私は、アリサちゃんを抱えて少しさっきの場所から離れたところに降りた。
「ねえ、なのは。どうして?」アリサちゃんがうつむいてしゃべる。
「どうして役に立たないあたしなんか連れてきたの?」アリサちゃんのほほに涙が伝い、
雫になって落ちた。私はそんな事ないと言い、アリサちゃんの肩に手を置こうとした。
アリサちゃんは私の手をはね除け、私を鋭く睨んだ。
「…どうせ私が何もできないのを見て楽しんでるんでしょ?
何もできないただのお嬢様だって笑ってるんでしょ?
自分たちが特別だって言いたいなら言えばいいじゃない!」
私は、アリサちゃんのほほを打った。
なのはが泣いている。…また、なのはにたたかれちゃった。
さっきまで高まっていた感情も冷や水をかぶったように収まっていた。
「どうしてそんな事言うの?私とフェイトちゃんがそんな事で連れてきた思うの?」
私が黙っていると、なのはがぽつりと話し始めた。
「フェイトちゃん、生まれてからずっと友達がいなかったんだ…。
私が初めて会ったときから悲しそうな目をしてた。
私の家で引き取ってからも笑ってはくれるけど、何か影のある、まだどこか遠慮している、そんな笑い方だった。
でも、アースラでアリサちゃんとおそろいの服を着て、姉妹だねといわれたときのあの笑顔。
恥ずかしそうだったけど、私にはしてくれなかった微笑み。
私の家に来てまだ4日、アリサちゃんと会ってまだ2日しか経ってない。
私も出会ってから時間がないけど、
私よりも先に一番自然な笑顔をフェイトちゃんにさせたのはアリサちゃんだよ?
そんなフェイトちゃんに向かって、アリサちゃんは…」私は分かってるわよとだけいって口をつぐんだ。
本当は分かってる。なのは達が私をここに連れてきた理由。
連れてこなかったら連れてこなかったで私がどう言うかも。
分かってるけど…でも、もう少し突っ張らせて。私って本当に嫌な子だな…。
なのはは、しばらく黙ってこっちを見つめた後、待ってるからとだけ言い残し、
フェイト達の元へと戻っていった。