私たちはファリンさんのウインクに同意し、首を縦に振って頷いた。
しかし、ノエルさんは少し難しそうな顔をしている。
そんなノエルさんにすずかはノエルさんの顔に手を添え、
「悪い夢は忘れてしまえばいい。楽しい夢だけ覚えていれば。それがいつか現実になるから」
すずかは静かに、そして穏やかにノエルさんの目をじっと見つめたまま歌うように言葉を紡いだ。
それは私の胸をもくすぐり、不思議と穏やかな気持ちが広がっていった。
ああ、こういうのが心安らぐって言うのかな?
リンディさんにもらったこの国の文献を読んで、知識としては知っていたけど…
こんな気持ちになったのは生まれて初めて。
みんなの顔もいつになく柔らかくなっている気がする。
暫くすると、少し暗くなっていたノエルさんの顔がほころび、お昼に見たときと同じ顔に戻っていった。
私はちらりと時計を見た。11:20…結構時間が経っていた。
なのは達が目を合わせる。その意味を察知して、ノエルさんは申し訳なさそうに頭を垂れる。
<<なのは、今日はちょっと無理なんじゃない?>>アリサの質問
<<うちなら大丈夫だと思うけど…>>
なのはが携帯を取り出すと、
「ちょっと、家に電話するね」とその場を離れた。
「申し訳ございません。私が頼りないばかりに…」ノエルさんが申し訳なさそうに言う。
「考えすぎだよノエル。ノエルが頼りにならなかったら、
お姉ちゃんが私を放ってなのはのお兄ちゃんと遊びに行ったりしないよ」
すずかが優しい声でノエルを宥める。
すずかが優しく話す声は、それが私に向けて話されたものではないとしても、
私の心を穏やかにしてくれる、魔法のような物を感じた。
私はユーノにどう思う?と意見を求めた。
<<うん、多分僕たちとは違うけど、魔法のような力を感じる>>概ね同意してくれた。
ちょうどその時、なのはが戻ってきた。全員がなのはに注目する。
「ちょっと怒られちゃったけど、大丈夫だったよ。今からいらっしゃいって」と
悪戯が見つかった子供のように舌をちろっと出して言った。
すずかはノエルさんに向き直して改まった顔になった。