ファリンさんがノエルさんの元へ駆け寄る。
「お姉様、目を覚まされたんですね」起動したばかりだからか少しぼんやりした様子のノエルさん。
「私は一体…」すずかがノエルのそばに寄り、
「私が帰ってきたとき、ノエルとファリンが倒れててびっくりしたんだから。調子の悪いときはちゃんと言わないと」
ととりとめのない笑顔で言う。ノエルさんは釈然としない様子で
「平常通りのコンディションで、自己診断では異常を認めることはなかったのですが…
夕食の支度をしようとした頃、突然目の前が闇に覆われて、気がついたときにはここに…」
と、少しつらそうに話した。もしかしたら記憶が残っているのではと思い、気を失っている間にどんな夢を見たかを聞いてみた。
「私は自動人形なので夢という物の概念は理解しかねますが、もしあれがそうだとするならば、
お嬢様方を襲っている夢を見ました。そこでフェイトお嬢様の右腕に傷を付けた気がします…」
私は自分の右腕を見る。かすり傷だったので魔法で塞いであり、傷は見えなくなっていた。ノエルさんは続ける。
「本で読んだことがありますが、夢という物は人の願望や欲望などを表すといいます。
もしそうならば、私はお嬢様方に酷い仕打ちをしてしまうかもしれません。そうならないうちに私を…」
ノエルさんが言い終わらないうちにすずかがノエルさんの話を隔てた。
「ノエル、考えすぎだよ。私だって、友達を傷つけてしまう夢を見てしまうことがあるし。
ノエルが私たちのことを大事にしてくれてるって証拠じゃないのかな?」
そうだよねと私たちに向いて言う。全員が頷いた。
「しかし…」うつむき加減に話すノエルさんの声を遮って
「じゃあ今、お姉様はすずかちゃん達に傷を付けるようなことをしたいのですか?」と
ノエルさんの電源コードを抜きに行っていたファリンさんが喋った。ノエルさんは静かに首を振る。
「なら、問題なしだよね?」と私たちに向けてウィンクをしてみせた。