フェイトの怪我が完治して一週間が過ぎた。
学校が終わり途中でアリサとすずかと別れなのはとフェイトが帰路についていた。
因みにはやては管理局に用があり今日は休んでいた。
「…そしたらアリサちゃん隣の子とケンカを始めちゃって…」
「…アリサらしいと言えばアリサらしいね…」
二人は何時もと変わらぬ会話をし海岸沿いの通学路を歩いていた。
すると、
「ねえ、フェイトちゃん。お母さんがまた新作料理を作ったから一緒に食べない?」
なのはが、両親の経営している喫茶店兼洋菓子店で一緒にオヤツを食べないか聞いた。
しかし、隣のフェイトからは何も返答が無かった。
「?」
気になったなのはが隣を見ると一緒に歩いてる筈のフェイトは、
何時の間にか後方で立ち止まり海岸の方をジッと見ていた。
「フェイトちゃん、如何したの?」
なのはは直にフェイトに近付きそう聞いた。
「しっ、…あれを見て」
すると、フェイトはなのはに静かにするよう言うと海岸の方を指差した。
「う、うん」
なのはもフェイトが緊張してる事に気付きフェイトが指差した方を見た。
今の季節は5月の半ばであり何時もなら釣りをしてる人がいる程度。
時々バカップルや物好きな海水浴客ぐらいだった。
しかし、なのはの目に映ったのは釣り人でもバカップルでも気の早い海水浴客でも無かった。
古びた布を深く羽織ってる二人組みだった。海とは場違いな格好だった。
「フェイトちゃん…あれって…」
「…間違いないよ。あの時私が戦った相手だ」
フェイトは小さい声で、しかしはっきりとそう言った。
「た、大変!皆に知らせなきゃ」
すると、なのはが携帯電話を取り出しはやてやクロノ、ユーノに知らせた。
一方、フェイトは今すぐ飛び出して戦うか悩んでいた。
(今すぐ戦う?…駄目!今回はアルフが居ない。それに下手したらなのはにも危険が…)
フェイトは相手の力量と友の心配で飛び出すのを止めた。
それから、約1時間後、
「あれか…テスタロッサとその使い魔を倒した相手は…」
「見たとこそんな魔力は感じねえけどな」
なのはの知らせでこの場に、はやてとクロノにシグナム、ヴィータ、シャマル、
ザフィーラ、ユーノ、アルフが合流した。
更に念の為にとアースラも現在宇宙で待機していた。
「でも、油断するな。相手の魔力は未知数なんだ」
クロノはそう言って激を飛ばした。
因みに現在、彼等の格好は管理局の制服でも無くましてやバリアジャケットや騎士服でも無く、
いたって普通の私服だった。
それと言うのも、
『フェイトちゃんを退けた相手よ、戦うにしても交渉するにしても相手の情報を知るべきよ』
との、リンディ提督の言葉だった。
彼等はその言葉どおり取り合えず情報を得る為に物陰に隠れながら二人を追っていた。
しかし、傍から見れば8人+2匹(アルフとザフィーラ)の集団が隠れながら前進。
良くて探偵ゴッコ、悪く言えばストーカーを見るように道行く人から視線を浴びていた。
しかし、それ以上に目立っていたのはなのは達が追ってる布を羽織っている二人組みだった。
此処は砂漠地帯でも某イスラム教の市街地でも無い。日本の市街地である。
しかも、この時期は5月の半ばでありポカポカ陽気の日にわざわざ布を羽織っているのだから目立ってしょうがない。
道行く人は彼等を避けながら歩いていた。
「…それにしてもあいつ等、暑くないのかね…」
アルフがそう口にした。
それからも更に時間は過ぎ日が完全に暮れていた。
「はやて、腹減ったよ〜〜」
ヴィータは飽きたのか口を開いてはそう言った。
「…ほら肉まんとお茶や。今さっき買うて来たからこれで我慢せい」
すると、はやては先程コンビニで買ったと思われる肉まんとお茶のペットボトルをヴィータに渡した。
「うん、これで我慢する…」
すると、ヴィータははやてに貰った肉まんを頬張った。
ヴィータは正直コンビニの肉まんよりはやての手料理が食べたかったがこの状況では無理と判断し耐えた。
その分ヴィータは追っている二人組みを戦闘になったら真っ先にグラーフアイゼンで相手の頭をかち割ろうと決めていた。
それから少しして、
そして、二人組みは人気の無い公園で立ち止まった。
「如何したんだろ?こんな人気のない場所に来て」
「なんか、嫌な予感が…」
なのは達がそう言ってると、二人組みの一人が両腕を広げた。
「不味い!奴等転移する気だ!!」
「此処で逃がしたら不味い。艦長!」
『仕方ないわね。戦闘を許可します』
リンディがそういい終えると、
「よっしゃ!あいつ等ボコボコにしてやる!」
ヴィータはそう言うと封鎖領域……ベルカ式の結界を張った。