに───言うなれば、魔力の受信アンテナのように───打ち込むことで、
それを介して相手の体に魔力を流し支配する。
なのはを開放する手段は、その打ち込まれた大元の魔力に、別の魔力を直接ぶつけて術式を破壊すること。
しかしそれを今のなのはに対して行うことは困難を極める。せめて、動きを止めなければ。
(どうすれば・・・?)
「!!」
思考が隙となり、なのはの接近を許す。
至近距離で振り下ろされるレイジングハート。バルディッシュで受けるのは間に合わない、そう判断し左手の手甲でそれをガードするフェイト。
「ぐうぅぅっ!!」
手甲の亀裂に構わず反撃のバルディッシュを一閃するも、既になのははそこから消えていた。
「っ・・どこに!?」
なのはの戦闘スタイルからすれば、らしくない一撃離脱の高速接近打撃。
不審に思いながらも白い友の姿を探すが。
「だめだ、フェイト!!そこから離れて!!」
「あっ!?」
ユーノの叫びにしまった、と思ったときには遅かった。フェイトの両腕、両足を、桜色のバインドが拘束する。
先程の接近はこれを仕掛けるための陽動だったのだ。
なのはの拘束魔法───レストリクトロック。
「この・・・!!」
(く、これがくるってことは・・・!!)
必死でもがくも、四肢を束縛する光の輪はびくともしない。
こちらがバインドで動きを止めようとした矢先に、先を越された。
「・・・・レイジングハート」
『starlight breaker』
(まずい・・・!!)
フェイトの見上げた先。
かつて二人の戦いの明暗を分けた、星の光が。
三度フェイトに牙を剥くべく、集まり輝いていた。