「まだ入ってなかったのか」と言う恭也さんに、私はうんと言って左を通り過ぎた。
すれ違いざまに腕を捕まれた。恭也さんはすこし怖い顔をしている。
「お前、その傷はどうしたんだ?」着ている服から肩口が見えていたらしい。
私はとっさに隠して行こうとするけど、腕をしっかり捕まれているので離れられない。
腕をつかむ手が強くなって、思わず痛いと口から漏れる
「ああ、悪い。でも、こんな傷が出来た理由が知りたい。
ここが嫌ならオレの部屋に来るか?」多分、私が話さない限り離してくれないだろう。
だから、お部屋に行きますと言って、腕をほどいてもらった。
恭也さんの部屋に来た。ここに座れとベッドを指さしたのでそこに座る。
私はベッドの横にある扉・・・私の部屋につながる扉を見つめている。結局初日の時以外は
あの扉を使っていない。恭也さんは自分の椅子に腰を掛け、さて、と切り出した。
「その傷、どこでやったんだ?」私はどうして良いか、分からずに黙っていた。
「美由希、だな」びっくりして、恭也さんの方を見る。やっぱりなという顔で私を見た。
「その傷は木刀で付いた傷だろ?傷痕を見れば、相手の型が見えるからな」
私の心を読んだように喋る。もしかしたら、なのはにもばれているのかな?と聞いてみた。
「いや、なのはにはばれていないと思うが?それよりも、どうしてこうなったのか
訳を聞かせてくれないか?」私はどう喋ればいいのか迷っていた。
「じゃあ、本人に直接聞くしかないか」と恭也さんが立ち上がる。私はそれだけは止めて
と恭也さんを引き留めた。私は美由希さんに嫌われているみたいだと言うこと、
道場に呼び出されてからの経緯を話した。