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[127]名無しさん@ピンキー 2006/02/28(火) 01:32:41 ID:OGUL4N3Q
[128]名無しさん@ピンキー 2006/02/28(火) 01:33:15 ID:OGUL4N3Q
[129]名無しさん@ピンキー 2006/02/28(火) 01:33:54 ID:OGUL4N3Q
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[132]名無しさん@ピンキー 2006/02/28(火) 01:35:52 ID:OGUL4N3Q

魔法少女リリカルなのはA's+ 第六話 「最強の結界魔導師」

空には透き通るような青が広がり、地面は岩と砂のみが肌を晒している。
三つの太陽のような光源がその世界を照らし、桜色、金色、深緑色の光が混ざり合うことなく複雑な
放物線を描いている。

「はぁ…はぁ…」
「まだ、まだいける…」
なのはとフェイトは疲労しきっていた。
アクセルシューター、ディバインバスター、プラズマランサーなど、数ある魔法を繰り出したが一つとして相手の魔導師には
届くことはなかった。
(なんで、あんなに転移が早いの…?)
なのはは疑問に思った。攻撃しても転移で回避され、しかも相手は自分達のすぐ近くに出現し打撃を加えてくる。
魔力攻撃でないだけまだましだが、その鍛え抜かれた肉体から放たれる攻撃はバリアジャケットと言えどかなりのダメージをくらう。

「不思議か。私の転移速度が」
まるで心を読んだかのように魔導師が言った。
「この次元…。お前達は私が追い込まれて来た、と思っているだろうが…それは違う。私が追い込んだのだ」
魔導師が静かに言うと魔法陣が瞬時に魔導師を包み込みまた姿を消した。
「ど、どこ!?」
なのはが周囲を見回しても姿は見当たらない。
「なのは!!」
フェイトの声の方を振り向くと魔導師がすぐ横、肩が触れ合いそうな距離にまで近づいていた。
ぐんっ手首を引っ張られ思い切りフェイトの方に投げ飛ばされる。
「あぅっ!!」
フェイトにぶつかるように受け止められた。肩が外れたかと思うくらいの痛みを感じた。

「攻撃魔法が戦いの全てではない」
鋭い目つきで魔導師はなのはとフェイトを睨んだ。
もともと転移速度が異常なのか、なにかトリックがあるのかはわからなかったが先ほどの口ぶりからして
後者の可能性は高い。しかし、今はその種を見つけている余裕はなかった。
『なのは、わたしが相手に隙を作るから!』
『うん!』
まだ諦めるわけにはいかない。相手はジュエルシードを攻撃に使う様子もないし、
二対一、魔力の差から言ってもまだこちらに分がある。
「レイジングハート!エクセリオンモード!!」
『Yes, my master.』
「バルディッシュ、ライトニングフォームパージ!!」
『Yes,sir.』
なのはのレイジングハートがその形を突撃槍のように変え、フェイトのバリアジャケットがパリンッと割れるように換装し
ソニックフォームとなる。こうなると相手の攻撃を受けるわけにはいかない。
「カートリッジロード!!」
バシュッ!っとリボルバーが回転しバルディッシュが熱を帯び、光のデスサイズが形成される。

その様子を魔導師は静かに見ていた。相手は攻撃を待つタイプであることは先ほどからの戦いで明白だ。
「いきます」
静かにそう言うと相手に向かってバルディッシュを構えなおす。同時にフェイトが魔導師の視界から消えた。
(!?)
予想をはるかに上回る相手のスピードに魔導師は驚いた。
次の瞬間目を見開き真上を見上げた。
「はああぁぁぁ!!!!」
太陽のような恒星の光を背にフェイトが鎌を振り下ろす。
さすがに転移に集中してる暇がなかったが魔導師はなんなくシールドでそれを防ぐ。
「くぅっ!!」
渾身の一撃、しかもカートリッジで魔力が増えているはずだが、魔導師の張ったシールドはびくともしない。
「バリアバースト」
魔導師が小さく呟くとシールドに波紋が生じ中心に向かって集まり始める。
「なっ!?」
気づいた瞬間には爆発に巻き込まれていた。
「フェイトちゃん!!!」
なのはが叫び、魔導師が次はお前だと言わんばかりになのはの方を向いた。

(むっ!?)
音に反応し即座に魔導師は体をくの字曲げ避ける。避けた瞬間三日月形の光が回転しているのが目に入った。

先ほどのバリアバーストで生じた煙の中からキラリとデバイスが光をはなち、晴れた煙の間から金髪の少女の不敵な笑みが見えた。
フェイトは直接攻撃の前にハーケンセイバーを放っており、それが遅れるように魔導師に到達したのだ。
『Saber Blast』
ボンッ!と任意の時点で爆発させられた三日月の光は、衝撃とともにあたりを煙で包んだ。
(まずいな…)
視界が遮られ相手の出方が読めない。すぐさま転移のため少し集中する。
『A. C. S., stand by.』
次の瞬間機械的な音声が聞こえ、煙が吸い込まれるように一箇所に集まる。
そこから光の槍と少女が飛び出してきた。
「エクセリオンバスター!!!!!!!」
ギィィィィンとシールドと競り合う音が響いた。どうやら魔導師は防御に間に合ったようだ。
「くっ!!まだまだー!!!」
『Open.』
A.C.S展開によりレイジングハートを中心に光の羽が広がる。

魔力同士の衝突でもくもくと煙が立ち込める。
「なのは!!」
フェイトが安否を気遣うように叫んだ。あたりにひとときの静寂が舞い降り、徐々に煙が晴れていく。
煙の中で人影が重なっているのが見えた。

「なのは!?」
先ほどとは違い悲痛な叫びへと変わる。片手で軽々と持ち上げられたなのははギリギリと首を絞められていた。
「このぉ!放せーー!!!」
バルディッシュで切りかかると、魔導師はなのはを放り投げながら回避する。
「ごほっ!ごほっ!!」
「大丈夫、なのは…」
激しくむせるなのはを受け止め、いたわるようにフェイトが肩を抱いた。

「惜しかったな」
つまらなそうに一言そう言うと、魔導師はパンパンと肩の埃をはらった。
「くっ!!」
悔しさと、友人にひどい仕打ちをされたことへの憎悪からフェイトは魔導師を思い切り睨みつけた。
「そう、殺すつもりでこなければ私には勝てない」
魔導師のまるで諭すような言い方に無性に腹が立った。
「しかし、たとえ誰が来ても結果は同じだ。逃がしもしない」
少し長めの魔導師の黒い髪が風に吹かれてなびいた。
「管理局の人間は……必ず殺す」
冷徹な瞳と確かな殺気。

(この人、本当にわたし達を殺す気だ…)
ようやく苦しさから解放されたなのはがその瞳を見て確信した。
血筋もあってか、なのはには確かにそれがわかった。
そして自分達が今どれだけ危険な状況であるのかも。
『フェイトちゃん』
『うん、わかってる。この人にはたぶん勝てない。逃げる方法を考えよう』
弱気なのではなく戦略的撤退。力の差が歴然としている今、一旦離れて立て直す必要がある。
『それじゃあ、せーので別々の方向に飛んだ後、各自転移しよう』
なのはが念話と同時に目配せをし、フェイトが頷いた。
『『せーの!!』』
桜色と金色の光が魔導師を中心に正反対の方向に飛んでいった。

それを見た魔導師は右手を前に出し深く目を閉じた。魔導師の手のひらに球状の魔力光が現れ、複雑な術式が中で渦巻いている。
次の瞬間、二人の目の前に魔導師が現れる。否、なのはとフェイトが魔導師に向かって飛んでいたのだ。
「「え!?」」
驚きもつかの間、なのはの脇腹に蹴りが放たれる。
「きゃあああああああああ!!!!!」
「なのは!?…くぅっ!!!」
なのはへの攻撃に気をとられたフェイトが同様にまわし蹴りをくらい吹き飛ばされる。
あまりの速さにデバイスのオートガードがまったく追いついていない。
なのはは下の砂の地面に思い切り叩きつけられ、フェイトは岩壁に突っ込んだ。

パラパラと岩が削げ落ちる音が響き、辺りに砂が舞った。
(ト、トランスポーター・ハイ…?)
フェイトが揺れる意識の中おぼろげに理解した。
(でも、二人とも高速移動中だったのに…。どうして?)
トランスポーター・ハイとは移動魔法の中でも高位転送魔法。
他人の転送はおろか、別々の場所にいる複数の人間を一斉に同じ場所に転送可能な魔法だが、高速移動中の人間を転送するという
例など聞いたこともなかった。
(な…なのはは…?)
同じように砂煙を舞ったほう見ると、ぐったりとしたなのはが見えた。不意打ちで相当なダメージを負ったらしい。
魔導師の体勢が崩れた中での二撃目を受けた自分はソニックフォームとは言え、なんとか意識は保っていた。
(なのは!!!)
急いでなのはの元に飛んで行こうとすると何本ものチェーンが体に絡みつく。
「ぐっ!!ディレイドバインド!?」
設置型捕獲魔法がフェイトに反応して発動した。

「ここに誘い込んだと言った時点で警戒するべきだろう」
気づいたらすでに目の前に魔導師が浮かんでいた。
「あなたの狙いは何?ジュエルシードを…どうするつもりなの?」
キッ魔導師をにらめつけながらフェイトが言った。
「動機と目的をすぐ自分達の枠に当てはめようとする。管理局の人間はいつもそうだな。
…私がジュエルシードで何かすると言ったか?」
冷ややかな目で見下ろしながら魔導師が言い放った。
「ま…まさか……、狙いは…わたし達?」
目を見開いてフェイトが言った。管理局の人間を殺すためだけに、ロストロギアを強奪したのだろうか…。
でも、なんでそんな回りくどいことを。疑問は尽きない。
「二度、同じことは言わない。お前と向こうのやつは、今ここで死ぬ。それだけだ」
魔導師が片手を天に掲げると少しずつだが光の槍のようなものが形成されていく。
なのはの方を見ると、どうやら気がついたようだが同じようにバインドされていた。真上には同様に槍があった。

この魔導師のバトルスタイル。それは、転移と防御で少しずつ相手に魔力を消費させ、拘束したあとにゆっくり致命的な攻撃を
加える。まさに結界魔導師がとれる最高の戦術だった。
高度な転送技術と完璧な防御呪文があってなせる技だ。鼻からレベルが違いすぎた。

(だからアルフを警戒していたんだ…。主人を倒すことで手間を省くつもりかと思ってたんだけど)
今さらながらバリアブレイクを放った瞬間強制転送された自分の使い魔のことに思いをはせた。
念話も届かないところに飛ばされたようで、居場所はわからない。アースラとの通信も気づいたらジャミングされていた。

そんなことよりまず今の身動きが取れない状況だ。目の前に作り出されていく光の槍を見あげる。
相手が時間をかけて生成した殺傷能力のある魔法だ。おそらくシールドを突き破るだろう。
(これで…終わりなの…?……ごめんね、アルフ、母さん、兄さん、みんな。………ユーノ………)
ぎゅっと目を閉じると出会った人たちの顔が思い浮かんだ。
「…………」
無言のままかざしていた手を振り下ろし、魔導師の実行の合図とともに槍が高速で放たれた。

槍が刺さる音がした。恐る恐る目を開けると、槍が自分の脇に刺さっているのが見えた。痛みはない。
どうやら自分には刺さっていないようだ。目の前を見ると黒い人影が見え、光を遮っていた。
一瞬で分かった。それが誰であるのかが。

「兄さん!?」
「アリシアとプレシアに会うのはまだ早いぞ、フェイト」

逆光でよく見えなかったが、クロノがこちらを見て微笑んでいるのがわかった。


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