「本当に、いいんだね?リニス」
精神リンクを通じて伝わってきた、真実。
それは二人にも予想し得なかったことであり。
またアルフと今行動を共にする彼女にとってはとても辛いものであるにも関わらず。
リニスは首を縦に振った。主を、救わねばならない。
「行きましょう・・・私の主は、プレシア・テスタロッサです。主の心が囚われているのを見捨てては、おけない・・・!!」
第四十話 Eternal blaze
『nine』
「ぐうぅぅぅっっ!!!!こんのおおおおぉぉぉ!!!!」
やはり、硬い。
並みのバリア強度ならば易々と粉砕するレベルのアルフのバリアブレイクを、プレシアは耐えている。
以前一度破った時とは、その硬度は段違いに増していた。
(くっ・・・!!もう少し、もう少しだってのに・・・・!!)
わずかでもいい、少しでもこのバリアーを傷つけることができれば。
『eight』
「アルフ!!」
あれじゃ、ダメだ。クロノは思わず叫ぶ。
いくらアルフの特性が障壁破壊とはいえ、プレシアの展開するシールドは強固すぎる。
さきほどまでアリシアが置かれていた状況と彼女が入れ替わっただけでしかない。せいぜいヒビが入るかはいらないかがいいところだ。
「大丈夫です」
クロノの心配を他所に、壁を支えにしながら立つリニスの声には自信があった。
余裕の笑みさえあるというほどはいかずとも、それは確信に近いまさに「自信」と呼べるべきものが。
「どうして、そう言える・・・!?」
『seven』
「決まってるよ」
「!!」
────答えたのは、少年の声だった。
「アルフから念話で聞いた。フェイトもアリシアちゃんも、彼女達だけで戦ってるわけじゃない」
少年はリニスの横を抜け、クロノの横にかがみこむ。
『six』
少年の言葉に、表情に。クロノは、あることに気付く。
聞こえてくる彼の声よりも後ろ、ほとんど動けないクロノには見えないその場所に収束しつつあるよく知った魔力の波動。
そして激戦によってこの場に満ちていた魔力の残滓が、驚くほど減っているということを。
忘れもしないこの現象。
この庭園内に居る者でそれを起こすことができるのは、クロノの知るかぎり、一人だけ。
『five』
「・・・そういう、ことか・・・!!」
「そう、そういうこと。・・・けど、念には念がいる」
左手を掴まれたと思うと、少年はクロノの脇下に身体を潜らせ支えにし彼を立たせる。
『four』
「悪いけど、もう少し働いてもらうよ。時空管理局執務官?」
「・・・・ああ、わかってるさ。お前もしっかり支えてろよ、フェレットもどき」
少年の皮肉に彼の嫌がるその呼び名で返しながらクロノは、右手のS2Uへと残った魔力を集中させていく。
「・・・僕だってやらなきゃいけないことはあるんだ。年下に頼らず自分でちゃんと立ってろ」
彼もまた空いた方の手に翡翠色の彼自身の魔力を集中させ、準備を進めている。
もう少し、あとは「彼女」の準備さえ完了すれば、すべては整う。
「年下扱いしたら怒ってたのはどこのフェレットだ?」
「・・・うるさいな。それにフェレットはやめろ、このシスコン・・・ストラグルバインド、いけるね?」
『three』
「ああ」
ふん、シスコンで悪かったな。けどやれる、大丈夫だ。
僕はあの子達の「兄」なんだから。
あと少しくらい、がんばれるさ。妹が一生懸命やってるのに兄が休んでいてどうする。
クロノがもうひとふんばりする決意を固めたのにあわせ。
二人の少年の背に星々の光が集まり、その桜色の輝きを増していく────・・・・!!
───アリシア、私が合図したら全速力で跳んで───
「えっ!?」
突然の闖入者──アルフにうろたえ、見守るだけだったアリシアとは対照的に。
クロノ達と同じくフェイトは状況に気付いていた。
その冷静な声にアリシアは戸惑い、聞き返してくる。
───いいから。もうすぐ・・・!!───
「けど!!」
───もうすぐアルフが吹き飛ばされるはず。そうしたらブリッツアクション全開でつっこんで───
「それじゃ、アルフが・・・!!」
───信じて───
「フェイト・・・」
先ほどアリシアがクロノに対して言ったように、今度はアリシアに対しフェイトが、信じてくれることを願う番だった。
───私を、アルフを、信じて───
『two』
「・・・・・・わかった。アルフが離れてから、でいいんだよね?」
状況が同じなら、出した答えも同じ。
フェイトのことを信じられないなんて、あるはずない。
───うん。すぐ「アレ」が来るから当たらないように気をつけて───
「・・・・「あれ」?」
あれって何よ。疑問に思ったアリシアだったが、聞くには時間がなさすぎた。
『one』
胸の中の少女のいう「アレ」が何であるかわかっていたなら、アリシアは全力で拒否していたかもしれない。
なにか別の手を考えるべきだと反対したかもしれない。少なくとも、生きた心地はしない。
フェイト自身、以前に正面から受けたときの恐怖を語っていたというのに、それをまさか、後ろから撃たせるなんて。
『zero』
「いくよっ・・・・!!本日二発目!!」
なにしろ、吹き飛ばされたアルフを確認し突っ込んでいく彼女をわずかにかすめ背後から飛んできたのは、よりにもよって。
「ブレイク・・・・シューーーーーーート!!!!!!」
全てを貫き討ち滅ぼす、星の光───なのはの、スターライトブレイカーだったのだから。