翠屋についた。なのはがお店の扉を開けた。
「いらっしゃい…あ、なのは。」美由希さんが声を掛けてくれた。
「フェイトちゃんとお手伝いに来ました。あ、お客さんが呼んでる。
わたし、行ってくるね」なのはは私を置いて美由希さんの持っていた
注文票を受け取ってお客さんのところへ行ってしまった。
お店はお客さんでいっぱいになっていて、アルバイトさんが忙しそうに働いていた。
私はこんな状況の中で迷惑にならないか心配になった。
勇気を出して、美由希さんに私に出来ることはないか聞いてみた。
「んーと…じゃあ、しばらく見てて。お店の雰囲気とか、お客さんのへの対応とかが
分かると思うから」と、美由希さんはレジに向かっていった。
みんなてきぱきと働いている。
私は、みんなの邪魔にならないようにいろんなところを見て回った。
取り敢えず、厨房に入ってみる。桃子さんはオーブンから美味しそうなパイを取り出し、
「松っちゃん、これお願いね」と別の作業に移る。松っちゃんと呼ばれた人が
パイをきれいに切り分ける。切り分けたパイをお皿に分けたところで
桃子さんが戻ってきて、冷蔵庫からさくらんぼやホイップを取り出し、飾り付けをする。
今度は“松っちゃん”が桃子さんを呼んで、ケーキを作る。息のあった二人。
初めて見る私が分かるほどに二人の動きに無駄がない。
何も言ってないのに乱れのない連携。私はしばらくその動きに見とれていた。
士郎さんは、料理を作っている。ご飯時じゃないからか、幾分かは落ち着いて見える。
今作っているのは…トーストサンド。ほどよく半熟状態の薄焼き卵にカラシマヨネーズを塗り、
レタス・キュウリ…と挟んでいく。それを挟んだパンを何段か重ね、
長い包丁でサクッとほどよい大きさに切り分ける。道場の師範だけあって、
刀捌きはなかなかだと思った。関係ないかもしれないけど。