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[450]名無しさん@ピンキー 2006/02/21(火) 02:20:28 ID:Xf/+XGyA
[451]名無しさん@ピンキー 2006/02/21(火) 02:21:20 ID:Xf/+XGyA
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[455]名無しさん@ピンキー 2006/02/21(火) 02:24:59 ID:Xf/+XGyA

魔法少女リリカルなのはA's+ 第二話 「少年の覚悟、少女の決意なの」

「お疲れ〜フェイトちゃん」
転送用の魔法陣から出てくるとすぐにエイミィがお決まりのように親指を立てて微笑んだ。
「今日は、なんか事件が重なったね」
「ほんと嫌なことって一度に起こるもんだね〜」
フェイトはバリアジャケットを私服に変えながらエイミィに話しかけ、アルフはぴこぴことしっぽを振りながら愚痴った。
今日は発生した時間はまちまちだが、なのは、フェイト、はやて、クロノとそれぞれが出動しなければならないほどの大きな事件が
立て続けに起こった。

「そうだよね…ほんと」
「?…なにかあったの?」
「え?なになに?」
少し肩を竦めながら話すエイミィにフェイトが質問した。アルフはフェイトを抱えるようして乗り出した。
もしかしたらなのはやはやてに何かあったのかもしれない。嫌な予感が頭をかすめた。

「なにかあったってわけじゃないんだけど、ね」
「ふぃ〜なんだい、驚かすんじゃあないよ」
ふにゃふにゃと脱力するアルフ。その重みを避けるように移動しながらフェイトはエイミィに聞いた。
「でも、エイミィは何かあったような顔をしてる」
真剣な表情で聞くフェイトと目が合った。たしかに、その目に映りこんだ自分はなんとも不安げな表情をしている。
「まあ、別に隠すようなことでもないんだけどね…」
今日、クロノと話した内容をそのままフェイトに聞かせた。

                         *

「あ……」
扉から入ってきたのはフェイトだった。
エイミィから話を聞いてすぐその足で医務室へと向かったのだった。もしかしたらなのはもまだ帰ってないんじゃないか
という期待もあったが、明日のことを考えればだいたい察しはついていた。

意外な訪問者にユーノは少し戸惑った。
(たしか別件での捜査にあたってたはずだけど、帰ってきてたのか。でもなんで僕の所に?)
そう、思ったままのことを口にしようとしたが、先に話しかけてきたのはフェイトだった。
「怪我…大丈夫?」
小首をかしげて聞いてくるフェイト。
「あ…うん、大丈夫。もうしばらくしたら自分の部屋に帰ろうかと思ってたんだ」
時計を見ると、なのはと別れてから1時間近くも経っていた。
(こんなに考え事してたのか…)
あらためて自分の悩みが心に大きなシミを作っていることに気がついた。
フェイトはベッドの隣にある椅子に腰掛けると、じっとユーノを見つめた。
「あ…えっと、なに?」
ユーノは端麗な容姿の少女に見つめられて少しドキっとした。
「ユーノ、今なにか悩んでるでしょ」
「へぇ!?」
突然たずねてきたフェイトに先ほどまでの自分の心が読まれたので、驚きでユーノはすっとんきょうな声をあげた。
予想通りの反応にフェイトがクスクスと笑った。
「だって、顔に書いてるから」
「そ、そうかな…」
本当に顔に文字が書いてあるわけではないが、ユーノは軽く頬をさすって消すような仕草をした。
顔の筋肉が少しやわらいだような気がした。

「エイミィから聞いたよ。うまく…いかなかったみたいだね」
「……うん」
エイミィからも心配されていたとは。どうやら自分は感情が顔によく出るタイプらしい。
「…ユーノは、なのはを守りたいんだよね?」
少し微笑みながら話してくるフェイトにユーノは答えた。
「なのはだけじゃないよ。みんなを、守りたい。いや、助けになりたい…かな?」
素直に自分の気持ちを口にした。自分の心を反芻するように。
そして自分に言い聞かせるように続けた。
「わかってるんだ。能力には限界がある。
僕にはできることとできないことがあって、たまたま今回できないことにあたっただけだって」
ベッドのシーツを直しながら立ち上がった。
「これからは、もう少し戦闘よりも情報収集に専念しないとね。僕にはたぶんそういうのが合ってる」

――ユーノくんには図書館とかそういうのが似合ってる

以前なのはがそう言っていたのをフェイトは思い出した。確かに、適材適所であることには違いないと思う。
でも、自分がもし逆の立場だったら、戦闘面での非力な自分を恨むかもしれない。そんなに割り切れるものじゃない、と思う。
(ユーノは強いね…)
口には出さず、心の中でそう呟いた。本人が理解して向き合っているのだから、下手な同情の言葉はかけたくなかった。

「夕食の時間だけどユーノはどうするの?」
気持ちを切り替えるように自分も立ち上がりながらフェイトが尋ねた。今はなのはの世界では夕飯時だ。
普段暮らす世界での時間に合わせないと生活バランスが崩れてしまう。
「僕はあまりお腹すいてないから…。フェイトこそ、元の世界にもどらなくていいの?」
闇の書事件以降もあのマンションはリンディ名義で借りられている状態で、たまに家族そろって過ごすことがある。
「今日はアースラの中で食べるつもりだったんだ。学校もここから通えるように荷物持ってきてる」
『フェイト〜どこだい〜?お腹がすいて死にそうだよ〜』
タイミングよくアルフからの念話が入った。
「それじゃあ、わたしはもう行くね。アルフが待ってるから」
そういって扉に向かって歩き出した。
「あ、フェイト」
「ん?」
突然の呼びかけにフェイトは振り向いた。黒い大きなリボンがふわっと揺れた。
「ありがとう」
お世辞にも男らしいとは言えないが、ユーノのその時の顔はとても大人びていて、それでいて少し寂しげに見えた。
「うん。またね」
軽く微笑んでフェイトは医務室を後にした。

                 *

「あれ?フェイトちゃんやないか〜」
ユーノと別れてからアルフと合流し食堂へと向かう途中、後ろから声をかけられた。
その口調からすぐさま声の主ははやてだとわかった。
「あ、はやて…とシグナムたちもいるんだね」
振り向くとはやての後ろからぞろぞろとヴォルケンリッターの騎士達が歩いてくる。

「こんな遅くまでなにしとるんや?もうみんな事件は解決できたんやろ?」
フェイトと平行して歩きながらはやてが尋ねた。闇の書事件から2年、はやてはもう自分の足で歩けるまで回復していた。
「あたし達はこれから食堂で食うんだぜ〜、な?シャマル」
「はいはい、わたしが買い物を忘れたからでしょ!ヴィータちゃんの意地悪ー」
急に場が賑やかになる。大人数になった上に目立つ集団に囲まれ、自然と周りの局員の目が集まった。
あまり人の目に慣れていないフェイトは少し恥ずかしくなった。これでも昔よりは慣れた方である。

「あ、あの、えっとね、さっきまでユーノとお話しして、それでこれからわたし達も食堂で食べようかなって…」
「なんだい、フェイトはユーノと会ってたのかい。あたしも呼んでくれればよかったのにー」
「あ、うん、ごめんね」
ちょっとふてくされるアルフにフェイトは謝った。あまり意識せずに一人の方がいいと判断したので、少し申し訳ない気がした。
「その話、もうちょい詳しく聞かせてもらおか」
ぽんと肩に手を乗せられ振り向いてはやての顔を見ると、その目はなにか面白いものを見つけた子供のような輝きを放っていた。
なにか勘違いしている。フェイトは直感でそう理解した。
「…う、うん。別にいいけど」
「よし、そうと決まればこれからみんなで食堂へレッツゴーや!」
「「おー!」」
ヴィータとアルフが元気に合いの手を入れ、フェイトと他の騎士達の足取りは少しばかり重くなった。
 
                 *

「ふ〜む、それはジレンマってやつやな〜」
顎に手を添えながらはやてが感想を述べた。みんなの食事は一通り終わり、今はお茶を飲みながらくつろいでいた。
「じれんま?なんだそれ、うめーのか?」
聞きなれない言葉に台詞がひらがなになるヴィータ。まだまだ知らない言葉は山ほどある。
「初めて聞く言葉をすぐに食べ物に直結させるな。食い意地がはっていると騎士の品位が疑われる」
お茶をすすりながらシグナムがぴしゃりと言い放った。
「んだよ。シグナムだって昨日の『どっちの料理がうまいでショー』を涎たらしながら見てたじゃんかよ!!」
「な!?涎などたらしていない!ヴィータ、偽りでわたしを陥れるとは言語道断。その曲がった根性、今ここで叩きなおしてやる!」
「おーおーやってみろよ!あたしはシグナムのそのでっけーおっぱいをぺしゃんこにしてやるからさ」
「くっ!!もう我慢できん。レヴァンティン!」
言うと同時に待機状態のデバイスを手に取る。
「こらこら、シグナム、ヴィータ、その辺にしとかんと明日の朝食はシャマル担当にするで」
「「すいません」」
「ちょ、ちょっと!!!」
シグナムとヴィータが大人しく席に着き、逆にシャマルがヒステリックに立ち上がった。
「あんた達って見てて飽きないね〜ほんと」
「…………」
頬杖をつきながらニヤニヤするアルフに全く返す言葉がないザフィーラだった。


「まあうちらも皆つよなってきてるしな〜。ユーノくんがそう感じるのも仕方あらへんのかも」
「我々ベルカの騎士も魔力量は増えませんが技術的には強くなりますからね」
みんなを見渡しながら話すはやてにシグナムがつけ加えた。
「なーなー、つってもよ、ユーノは足手まといってわけじゃねーんだし別にいーんじゃねえか?
んなこと言ったらシャマルだって似たようなもんだろ」
足をバタバタさせながらヴィータがはやての顔を覗き込んだ。
「ムカッ、あのねヴィータちゃん、わたしはサポートとしてプログラムされてるの。専門なの。スペシャリストなの。
あんまり馬鹿にしてるとカートリッジ作ってあげないわよ。ついでに冷蔵庫のヨーグルトも没収」
「おーぼーだ!!」
ヴィータが両手を挙げて抗議した。
「ちょっとヴィータは黙っとき。話が先に進まへん」
「ご、ごめんなさい」
しょんぼりとしてストローに口をつけた。

「で、でも、ユーノ本人はちゃんとそれをわかってるんだよ?」
ようやく発言できそうな雰囲気になったのでフェイトは恐る恐る口を開いた。
「そこが偉いとこやな〜。今も無限書庫で働いてるようやし、将来のビジョンっちゅーのがはっきり見えとるんやろな」
両腕を組みながらうんうんと唸るはやて。

(将来…か。あれから2年、来年には執務官試験がある…)

自分にはできることがたくさんあるし能力も十分にある、と思う。なら、あとはそれが発揮できる方向へと突き進めばいい。
ユーノだって、挫折や諦めだけで言ってるんじゃないんだ。自分のできることを精一杯やろうとしてる。だったらわたしだって…。
なにか今まで自分の中でもやもやしていたものが晴れた気がした。

「うん、決めた!わたし、執務官試験受ける!!」
「へ!?」
話が跳んでいきなりそう宣言するフェイトに、はやてはお茶をこぼしそうになった。

「ほんとかい!?フェイト!」
「なにか思うところがあったようだな。応援するぞ、テスタロッサ」
「頑張ってねテスタロッサちゃん」
「お、おー。なんかよくわかんねーけどすげーな〜」
それぞれの反応の後、フェイトが元気よく微笑んだ。
「うん!頑張るね!!」



「な、なんやよーわからんけど、めでたしめでたしってことでいーんか?」
「主、私に意見を求めないでください…」
釈然としないはやてにザフィーラが小さく嘆いた。


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